日本のリーダーシップ発揮には、岸田総理の「ゼレンスキー大統領との直接会談」が不可欠

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二松学舎大学国際政治経済学部・准教授の合六強氏が1月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。1月11日に行われた日英首脳会談について解説した。

日本のリーダーシップ発揮には、岸田総理の「ゼレンスキー大統領との直接会談」が不可欠

ウクライナのゼレンスキー大統領(ウクライナ・キーウ)=2022年11月26日 EPA=時事 写真提供:時事通信

日英首脳会談、「円滑化協定」に署名

主要7ヵ国(G7)のうち、5ヵ国を歴訪中の岸田総理大臣は現地時間1月11日(日本時間11日夜)、イギリスのスナク首相と首脳会談を行った。両首脳は自衛隊とイギリス軍のスムーズな往来を可能とする円滑化協定(RAA)に署名し、安全保障面での協力や経済分野での連携強化を確認した。

お互いの部隊アセットの行き来をスムーズにすることが狙い

飯田)直近でイギリスのスナク首相との会談がありましたが、どうご覧になりますか?

合六)今回の日英首脳会談のいちばんの目玉は、円滑化協定(RAA)の署名だと思います。円滑化協定は、共同訓練などでお互いの部隊が相手国に滞在する際、入国審査などの免除、あるいは武器・弾薬の持ち込みなどを簡素化するもので、部隊アセットの行き来を文字通り円滑化、スムーズにすることが狙いです。

飯田)円滑化協定の狙いは。

合六)1年前にオーストラリアとの間でも同じような協定が締結され、今回は日本にとって2例目になります。これを締結したことで、日英でこれからより頻繁に「大規模な軍事訓練や演習を実施していく」という強い意思の表れになりますし、他のヨーロッパ諸国、例えばフランスなどとも、こういう協定を結ぼうとするのではないかと思います。

インド太平洋地域への軍事的な関心を強めるヨーロッパ諸国

飯田)意図としてはやはり、その先に中国の存在があるわけですか?

合六)もちろん中国が念頭にあるわけですけれども、背景にはアメリカ以外、いわゆるパートナー諸国との関係を強化していきたい思惑があります。さらにヨーロッパという観点から見れば、ここ数年、ヨーロッパ諸国にとっても経済的にインド太平洋は大変重要なのですが、地政学的にみると非常に不安定であり不透明なので、こちらへの軍事的な関与を強めているのです。

中国の影響力が拡大しているなかで日本や韓国と協力を深めていきたい

合六)このような状況はこれまでになかったので、まずいろいろなことに取り組みつつ、このような協定を結ぶことにより、演習を頻繁に行って互いのことを知る。あるいは自分たちの技術や能力を向上させていく狙いがあるのだと思います。

飯田)実際にイギリスから空母「クイーン・エリザベス」が来たこともありましたけれど、同様のことが今後も続くのでしょうか?

合六)これまでの日欧間の演習は儀式的なものが多かったのですが、ここ数年、よりプラクティカル(実際的)な協力、あるいは演習が進められています。

飯田)実際的な。

合六)それだけヨーロッパ側も真剣なのです。フランスもこの地域に自分たちの領土や国民を有していますので、とりわけ中国が影響力を拡大していることに対し、同じような価値を共有する日本や韓国などとも協力を深めていきたい考えだと思います。

日本がG7議長国として外交や安全保障面、国際社会でリーダーシップを発揮するか

ジャーナリスト・鈴木哲夫)これから行われる日米首脳会談のポイントは、どこにあると思いますか?

合六)12月に安保3文書が改定されて、アメリカ側からも既に評価する歓迎の声が聞かれています。改めて首脳間で今後、具体的にどういう方向に向かっていくのかが詰められるでしょうし、「国際社会に向けてそれを発信できるか」というところに注目すべきだと思います。

飯田)どのように国際社会に発信できるか。

合六)今年(2023年)は、今回の歴訪の目的でもあるように、日本はG7議長国です。アメリカだけではありませんが、日本がどのように国際社会に対して外交や安全保障面でリーダーシップを発揮していくか、それを全面的に打ち出せるかどうかが問われると思います。

「ウクライナ情勢」において日本がリーダーシップを発揮するために ~「直接訪問」と密接に関わってくる

飯田)G7に向けたところでは、ウクライナに関する話になりますが、ゼレンスキーさんと顔を合わせていないG7トップは日本だけなのですよね?

合六)イタリアは政権交代したため、メローニさんがまだゼレンスキーさんに会っていません。今回はなさそうなのですが、もし岸田首相がキーウ、あるいはウクライナのどこかを訪問するとなれば、メローニさんとセットで「日伊首脳会談後に行ければいいのにな」と個人的には考えていました。

飯田)メローニさんと一緒に。

合六)G7議長国として、今年の大きなテーマの1つは「ウクライナ情勢」になります。岸田さんがこの件に関して、どれだけしっかりとリーダーシップを発揮できるかということと、直接訪問は密接に関わってくると思いますので、ぜひ期待したいポイントです。

ゼレンスキー大統領と直接会って話すことがさまざまな意味で重要

飯田)ゼレンスキーさんとの電話首脳会談のなかでも招請を受けたという報道がありましたが、G7にオンラインで参加ということでは、ゼレンスキーさん的にも難しいのでしょうか?

合六)ヨーロッパに行く前に、岸田首相はゼレンスキー大統領と電話会談しましたけれども、やはり直接会って、何がいま必要なのか、あるいは現地の雰囲気がどうかも踏まえて感じ取っていただく。それは既に訪問しているヨーロッパの首脳陣と今後、直接議論していく上で非常に重要だと思います。

飯田)直接会って話して。

合六)日本は欧米諸国のように直接の武器支援はできない、できていないわけですけれども、それ以外のところで、ウクライナにおいて「いま何が必要とされているのか」を個人として理解することが重要だと思います。

戦争や大震災から復興した日本のノウハウに期待するウクライナ

飯田)地雷の除去など、日本にできることはたくさんあると指摘されていますものね。

合六)まだそういう局面ではないかも知れませんが、復興を考えたときに、日本がこれまで戦争、あるいは大震災後に復興してきたことに対して、日本側に大きなノウハウがあるという期待感もあります。そういう観点からも、日本がリーダーシップを発揮できる分野はあると思います。

「核なき世界」において自らの行動を示すことは重要なメッセージとなる

飯田)岸田さんは「核なき世界」を言っていますけれども、核の脅しを受けているウクライナからするとどうですか?

合六)今年、G7を広島で行うのも、そういうところを意識しているわけです。現実的に核なき世界に向けて一歩一歩進んでいくならば、核の脅威、核が使われるかも知れないという懸念が高まるなかで、自らの行動を示していくことは重要なメッセージになると思います。

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