福島第一原発の「処理水の報道」にみられる「新聞の自浄作用」の欠如

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ジャーナリストの佐々木俊尚が11月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福島第一原発の処理水問題について解説した。

福島第一原発の「処理水の報道」にみられる「新聞の自浄作用」の欠如

東電福島第1原発の敷地に並ぶ処理水などを保管するタンク=2021年1月6日 福島県大熊町、双葉町(写っているのは大熊町) 写真提供:産経新聞社

IAEAの専門家が福島県沖で海水採取

環境省と原子力規制委員会は11月1日、国際原子力機関(IAEA)の専門家らが11月に来日し、福島県沖で海水採取を実施すると発表した。東京電力福島第一原子力発電所でたまる処理水を2023年春以降に海洋放出することに備えて、日本が示すデータが正確かを調べる。処理水放出に反対する韓国からも分析機関の担当者が参加する。

飯田)海底の土や水生生物なども採取して、放射性物質の濃度を調べる予定だそうです。

佐々木)きちんと調査していただきたいですし、いい加減この議論を終わりにして欲しいです。同じことを言い続けているのに、未だに理解してくれないメディアや反原発の人がたくさんいる。

どこにでも存在するトリチウムは健康に影響ない

佐々木)汚染されている水が出ているのは間違いないのだけれど、多核種除去設備(ALPS)で除去すれば、大半の放射性物質は吸着されてなくなり、トリチウムだけが残るのです。トリチウムは、海中にもその辺りにも大量に含まれている……。

飯田)いま私の目の前にあるコーヒーにもH2Oがあるので、H3、トリチウムもあります。

佐々木)世界中の原子力発電所から水が放出されますが、あのなかにもトリチウムは大量に含まれているのです。今回、福島から出す処理水のなかに入っているトリチウムと、何ら量は変わりません。

放出する際にALPSで二次処理 ~あるのはトリチウムだけ

佐々木)それでも、「ALPSで処理してもまだ放射性物質が残っているではないか」と言う人はいます。当初、貯めたタンクには確かに他の核種が残っていますが、「放出する際にはもう1回ALPSで二次処理を行う」と東電は言っています。他の核種は全部なくなって、トリチウムだけになるということを説明しています。

飯田)トリチウムだけになる。

佐々木)「トリチウムが危険だ」と言っている人もいるのだけれど、先ほど言ったように、トリチウムはそこら中に存在するものなので危険はないし、除去できない。除去できないから世界中の原発でも放出されているのです。この説明もいい加減飽きましたよね。

飯田)東大の水産学の専門家にインタビューしたこともあるのですが、(トリチウムが)水にたくさん含まれているということは、水分として入るけれど、出ていくから結局、体内には溜まらないということです。

佐々木)なぜか「生物濃縮される」と言っている人もいますが、そんなことはないと何度も説明されているわけです。

IAEAの海水採取で問題ないことが立証されれば、晴れて「常磐もの」の魚が食べられる

佐々木)IAEAの海水採取で何ら問題ないということがわかれば、ようやく大手を振ってタンクの水を放出できるし、いよいよ福島県沖の魚も全面的に食べられるようになります。常磐ものと言われ、南から来る黒潮と北からの冷たい水がぶつかるところで、非常に魚がうまいことは昔から有名です。

飯田)常磐ものは。

佐々木)それが事故で獲れなくなってしまった。獲れなくなっている間に育って、いまは日本全国、乱獲で漁獲が激減しているのですが、獲っていないから常磐ものの福島県沖だけが異常に豊かになっている。それをみんなで食べる日がもうすぐやってくるということです。

飯田)すでに一部の流通では売られています。イオンなどが福島から直送している魚を売っていますが、現場の漁業関係者に聞くと、「あれは心強いのですよ」と。「あれでお客さんの顔を直接見られるのです」とおっしゃっていました。

地元漁協が反対しているのはタンク水放出ではなく、「風評被害」が出ること

佐々木)地元の漁協は反対だと言っているのですが、何に反対しているかと言うと、タンク水の放出そのものではなく、風評被害を懸念しているのです。

飯田)風評被害が出るのではないかということに。

佐々木)「漁協が反対している」と言っているけれど、「風評被害を起こしているのはメディアだろう」ということです。その視点が抜け落ちているので、メディアがきちんと「IAEAが採取したら問題ありませんでした」と伝えるべきです。タンクの水についても、トリチウム以外にありませんということを確認できれば、メディアも煽るのをやめて欲しいですね。

飯田)以前、IAEAの専門家チームが報告書を出し、日本記者クラブで会見まで行ったのですが、報じるメディアが非常に少なかった。むしろ地元の福島民報や福島民友の方が、詳しく説明しています。

メディアは煽るだけではなく、正確な報道をするべき

佐々木)国連科学委員会(UNSCEAR)は福島原発を科学的に調べ、何百もの論文も調べたけれど、健康被害は一切起きなかったという発表をしたのに、朝日新聞はその発表を報じませんでした。その代わり1~2週間経ってから、その発表に対して「科学者から反論相次ぐ」という記事を突然出した。「その科学者は本当に専門の科学者なのか?」という疑問符が各方面から出されたのです。

飯田)なるほど。

佐々木)なぜそこまでして「被害が出ている」と言いたがるのか。「被害が出ている」と言うことで世の中を騒がせているだけです。本当に福島の復興を考えるのであれば、「10年以上経って放射線も半減してきている」ということを報じるべきだと思います。

「自浄作用」のあるSNS ~「自浄作用」のない新聞

飯田)昔であれば、メディアによる報道だけだったところが、そのような報道が出ると、いまは専門家の人たちが逐一カウンターを当てるようにツイートします。

佐々木)SNSは「フェイクニュースだらけだ」と言われます。もちろん、一部だけを見るとフェイクニュースしか見えないのだけれど、デマのようなニュースが出回った瞬間に、さまざまな専門家が突然登場してきて、「それは違います」と反論します。

飯田)専門家の人が出てきて。

佐々木)全体としてみれば一種の「自浄能力」があるのがSNSの特徴です。そのためにはSNS全体を見るという、見る側のリテラシーも大事なのです。

飯田)見る側のリテラシーが。

佐々木)新聞は確かに、数としてはネットに比べるとデマは少ない。ただし、新聞の問題は自浄能力がないということです。デマを書いても、よほどのことがない限り、それを内部で批判したり否定したりする記事が出ることはありません。

飯田)新聞の場合は。

佐々木)紙面審査委員会のような第三者委員会がありますが、傍で見ていたこともあるのだけれど、識者を呼んでご意見を頂戴し、それについてみんなで話して何となくまとめ記事のようなものを出して終わり、という。

飯田)問題とされる記事があっても。

佐々木)審査委員会の意見をもとに記事を否定するとか、書き直すことは行われないのです。SNSと比べて自浄能力がないというのが、メディアの最大の問題です。それが今回、「汚染水」と呼び続けている新聞の体制にもつながっているのではないでしょうか。

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