大企業は利益を下請けの中小企業に「還元」するべき
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが12月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。アメリカ経済による日本への影響について解説した。
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世界的にインフレが落ち着けば日本のインフレも鈍化する ~半年のズレがあり、日本のインフレ脱却は先
飯田)アメリカのインフレが落ち着いてくると、日本への影響はどのようなものが考えられますか?
クラフト)当然、世界的なインフレが落ち着けば、日本のインフレも少し鈍化してくると思います。ただ、日本のインフレは半年ぐらいズレがありますので、2023年前半もインフレ圧力は非常に強いと思います。ご存知のように電気料金も大幅に上げられますから、まだまだ日本のインフレ脱却は先の話だと思います。
飯田)12月12日に発表された企業間の取引の物価、企業物価を見ると、前年同月比で9.3%上昇しています。そのかなりの部分をエネルギーが占めている。しかし、原油価格は1バレル70ドル台前半ぐらいまで落ちてきていますよね?
クラフト)日本の場合、電気は原油ではなく、ほとんどがガスと石炭です。原油が下がっても、ガスと石炭の値段が下がらなければ日本の場合は影響しません。
まだインフレ拡大傾向にある日本
クラフト)企業物価が大事で、いま9.7%です。そしてインフレ率が3.7%。これが縮まらないとインフレが上がり続けるか、企業収益が下がり続けるかのどちらかなのです。よく「インフレはいつまで続くのですか?」と聞かれますが、まだ差があります。アメリカは11.3%と、かなり下がってきているので、アメリカは収束傾向にあります。緩やかなのです。日本はまだインフレ拡大傾向にあります。
飯田)企業物価の方が高いということは、消費者物価に対して転嫁できていないのですね。
クラフト)そういうことです。転嫁しないと企業収益は減り、賃金も上がらない。逆に転嫁するとインフレが上がります。
飯田)転嫁した方がいいのではないかという話と、転嫁したら今度はインフレが加速して、さらに転嫁しなければいけなくなるという、インフレスパイラルに陥るのではないかという指摘もありますね。
クラフト)転嫁した分、企業収益が上がって、その収益を賃金に回せば好循環なのですが、回さなければ大変なことになります。やはり2023年の春闘の賃金動向が重要になってきます。
内部留保を積み上げている大企業 ~一方で厳しい状況の中小企業
飯田)企業の内部留保が相当積み上がっているという報道もあります。
クラフト)積み上げているのは大企業です。中小企業は難しい立場で、内部留保もないし、収益が圧迫されている。そこに「賃金を上げろ」と言われると、非常に厳しい。
飯田)中小企業は。
クラフト)日本の雇用の7割は中小企業が占めているので、いくら大企業が賃金をアップしても、中小企業がついてこなければ全体的な賃金アップにはつながりません。そこが難しい状況です。
飯田)中小企業はダブルパンチ、トリプルパンチを受けてしまっている。「もしこれで利上げがあったら、うちの会社は持たないよ」と言う企業経営者の方もいらっしゃいました。
クラフト)既に人が雇えない、賃金が払えない、さらに給料アップができないので人が来ない。人が来ないと仕事にならないということで、相当苦しんでいらっしゃる企業さんも多いかと思います。
飯田)賃金を上げるということは、社会保険料も上がり、会社の負担も大きくなる。そこで躊躇してしまうところもあります。
大企業は収益に合わせて利益を下請けの中小企業に還元するべき
クラフト)ここは大手企業が、そのようなところも政府と一緒に考えていくべきです。下請けになっている中小企業も多いので、大手企業がある程度、賃金同様に収益に合わせ、下請けにも利益が還元されないと経済は回りません。
飯田)大企業だけが収益を上げて万骨枯るというようなことになると、意味がないですよね。
クラフト)特に製造業は円安で儲かっている傾向ですので、単に従業員の賃金だけではなく、下請けの中小企業にも還元するべきです。これも1つのポイントですね。