人の移動によって情報が交換され、新しい戦術が採用される「地政学から見るW杯カタール大会」

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地政学・戦略学者の奥山真司が11月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。地政学から見るサッカーワールドカップ・カタール大会について解説した。

【サッカーカタールW杯2022 開会式 開幕戦カタール対エクアドル】国歌斉唱するカタールイレブン=2022年11月20日 アルベイトスタジアム 写真提供:産経新聞社

サッカーワールドカップ・カタール大会を地政学から見ると

現在開催中のサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会、ヨーロッパから13ヵ国、アジアから6ヵ国、アフリカから5ヵ国、南米・北中米カリブ海から4ヵ国ずつ、合わせて32の国が参加している。4年後の2026年大会はカナダ・メキシコ・アメリカの3ヵ国共同開催で、出場国も48ヵ国に増える。

奥山)国際政治の動きや戦略の視点から、今回のサッカーワールドカップを考えてみたいと思います。まず安全保障の観点から見ると、我々は「スポーツの祭典」として楽しく見ているのですが、どうしても腐敗の話が見えてきます。これは国際サッカー連盟(FIFA)ですね。人権問題について、向こうのメディアでは、たびたび報道されている印象です。日本ではポジティブに「日本頑張れ」なのですが、その部分は違うなと思います。

飯田)日本とは。

日本対ドイツ戦の陰にあった人権問題

奥山)まずはカタールの話です。子どものころに1年間だけいたことがあるのですが、あまり覚えていません。印象としては「アラブの国だな」という感じでした。カタールは天然ガスと石油が多く出るのですが、競技場の総工費が日本円で約40兆円と言われています。

飯田)40兆円。

奥山)「どれだけ金をかけているのだ」という話です。そして人権問題ではLGBTQ、性的マイノリティの方々への対応があります。

飯田)性的マイノリティの方々への対応。

奥山)ドイツと日本の試合がありました。あのとき日本ではあまり注目されませんでしたが、LGBTQのレインボーバンド着用に関し、現地カタールもしくはFIFAがあまりにイスラム系の国に阿りすぎて、それをドイツ代表に着けさせないということになりました。

飯田)ドイツ代表に着けさせなかった。

奥山)ドイツはリベラルな社会なので、「着けて試合をしたい」と言っていたのですが、禁止されてしまったためFIFAに抗議する方向になった。「レインボーバンドを着けさせないのは酷い」ということで、写真撮影をするときに全員が口に手を当てていました。日本は「ドイツを倒すぞ」といきり立っていたのですが、陰では人権問題があったということです。

サッカー全体がグローバル化している ~選手のなかに移民が多い

奥山)もう1つ戦略の観点で見ると、いまのサッカー全体がグローバル化していることが見えてきます。ヒト・モノ・カネの移動のなかで、移民や留学組、出稼ぎ組が選手のなかに多い。

飯田)確かにそうですね。

奥山)選手層を見ると、欧州でプレーした人が多いです。昔はごく一部だったのですが、いまは控えの選手まで欧州で活躍しています。

飯田)日本対ドイツ戦のあとで、現地で取材しているスポーツライターの方にお聞きしたのですが、取材していても「ドイツだからどうしよう」と気負うこともない。日本の選手の多くがブンデスリーガでプレーしているため、チームメイトやライバルだったりして、出方も知っているから「あの選手はこうくるだろう」という感じで、「国際試合で日の丸を背負って戦わなければ」という雰囲気でもないと話していました。そういうところもだいぶ変わったのだなと思います。

移民の選手も多く、グローバル化している

奥山)今回、ジャイアントキリングが何度かあったではないですか。

飯田)弱いとされているところが番狂わせというか、大金星を挙げることですね。

奥山)サウジアラビアがアルゼンチンを倒しましたが、選手の紹介などを見ると、チュニジアやサウジの選手が欧州のユースでプレーしている。もしくはフランス出身でフランス人なのだけれど、両親の関係でチュニジアでプレーしている選手もいて、国籍の移動の部分もあります。

飯田)確かに、ドイツ戦でドイツの代表を見ていても、「トルコ系なのかな?」という感じの人もいましたね。昔だと「ゲルマン魂!」と見た目にも強そうな感じがあったのですが、だいぶ多様だなと感じました。

奥山)「移民をどう使うか」ということがフォーカスされていて、フランス代表ではエムバペなども移民ですし、ジダンもそうですが、まさにグローバル化していると思います。

代理戦争として見るサッカーの試合

飯田)スポーツで「国旗を背負って戦う」となると、いろいろないわく・因縁というものも……。

奥山)ありますね。見ている側としては、代理戦というわけではないですが、試合では戦争用語も出るではないですか。日本も「勇気を出して」「戦う意志を」などの話がありますが。

飯田)「士気」ですとか。

奥山)言っていますね。スポーツは戦争の代わりではありませんが、代理戦争として見ると面白いところもあります。人は死なないのですが、スポーツは戦争の代わりだといつも思いますね。

それぞれの国の文化がサッカーにも影響している ~人の移動によって情報が交換され、新しい戦術が採用される

飯田)地政学では場所の特性を見ていきます。そうすると、立地によってサッカーもスタイルが変わり、文化も違う。それが戦略にも影響するところが見えますか?

奥山)チームのスタイルがかなりグローバルしていて、いい戦術はすぐに取り入れられてしまうこともあるので、わからないのですが、中国はあまりワールドカップなどに出て来ないではないですか。

飯田)サッカーでは。

奥山)あれは中国のトップダウンが激しいというところが文化的にあって、うまくいかないのではないでしょうか。組織づくりがうまいドイツが躍進しているとか、ベルギーは移民を多く入れたおかげで躍進できたとか、そういうところが見えてきて面白いですね。

飯田)そうですね。

奥山)「土地的にどうだ」ということはないかも知れませんが、人が移動することで情報が交換され、新しい戦術が採用されるなど、グローバル化が見えてくる感じがしますね。

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