北朝鮮のミサイル発射に「対抗する意思」を見せない日本の不思議

By -  公開:  更新:

ジャーナリストの有本香が2月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮が2月20日に日本海に発射した短距離弾道ミサイルについて解説した。

北朝鮮のミサイル発射に「対抗する意思」を見せない日本の不思議

新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験を視察する金正恩朝鮮労働党総書記(手前)=2022年3月24日、平壌(朝鮮中央通信=共同) 写真提供:共同通信社

北朝鮮のミサイル発射をめぐり、国連安保理が緊急会合へ ~日本から働きかけ

韓国軍によると北朝鮮は2月20日、日本時間午前6時59分ごろと午前7時10分ごろにかけて、日本海に短距離弾道ミサイル2発を発射した。いずれも日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したと推定される。これをめぐって国連安全保障理事会では2月21日(日本時間)、緊急会合を開いた。

飯田)安保理の公開会合が開かれることは、議長国のマルタが昨日(2月20日)の時点で発表しています。

有本)日本も非常任理事国ですから、「日本側から働きかけたのだ」と官房長官はおっしゃっていました。

飯田)日本から。

有本)北朝鮮は重大な安保理決議違反をしているわけです。これに対して事実上、おかまいなしのような状況ではないですか。国連安保理自体が機能不全ですよね。

飯田)結局、安保理の常任理事国による拒否権が立ちはだかってくるわけですよね。

安倍元総理が2017年の国連総会で北朝鮮に特化した演説をし、中露も加わって北朝鮮に制裁 ~それが緩み、北朝鮮のミサイル発射に対抗する術を見せない日本

有本)元をたどっていくと、2017年当時は安倍政権でしたが、安倍さんが国連総会で「北朝鮮に特化した」と言っていいほどの演説をしました。そのあと、おそらく歴史上初めてと言われていたと思いますが、ロシアや中国も加わる形で北朝鮮に強い制裁を加えることになったわけですね。

飯田)そうでした。

有本)でも、それが徐々に緩んできて、実際に制裁そのものの効力も弱くなってきている。北朝鮮はミサイルに関して、これだけレベルを上げてきているわけです。それに対して何も実効的な手が打たれていない。日本自体も対抗する術を見せない。日本にとって大変な状況になっているのと同時に、東アジアを緊張へ追いやっているのです。日本がその一因になっていませんか?

飯田)そうかも知れませんね。

有本)要するに「抑止する」という意思が日本側に見られないのです。

ミサイルは「落下した」のではなく、「着弾した」と報道するべき ~日本も同様なことを返すべき

飯田)ようやく「反撃能力を持つのだ」と安保3文書の改定で書かれはしましたが、ここから先は肉付けの部分が大事になっていくはずです。

有本)でも、そんなことが侃々諤々されている様子はまったくないではないですか。本来ならば反撃能力に関する神学論争のようなものはやめて、反撃体制を整えなければいけない状況です。

飯田)反撃の体制を。

有本)今回はEEZ外に着弾しましたが、メディアの伝え方に一言申したいのは、「落下した」という言い方はよくないですよ。着弾しているのですから。もう少し逸れたら排他的経済水域でしょう。こういうことをされた場合には、普通に考えれば、日本も同じことを返しておくということですよね。

飯田)行動には行動で。

有本)仮にEEZに着弾した場合は、同じように向こうのEEZに綺麗に1つ落とすということを繰り返すしかないと思います。

飯田)特に18日の発射は、日本のEEZ内に着弾していることを考えると。

「撃ってくるのであれば、私たちも撃ちます」という意思を見せることしか抑止する方法はない

有本)同じようなことでご挨拶しておくのが普通だと思います。気になるのは、函館のNHKの定点カメラが火の玉のようなものが落ちてくる映像を捉えていて、NHKのツイッターアカウントでも、これが北朝鮮のミサイルではないかと言われています。目撃情報もありましたよね。だとすると、もう目視できるところまで来ているのです。

飯田)ミサイルが。

有本)火の玉のような形になって落ちるということは、ミサイルとしては不完全なものだったことも想像できます。でも、目に見えるところまで来ているのですよ。それにしては何の緊張感もないですよね。

飯田)現場の自衛隊は航空機を複数飛ばし、かなり接近して干渉したという話です。18日のミサイルは高度が5000キロを超えるロフテッド軌道と呼ばれ、かなり高く打ち上げられたものです。

有本)そうですね。

飯田)落ちてくるスピードも、遠くの方なのでゆっくり落下しているように見えますが、実際はものすごい速度であり、なかなか迎撃は難しいとされています。そうであれば別の方法で……。

有本)迎撃はそもそも難しいですよ。

飯田)かつて、「真剣白刃取りをしなくてはならない」という比喩がありました。

有本)多くの人がそういう比喩を使っていて、私もそう言っています。「もしあなたたちが撃ってくるのであれば、私たちも撃ちますよ」という意思を見せるしか、抑止する方法はないのではないでしょうか。

韓国では議論が持ち上がっている核シェアリング ~それだけ緊迫しているのだが

有本)核シェアの話もどこにいってしまったのでしょうか。安倍さんが昨年(2022年)、亡くなる前に思い切って口火を切りましたが、そういう議論もほとんど雲散霧消してしまった感じです。

飯田)そうですよね。一方で、韓国では核シェアリングの議論が持ち上がっています。

有本)そういうアナウンスもしています。そのくらい緊迫していると認識するべきなのだけれど、日本ではそういう議論もされていないし、される感じも見えないですよね。

十分に抑止できる能力のミサイルを持たなければ意味がない

飯田)反撃能力の議論をするときに、巡航ミサイルについても射程の長いものを持つことや、「極超音速ミサイルは弾道ミサイルに近いものである」と説明されますが、正面きって「弾道ミサイルも持つぞ」という方向にはならないですよね。

有本)不思議ですよね。

飯田)そういう議論をすると、憲法9条の専守防衛に絡み、射程が長く音速を超えるもの、ましてや弾道ミサイルを持つなど許されないのではないか、となってしまうのでしょうか?

有本)でも、ミサイルの性能そのものによって「専守防衛であるかないか」が変わることはないと思います。「意志を持つかどうか」ということでしょう。例えば抑止のために持つのだとしたら、抑止するために十分なものを持たないと意味がないですよね。

番組情報

飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組HP

忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。

Page top