『シャイロックの子供たち』阿部サダヲ主演、メガバンクの“裏の顔”を暴く?

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1103回】

『シャイロックの子供たち』

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シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画・ドラマを発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、2月17日公開の『シャイロックの子供たち』と『別れる決心』をご紹介します。

『シャイロックの子供たち』

『シャイロックの子供たち』

映画館で観たい!『シャイロックの子供たち』 ~人間の本性、炙り出します!?

池井戸潤自身が「僕の小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊」と語る、「シャイロックの子供たち」。累計50万部を超える傑作ミステリー小説が、待望の映画となりました。

本作は、小説やドラマ版とは異なる、映画版ならではの完全オリジナルストーリー。銀行を舞台に巻き起こる現金紛失事件が、エキサイティングに映し出されます。

『シャイロックの子供たち』

『シャイロックの子供たち』

『シャイロックの子供たち』のあらすじ

事件は、東京第一銀行長原支店で起きた。「現金が足りないんです」……当日の日付が入った札束の帯封が、忽然と姿を消してしまったのだ。

お客様係の西木雅博は、同じ支店の北川愛理、田端洋司とともに事件の真相を探っていく。中小企業や町工場がひしめき合う場所に立地している小さな支店は平和そうに見えて、実は曲者銀行マンの巣窟だった。

出世コースから外れた支店長、パワハラ副支店長、ワケありのエース営業マン。そして、本店検査部からやって来る、嫌われ者の調査員。

事件の裏側を探っているうちに、西木はある事柄にたどり着く。それは、メガバンクにはびこる巨大な不祥事への入り口だった……。

『シャイロックの子供たち』

『シャイロックの子供たち』

『シャイロックの子供たち』のみどころ

主人公の西木雅博を演じたのは、池井戸潤作品への参加は本作が初となる阿部サダヲ。

“池井戸潤作品の主人公”と言えば、「半沢直樹」の半沢直樹や「下町ロケット」の佃航平のような熱量の高いキャラクターをイメージしがちですが、今作に登場する西木は、穏やかな人柄で課内のムードメーカー的な存在。

阿部サダヲは軽妙さと冷静さを兼ね備えた演技で、池井戸作品における新たな主人公像とも言える役どころを確立させています。

また共演には、真面目な女性行員・北川愛理役の上戸彩、投資信託などを担当する営業行員・田端洋司役の玉森裕太をはじめ、柳葉敏郎、杉本哲太、佐藤隆太、柄本明、橋爪功、佐々木蔵之介といった豪華キャストが集結。事件の裏から透けて見える行員たちの泥臭い人間模様は、見応えたっぷりですよ。

『シャイロックの子供たち』

『シャイロックの子供たち』

タイトルにもなっている「シャイロック」とは、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ヴェニスの商人」に登場するユダヤ人で、強欲な金貸しのこと。

シェイクスピア作品のなかでは、主人公・アントーニオの勧善懲悪による“喜劇”と位置付けられている「ヴェニスの商人」。しかし一方では、“悪人”であるシャイロックの悲劇として捉えることもできると言われており、現在でも演劇人や文学者によってさまざまな解釈がなされていることで知られています。

そんなシャイロックになぞらえてストーリーが展開していく本作は、自分が持つ善悪の基準だけでなく、人としての矜持を問われているように感じる人も多いのではないでしょうか。

銀行という組織を通じて、普通に働き、心配なく生きていくことが、いかに幸福で困難であるかを浮き彫りにしたミステリーエンターテインメント。予想外の逆転劇の行方は、是非、スクリーンで確かめて。

『別れる決心』

『別れる決心』

コチラも映画館で観たい!『別れる決心』 ~愛はいつもミステリー

『オールド・ボーイ』『お嬢さん』など、数々の傑作を世に送り出してきた韓国映画界の巨匠パク・チャヌク監督最新作。

“刑事と容疑者”という関係で出会った男女。取り調べが進むうちに、互いに特別な感情を抱き始める。少しずつ距離を縮めていく2人は、相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”へと足を踏み入れていく……。

これまでは、性描写や残酷描写がふんだんに盛り込まれた強烈な作品を発表し続けてきたパク・チャヌク監督。本作は一転、ミステリーとロマンスがしなやかに溶け合った極上のラブサスペンスとなりました。

じっくりと、そして静かに心理描写を描き出した演出の妙は、「第75回カンヌ国際映画祭」(2022年)で監督賞を受賞したのも納得の一言。パク・チャヌク監督の新たな魅力に触れることができる傑作です。

『シャイロックの子供たち』

『シャイロックの子供たち』

『シャイロックの子供たち』

2023年2月17日(金)から全国ロードショー
出演:阿部サダヲ、上戸彩、玉森裕太、柳葉敏郎、杉本哲太、佐藤隆太、渡辺いっけい、忍成修吾、近藤公園、木南晴夏、酒井若菜、西村直人、中井千聖、森口瑤子、前川泰之、安井順平、徳井優、斎藤汰鷹、吉見一豊、吉田久美、柄本明、橋爪功、佐々木蔵之介

原作:池井戸潤『シャイロックの子供たち』(文春文庫刊)
監督:本木克英
脚本:ツバキミチオ
音楽:安川午朗
主題歌:エレファントカシマシ「yes. I. do」(ユニバーサルシグマ)
配給:松竹
(C)2023「シャイロックの子供たち」製作委員会
公式サイト https://movies.shochiku.co.jp/shylock-movie/

『別れる決心』

『別れる決心』

『別れる決心』

2023年2月17日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:タン・ウェイ、パク・ヘイル、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ
原題:헤어질 결심
英題:Decision to Leave
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト https://happinet-phantom.com/wakare-movie/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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