長崎・対馬仏像、日本側に所有権 韓国の寺が逆転敗訴 「まともな判決だが、すぐには返ってこない」辛坊治郎が解説

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キャスターの辛坊治郎が2月2日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。長崎県対馬市の観音寺から盗まれ韓国に渡った仏像をめぐり、韓国の浮石寺(プソクサ)が倭寇に略奪されたものだとして所有権を主張している裁判で、韓国の高等裁判所が浮石寺の主張を認めた1審判決を取り消し、観音寺の所有権を認める判決を出したことについて、「まともな判決だが、すぐには返ってこない」と解説した。

長崎・対馬仏像、日本側に所有権 韓国の寺が逆転敗訴 「まともな判決だが、すぐには返ってこない」辛坊治郎が解説

長崎県対馬市の観音寺から盗まれた「観世音菩薩坐像」 写真提供:共同通信社

長崎県対馬市の観音寺から2012年に盗まれ韓国に渡った仏像をめぐり、韓国の浮石寺が中世の時代に倭寇に略奪されたものだとして所有権を主張し引き渡しを求めている裁判で、韓国の2審の高等裁判所は1審とは逆に浮石寺側の訴えを退け、引き渡しの要求を認めないとする判決を言い渡した。韓国の浮石寺側は上告する方針だという。

辛坊)日韓関係に横たわる、わりと大きな諸懸案の1つです。この仏像は長崎県の指定有形文化財「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」で、2012年10月に盗まれ、韓国の捜査当局が翌年、窃盗団を摘発し回収しました。約10年前の事件ですが、当時は地方の寺社は無防備で、売買したら億単位の値段がつくような仏像が本堂などにセキュリティーなしに置きっぱなしになっていて、仏堂が盗まれるという騒ぎが相次ぎました。

問題となっている仏像は、14世紀に朝鮮半島の浮石寺で作られたことが文献で確認されています。日本に渡ったのは16世紀です。以来、約500年もの間、対馬では地元の皆さんの尊崇を集めてきました。それが、約10年前に韓国の窃盗団に盗まれたわけです。

その裁判の経緯は複雑です。韓国の浮石寺は、仏像は数百年前に倭寇に略奪されたとして所有権を主張し、韓国政府に仏像の引き渡しを求める訴訟を起こしました。浮石寺と韓国政府が争ったわけです。当時の朴槿恵(パク・クネ)政権は、日本との関係がそう悪くはありませんでしたから、少なくとも2012年に日本で盗まれ韓国へ違法に持ち込まれたことは明らかだということで、浮石寺へ仏像を引き渡すわけにはいかないと考えたのでしょう。一方、裁判所は反日世論にも忖度しますから、浮石寺の言い分を認めたのだと思います。

そして今回出されたのが2審判決です。判決では、浮石寺の主張を認めた1審判決を取り消し、対馬の観音寺の所有権を認めました。具体的には、14世紀当時に作られた仏像の所有権を持っていた浮石寺が、現在の浮石寺と同一の寺院だとする根拠が不十分だとしています。2審判決が観音寺に有利に働いた要因の1つには、1審の際には審理に関わらなかった観音寺側が、2審では積極的に審理に関わったことも影響していると思われます。

ただ、問題はここからです。合法的に所有権が移転されたと分かっていない物に関しては、もともとあった国にできるだけ戻そうというのが現在の世界的な潮流です。イギリスの大英博物館やフランスのルーブル美術館などには多くの盗品がありますから、いずれも旗色が悪いご時世です。そうした状況の中では、支持率にかかわる世論を気にする韓国政府も慎重にならざるを得ません。また、所有権が認められなかった浮石寺は上告する方針を表明しています。最終判断は日本の最高裁にあたる大法院の判決を待つことになるでしょう。

こうしたことを鑑みると、問題の仏像をめぐる韓国の裁判で今回、まともな判決がようやく出たわけですが、すぐに仏像が返ってくるという状況ではありません。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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