-新行市佳のパラスポヒーロー列伝-
ニッポン放送アナウンサー・新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見していきます
9月23日、秋分の日。日本ブラインドサッカー協会が新しくつくった、ブラインドサッカー初のトップリーグ「LIGA.i 2022」第3節の取材へ、フクシ・エンタープライズ墨田フィールドに行きました。
これまでは全国を4つのエリアに分けた地域リーグを開催し、各エリア上位のチームがクラブチーム選手権に出場、クラブチームの日本一を決定するという体制でしたが、地域リーグとトップリーグの2リーグ制に変更されました。
今年度、日本ブラインドサッカー協会に登録しているブラインドサッカーのチームは31チームありますが、チームによって活動目的や理念は異なります。それぞれのリーグの開催目的から、クラブチームが出場するリーグを選択する形式になりました。
LIGA.iの開催目的は3つあります。
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(2)興行性の高い大会を開催すること
(3)クラブチームおよび日本ブラインドサッカー協会の組織性を高めること
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競技力の高さのみならず、組織運営力や、競技普及活動への注力度合いなど、複合的な観点から、「パペレシアル品川」「埼玉 T.Wings」「free bird mejirodai」「buen cambio yokohama」の4チームがトップリーグに出場。全3節、4チームが総当たりで熱戦を繰り広げました。
LIGA.i最終節、約400人が観戦するなか、優勝の栄冠を手にしたのは埼玉T.Wingsでした。
第1試合に登場した埼玉T.Wingsは、buem cambio yokohamaと対戦。引き分け以上で埼玉の優勝という試合。開始3分で菊島宙選手がゴールネットを揺らしました。
菊島選手の豪快なドリブル、積極的なプレーの数々……シュートを狙うたびに会場がどよめきました。
その後、buen cambio yokohamaは菊島選手を徹底的にマーク。しかし、その隙を狙って後半7分、加藤健人選手が追加点をあげ、2-0で埼玉T.Wingsが初代王者に輝きました。
試合後、菊島充監督や選手は、今年(2022年)の4月にチームで購入したフェンスを使っての練習が功を奏したのではないかと振り返りました。
ブラインドサッカーは、フットサルと同じ大きさのピッチでプレーするのですが、サイドラインに高さ1mほどのフェンスが設置されています。ブラインドサッカーの見どころの1つは、このフェンス際での攻防、ボールの奪い合いの激しさです。
埼玉T.Wingsは、フェンスをハーフコート分購入し、試合を想定した練習を積み重ねることで、チーム力の向上につなげました。
現場を取材して、選手の皆さんの「お客さんに楽しんで欲しい!」という熱い思いと使命感が伝わってきました。
埼玉T.Wingsのキャプテン・加藤健人選手は、「最初、LIGA.iに参戦するのが不安だったんですよね。たくさんの方々が会場に足を運んで、お金を払って来てくれる。ブラインドサッカーや試合の価値、見せるだけのプレーをしなくてはいけないなと思っていたので、僕はそれを最初、チームに確認したんですよね。『それでもやる!』ということだったので、やってよかったなと思っています」と、LIGA.iに臨む決意をした際の心境を明かしました。
国内で開催されるパラスポーツの大会は無料で観戦できるものが多いのですが、日本ブラインドサッカー協会はLIGA.i以前からチケットを一部有料化してきました。(※参考記事:https://news.1242.com/article/171647)
日本ブラインドサッカー協会・専務理事兼事務局長の松崎英吾さんは、チケットを買って観戦することで、そのとき抱いた感想を周りの人に話したくなるモチベーションがより一層高まるのではないかと、パラスポーツにおけるチケッティングについて語りました。
「収益的に貢献していくことも、もちろん狙ってはいるんですけれど、いままで『お金を払わなくてもパラスポーツは観戦できるものだったよね!』というところから、払いながら応援していく。応援していくなかで、気づいたら、隣にいたはずなのにいままで見えていなかった障害者が見えてくる……こういった形で、いわゆる共生社会、我々で言うところの混ざり合う社会に、より貢献できるのではないかと思います」
LIGA.iをきっかけに、さらなるブラサカファンの獲得はもちろん、選手がよりレベルアップし、それが日本代表の強化にもつながっていく……大きな可能性を秘めたこの大会の、今後が楽しみになりました。
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