国際政治学者で慶応義塾大学総合政策学部准教授の鶴岡路人氏が1月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナへの欧米各国による戦車の供与について語った。
欧米各国でウクライナへの戦車供与の動きが広がる
アメリカのバイデン大統領は1月25日、ロシアによる侵略が続くウクライナに対し、アメリカの主力戦車「エイブラムス」31両を供与すると発表した。またドイツ政府も25日、ドイツ製戦車「レオパルト2」を供与すると発表したことに加え、「レオパルト2」を保有している国がウクライナへ供与することを認める方針を示すなど、欧米各国ではウクライナへの戦車供与を検討する動きが広がり始めている。
外堀を埋められ、ウクライナに戦車を供与せざるを得なくなったドイツ ~「ドイツは(レオパルトを持つ)他国が供与することも拒否するのか」と厳しい視線が向けられ
飯田)ウクライナへの戦車供与に関して、大きく動いたように見えます。鶴岡さんは現地にいらっしゃるということですが、その辺りはどのように受け止められていますか?
鶴岡)本当に「バタバタと決まった」という感じだと思います。バタバタのいちばん大きな原因は、やはりドイツがなかなか決められなかったということです。ドイツが戦車の供与を決断することに対しては、外堀が埋められていって、最終的に決着したという感じですね。
飯田)外堀が埋められていった。アメリカなどからの圧力があったのでしょうか?
鶴岡)アメリカもですが、直接的には「ドイツの戦車(レオパルト)をウクライナに供与したい」あるいは「する用意がある」と言っている国との関係です。
飯田)レオパルトを持つ国との関係。
鶴岡)ウクライナに供与するということは、第三国に移転するということになり、再輸出の許可を得なければならなかったので、ポーランドを筆頭にドイツに対して輸出の許可を求めたのです。ドイツは「自国の戦車を供与すること」に悩んでいたのはもちろんですが、それ以前の問題として「他国がウクライナに供与することも拒否するのか」と、非常に厳しい視線が注がれていました。
ドイツが逡巡したことでドイツの信頼性に悪影響が出た
飯田)このインパクトによって、戦況はどう推移していくと考えられますか?
鶴岡)どれぐらいのタイミングで戦力化できるかどうかだと思います。戦車を並べただけでは意味がありません。「どのように使うか」、「どんな作戦をどこで行うか」ということ次第だと思います。
飯田)戦車をどう使うのか。
鶴岡)今回、ドイツがだいぶ逡巡したので、ドイツの評判あるいは信頼性にかなり悪影響が出たと思います。ドイツのショルツ首相は「アメリカが供与するなら我々も供与する」という言い方をしていました。結局、「自分たちは決められない。アメリカが決めてくれ」と言っているように聞こえてしまい、「後味が悪い」と言えるのではないでしょうか。
「戦争を終わらせるためには戦車の供与が必要」という議論が「供与すればエスカレーションしてしまう」を上回ってきた
飯田)戦力化までに時間が掛かることになると、ロシア側がそれを見越して先手を打ってくる可能性もありますよね?
鶴岡)今回「ロシア側が新しい攻勢に出るかも知れない」という懸念が高まっていたので、NATO諸国からの戦車供与が緊急で必要になったという背景があります。
飯田)ロシアの新たな攻勢に対して。
鶴岡)もう1つ非常に重要なのは、いままでは「戦争がエスカレーションしてしまうかも知れない」として、ドイツも慎重でした。
飯田)戦車を供与すれば。
鶴岡)それに対して「戦車を供与すべきだ」と言う人たち、あるいは国の議論は「戦車を供与しないと戦争が長期化してしまう」という方向なのです。要するに戦争を終わらせるためには、ロシア軍を少しでも多くウクライナの領土から追い出すことが必要になります。
飯田)戦争を終わらせるには。
鶴岡)そうすると戦車が必要になるので、「戦争を早く終わらせるために戦車供与が必要だ」という議論が、「エスカレーションが心配だ」という議論を上回ってきた。それがここ数週間の注目点だったと思います。
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