国民民主党は「与党補完勢力」なのか
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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が11月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民、公明両党と国民民主党などの賛成多数で可決された、今年度の第2次補正予算案について解説した。
物価高騰対策を盛り込んだ第2次補正予算案、衆院予算委員会で可決
物価高騰対策などを盛り込んだ経済対策の裏付けとなる今年度第2次補正予算案は、衆議院予算委員会で採決が行われ、自民、公明両党と国民民主党などの賛成多数で可決された。
飯田)衆院を通過し、参院に回るという流れになります。与党側は今週中の成立を目指すとのことです。どうご覧になりますか?
国民民主党が予算案に賛成したことは1つの考え方として理解できる
松井)いまの経済状況で、日本は欧米のような物価高にはなっていないけれど、この物価高で悲惨な状況にならないように、従来の常識から言うと相当思い切ったものです。そういう意味では、玉木さんがガソリン価格をどう抑えるかということで随分と主張され、それが(予算案に)取り入れられて賛成したというのも、1つの理屈だと思います。
飯田)国民民主党が賛成したことは。
松井)財政を破綻させても仕方がないので、とりあえず、いまは国債でも消化できているから国債を使う。あるいは外為特会の現在の含み益をどう使うかについては、それでいいのです。高橋洋一さんが言っているように、基金にするというのはまだわかります。
飯田)できるのであれば。
松井)しかし、とにかくいまあるもので賄い、増税は全然議論しないという積み重ねがモラルハザードを招いているのです。いまの異常な状態をどう正常化していくか、中長期的に見取り図を示して議論して欲しいですね。
飯田)中長期的に。
松井)「とにかく増税はダメだ」と言うのではなく、「いまはこの財源があるから、そこを使いましょう。それは将来のために使いましょう」ということを議論しなければダメだと言っているのです。そういう意味では、国民民主党がいまの状況のなかで予算案に賛成したことは、ある程度理解します。
与党に対して野党は中長期的な視野での対案を出していない
松井)与党は「いまどう(社会を)回していくのか」を考えなければならない。それは与党の責任であり、閉店できないわけです。店開きをして、いまの経済をどう回していくのか、人々が悲鳴を上げているときにどう救うかという姿勢は、放棄できないのです。
飯田)与党は。
松井)それに対して野党は、いまはこの商売でいいけれど、「我々は5年後、10年後にこういうものを中心に品揃えします」と。その財源をどうするかということを示して、中長期的に論争し、将来、2~3年後の選挙のときには「私たちに投票してください」と示すべきだと思うのです。
飯田)野党としては。
松井)そういう意味では、国民民主党は与党的になってしまった。それはそれで1つの考え方です。与党補完勢力というか、与党に刺激を与える勢力。政権外協力で是々非々であるという党があってもいいと思います。
飯田)国民民主党は。
松井)問題は立憲民主党や日本維新の会です。より中長期的に、自分たちならこういうところにお金を使うと。それは必ずしも増税とパッケージでなくてもいいのです。歳入を工夫しながら使うということを、ある程度示していければいいのです。
飯田)増税とパッケージでなくてもいい。
松井)今回の国会論戦を見ていて、私も泉健太さんに言いましたし、彼も予算委員会でパネルを使いながら、「自分たちならこういうことをやる」と討論したことはよかったと思います。維新の馬場さんが、所得制限の問題も含めながら「こういうところに給付すべきだ」と。給付合戦になっているところは気になるけれど、「我々ならこちらにお金を使う」という議論をされたのは、少し進歩を感じました。
飯田)対案を出したことに。
松井)維新と立憲民主党は、旧統一教会の被害者救済ではより高めのボールを投げてきていますが、そういうところだけではなく、トータルな財政、経済全体で何に注力して税金を使うのか。あるいは同じ借金をするなら、こういうところに借金で得た財源を使うべきだという考えを示す。5年~10年単位で「自分たちは成長戦略でここに重きを置く」というところを議論して欲しいですね。
政権交代が必要な理由
飯田)イギリスで野党のことを「女王陛下の野党」と呼ぶのは、与党は近視眼的になりがちだけれど、「国のことを考えて、先を見つめるのは野党の責任なのだ」という考えも含意としてあるのですか?
松井)政権交代をしている国では、「与党はどこかで野党にならなければダメだ」と言う人がいるのです。他の国ではだいたい定期的に政権交代が行われています。
野党になれば支援団体との関係をリセットできる
松井)与党でいる間は、いろいろなしがらみができるのです。例えば医師会との関係など。それも含めて回していかなければならない。
飯田)しがらみが。
松井)1回野党になれば、そのしがらみを切るチャンスだと諸外国の政党は言うのです。1回リセットして、でき上がった既得の支援団体との関係をリセットし、本当に必要な予算の支出先を見直すチャンスになる。そのためにも政権交代しなければいけない。要するに1回リセットするということです。
野党は全体像を通して新しい発想で政策を考えるべき
松井)逆に言うと野党は、自民党とは違う視点で切り込んでいくことが必要なのです。国民民主党は私のなかで言うと、野党ではなく、いまの日本の経済をどう回していくかという意味では与党的です。そういう議論も必要です。
飯田)国民民主党のような。
松井)野党が従来の自民党のバックグラウンドにいる、いろいろな団体との関係に縛られないような新しい発想で、「自分たちならこう組み立てる」という政策の全体像を示して欲しいです。
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