NATO事務総長が来日するに至った「ウクライナ情勢の東アジアへの影響」

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ジャーナリストの佐々木俊尚が2月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。NATOのストルテンベルグ事務総長の来日について解説した。

NATO事務総長が来日するに至った「ウクライナ情勢の東アジアへの影響」

2023年1月31日、共同記者発表~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/31nato.html)

ストルテンベルグNATO事務総長が来日

飯田)1月30日から北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長が来日しており、1月31日夕方には岸田総理大臣との会談も行われました。NATOはロシアが侵略するウクライナ情勢の正面となります。ただ、最近は東アジア情勢に関しても興味を示すようになってきています。

佐々木)ウクライナ侵攻が起きる以前は、中国が南シナ海に進出するなど対外的に脅威となっていて、東アジアでは危機感を持って受け止められていました。しかし、ヨーロッパはあまり興味がなかった。

飯田)ウクライナ侵攻前までは。

佐々木)その背景には、中国との経済の結びつきが強いという側面がありました。ドイツなどは最大の貿易対象国だったわけです。だから中国を刺激したくない部分もあり、NATOとしては「太平洋の話は勝手にやってくれ」という思いがあったのでしょう。

ロシアのウクライナ侵攻により東アジア情勢にも興味を示すようになったNATO

佐々木)ウクライナ侵攻が起きて、ロシアの脅威が俄然高まり、さらにロシアの背後には中国がいることもわかった。中国・ロシアを中心とした独裁国家軍VS西側の自由主義国というような構図になってきたので、ヨーロッパとしても中国を放っておくわけにはいかなくなった。

飯田)ロシアとともに。

佐々木)ウクライナ侵攻は許されない話なのだけれども、一方で日本としては、ヨーロッパがこちらを向いてくれた。不幸中の幸いでもないのですが、ある意味では「よかったかな」というところはあると思います。

自分たちで守らなければ、他の国々も助けてくれない ~日本は台湾有事の際、アメリカとともに台湾を応援しなければならない

飯田)ウクライナ情勢を見ると、「自分たちで守らなければ他の国々も助けてくれない」など、いろいろな教訓を引き出すことができます。

佐々木)台湾に関しても、台湾が自分たちで台湾を守ろうとしない限り、アメリカもその他の国も支援はしないという気運になりつつある。日本も同じで、台湾有事が起きたら「日本は中国に勝てるわけがないのだから、手を出してはいけない」と言う人たちがいますが、日本にはそもそも日米安全保障条約があるわけです。

飯田)アメリカとの間に。

佐々木)安保条約に従い、米軍が台湾を支えに行くのであれば、日本は基地を提供する。あるいは後背地の守りを備えるなど、協力しなければいけません。それさえもやらないということになると、日米安保条約の理念に反するわけですし、日本が台湾を応援しなければ、日本が仮に戦禍に巻き込まれても誰も助けてくれないことになります。

飯田)そうですよね。

佐々木)……という当たり前のことが、今回のウクライナ侵攻で目の当たりになったのではないでしょうか。

ウクライナ情勢により、ドイツが防衛費を倍増 ~その影響で日本も防衛費増額へ

飯田)この辺りの危機感はアメリカもそうですし、日本も矢継ぎ早に防衛3文書を改定するなど、水面下の危機感は高まってきています。

佐々木)ドイツが防衛費を倍増させて、一気に変わったことの影響は大きかったと思います。ドイツが置かれている立場は日本よりも強力だったのです。冷戦下には東ドイツがあり、東側だったので親ロシアの人たちが多い。

飯田)ソ連圏ですよね。

佐々木)加えて、第一次世界大戦も第二次世界大戦も、ドイツが侵略を図ったという負い目がある。ホロコーストもあり、さらに東ドイツもあった。ドイツとして「軍備を増やす」という発想はまったくなかったわけです。「経済に関しては我々が何とかするけれど、安全保障に関してはフランスやイギリス、その他がどうにかしてくれ」と。あとはアメリカに頼ろうという感じだったのが、今回のウクライナ侵攻で一気に変わった。その影響で、日本もここまで防衛費増額の話が進んだところもあると思います。

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