ジャーナリストの佐々木俊尚が12月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ドローンによる郵便配達について解説した。
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日本郵便が国内企業の産業用ドローン開発を手掛けるACSLと資本業務提携で開発中の物流専用ドローン(模型)。両社間では「バード」と呼ばれ、最大積載重量5キロ、最大飛行距離約35キロを誇る=2022年12月6日、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社
ドローンで郵便配達 ~アフリカで急激に発達
日本郵便は12月6日、ドローンを使った郵便配達を2023年度から本格的に始めるとして、開発中のドローンを公開した。郵便ポストをイメージした大きさが1メートル50センチほどの赤い色の機体で、手紙やはがきなどの郵便物と宅配の荷物を重さ5キロまで運ぶことができ、およそ35キロの距離を一度に飛ぶことができるとしている。
飯田)12月5日から改正航空法が施行され、「レベル4」……目視できない住宅地の上空なども飛行できるようになったことから、こういう報道が出てきたようです。福島県の浜通りでは、郵便配達を拠点間で運ぶ実証実験などが行われていました。
佐々木)アフリカではドローンによる配達が急激に進んでいるのです。雨期になるたび道路が水没してしまったり、泥沼になってしまうので、ドローンで運ぶ方が早いということです。重い荷物はもちろん無理ですが、5キロくらいなら運べます。日本のイメージで言うと、Amazonが持ってくるような宅配便は運べるのではないでしょうか。
インフラが遅れている国の方がスマホやドローンが普及する
佐々木)日本でWi-Fiが発達しなかったのはなぜかと言うと、光ファイバーが普及していたからです。同じように道路が発達していると、なかなか航空配達は普及しないという問題があります。
飯田)道路が発達していると。
佐々木)インフラが遅れている国の方が先に進む。それをテクノロジー用語では「リープフロッグ」と言います。蛙飛びのことです。だからアフリカの方でも、ドローンが先に発達する現象が起きているのです。
飯田)スマホの普及もそうでしたものね。
佐々木)日本では固定電話が普及していたので、携帯電話がなかなか普及しなかった。逆の現象が常に起きるということです。
ドローンによる郵便配達が街のなかでできることは大きい
佐々木)日本でもできるようになったことは、大きな話です。レベル1~レベル4まであって、レベル4は最終段階です。つまり有人地帯、住宅街など人が住んでいる地域の真上を、しかも目視しない、操縦士が見ていなくても無人で飛行できるというのがレベル4なのです。
飯田)無人で飛行できる。
佐々木)離島や無人の地域での配達をイメージしていると思うけれども、これができるようになれば、街のなかで宅急便の配達をドローンが行えるようになる。それは大きなことです。
飯田)そうですね。
佐々木)事故なしで運用できて、実績を積み上げられれば相当大きいと思います。ドローンが頭上を飛んでいるのはイメージが悪いわけです。しかも5キロの荷物を運んでいれば、「落ちたらどうするのだ」と怖がる人はたくさんいます。
飯田)落ちたらどうするのかと。
佐々木)日本は特にテクノロジーを怖れる人が多いので、何か起きるとすぐに「テクノロジーが進化しすぎたせいだ」などと批判する。
飯田)新しいものなど使うからだと。
佐々木)戦後、日本の高度経済成長はテクノロジーによって先進的なものが普及したわけです。トランジスタラジオをはじめ、DVDやテレビなど、みんなそうでした。
テクノロジー後進国にならないためにもドローンによる郵便配達を進めるべき
佐々木)しかし、1970年くらいの公害問題が活発なころに、科学や技術と言いすぎると、今度は「マイナスなことが起きる」というイメージが強くなりすぎてしまった。テクノロジーと言った瞬間に、「テクノロジーは人を幸せにしない」というようなステレオタイプの言説ばかりが広まる傾向がありました。
飯田)ありましたね。
佐々木)そんなことばかり言っていたから、気付けばテクノロジー後進国になってしまっているのです。前に向かうためにも、ドローンによる郵便配達を進めるのは大事なことだと思います。
飯田)成功体験を積み上げていくのは大事ですよね。
佐々木)そうなのですよ。