「クリミア大橋」爆発 誰が実行したか? 防衛研究所幹部が解説
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防衛省防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏が10月18日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。ロシアがウクライナから一方的に併合したクリミア半島とロシア本土を結ぶ「クリミア大橋」で起きた爆発をめぐり、「実行したのは誰か」について解説した。
ロシアとの合同部隊を編成したと報じられるベラルーシのルカシェンコ大統領は、同盟国のロシアを追い詰めないよう、ウクライナと西側諸国に警告した。ルカシェンコ大統領は「最も重要なことは、対話の相手がたとえ敵対者であっても窮地に追い込まないことだ。そのため、ロシア側が言うところのレッドラインを越えてはいけない」と述べた。
辛坊)今のところ伝えられている限りでは、トラックに仕掛けられていた爆弾が爆発して橋げたがいくつか落ちたという話です。誰が実行したと思われますか。
高橋)誰が一番得をするかという推理小説的な話でいうと、ウクライナなのでしょうね。クリミア大橋は、やはりロシアにとって重要な補給線ですから。しかも、壊し過ぎていますので。彼にロシアが偽旗作戦を仕掛けるのだとすれば、そこまで壊す必要はないと思います。
辛坊)偽旗作戦というのは、歴史上によくある戦争開始の言い訳にするための自作自演ですね。
高橋)そうです。
辛坊)一説にはアメリカがウクライナの後ろにいて、アメリカが供与した船型ドローンのようなもので橋の下から攻撃したのではないかという見方もあるようですが、トラックの爆発で間違いないのでしょうか。
高橋)爆発箇所の隣の車線を見ると、舗装面が焼けているんです。橋の下から爆発したのだとすれば、隣の舗装面は焼けませんからね。あの焦げ方を見ると、やはり路上で爆発したと考えるべきだと思います。
辛坊)路上でトラックが爆発して橋げたが落ちてしまうような被害が出るのでしょうか。
高橋)何トンもの爆発物ということでしょうね。ですから、ミサイルなどで運べるような量ではありません。そう考えると、やはりトラックということになるかと思います。
辛坊)では、仮にウクライナが実行したとして、ウクライナが工作員を送り込み、爆弾をどこかに仕掛けたということでしょうか。
高橋)そこから先が分からなくなるんです。つまり、工作員を送り込んで爆弾を仕掛けたとすれば、道路橋だけではなくて鉄道橋にも仕掛けるはずなんです。トラックに爆弾を仕掛けたとすると、運転手が巻き添えを食いますから、そのような自爆的な攻撃をウクライナが今、するだろうかという疑問がわきます。全体の戦況を見れば、ウクライナのほうがいいですからね。ということで、一番得をするのはウクライナなのですが、攻撃のパターンを考えると、なんとなくウクライナっぽくないという疑問も残ります。
辛坊)素朴な疑問があります。クリミア大橋は、クリミア半島に対するロシアの補給線になっているので、ウクライナにとっては戦争のかなり初期段階で落とすべき橋だったと思われます。ウクライナ国内からミサイルを発射して破壊したほうが手っ取り早いだろうと思うのですが、ウクライナにはそれができるだけの武器力がないということでしょうか。
高橋)今のところはありません。アメリカの戦術地対地ミサイルで射程300キロメートルの「ATACMS(エイタクムス)」が供与されれば届きますが、まだ供与されていないはずです。
辛坊)供与されている高機動ロケット砲システム「ハイマース」では届かないのですね。
高橋)はい。ハイマースは射程80~90キロメートルのため、届きません。
辛坊)制空権があれば空対地ミサイルのようなものが使えるかもしれないと思うのですが、ウクライナの制空権はどうなっているのでしょうか。
高橋)制空権というよりも、低空で侵入していってロシア側の迎撃をかいくぐって攻撃することはできなくはないです。しかし、ロシア側もクリミア大橋をかなり強固に守っていますから難しいでしょうね。
辛坊)そうなると、映画「トップガン マーヴェリック」の世界になってしまうわけですね。
高橋)そういうことです。
辛坊)よく分かりました。
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