アメリカにも中国にもつかない「第3極」としての「グローバルサウス」の存在

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東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が2月27日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。「グローバルサウス」と呼ばれる国々について解説した。

アメリカにも中国にもつかない「第3極」としての「グローバルサウス」の存在

インドネシアのバリ島で、握手する中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領=2022年11月14日 (ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

グローバルサウス

2月24日、ロシアのウクライナ侵略から1年に合わせ、G7首脳によるテレビ会議が行われた。会議では名指しは避けたものの、中国を念頭に第三国に対し、ロシアへの軍事支援を停止するように強く警告した。また「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との連携に注力する考えも示した。

新行)テレビ会議にはウクライナのゼレンスキー大統領も出席し、首脳声明が発表されました。改めて、「グローバルサウスとは何か」というところから紐解いていきたいのですけれども。

井形)グローバルは「世界」、サウスは「南」で、簡単に言うと南半球にある国々のなかでも、特に新興国や発展途上国をまとめて「グローバルサウス」と言います。

新行)南半球にある新興国や発展途上国。

アメリカにも中国にもつきたくない「第3極」

井形)昔までは、経済的に発展している国に発展途上国の声を伝えていくようなグルーピングとして使われていたのですが、最近はアメリカと中国の競争が激化しています。そのなかで、自分たちはアメリカにもつきたくないし、中国にもつきたくない。「第3極なのだ」ということで、「グローバルサウス」という単語が使われるようになってきました。

インドはグローバルサウスに入るのか

新行)インドはグローバルサウスに入るのでしょうか?

井形)インドはグローバルサウスに入っていることが多いです。いろいろなインドの知り合いの研究者と話していると、完全にグローバルサウスという言葉に対する印象が二分されているのです。

新行)二分。

井形)人によっては「グローバルサウス」という言い方に対し、70~80ヵ国の違う国や文化、経済状況があるのに、「まとめてグローバルサウスと言うこと自体が欧米の認識の甘さを表している」というインドの方もいます。

新行)すべてを一緒にすることが。

井形)また別のインドの方は、「我々インドこそがグローバルサウスを代弁するリーダーである」と言っていました。今後、グローバルサウスという言葉がどう使われていくのかは、注目する必要があると思います。

西側と強権国の対立に「巻き込まれたくない」というのがグローバルサウスのスタンス

新行)先日のミュンヘン安全保障会議では、西側がグローバルサウスに連携を呼びかける場面がありましたが、「西側と『対ロシア』で距離を置く発言も相次いだ」という報道が出ています。グローバルサウスと呼ばれる国々の立ち位置はどんなものなのでしょうか?

井形)簡単に言ってしまうと「巻き込まれたくない」のです。欧米がロシアに「制裁だ」と言って、ものを売らなくなる、買わなくなるのであれば、代わりに自分たちが高く売りたいし、安く買いたい。

新行)なるほど。

井形)自分たちは経済的な発展が最重要なのであって、ロシアもウクライナも大変そうだけれど、「我々としては中立な立場で儲けさせてください」という考え方です。「巻き込まれたくない」というのが基本的なグローバルサウスのスタンスだと思います。

グローバルサウスとグローバルノースの橋渡し役としての日本に期待

新行)グローバルサウスに対して、日本はどう向き合っていけばいいのでしょうか?

井形)日本はG7唯一のアジアの国であることと、東南アジアやTICADなどの国際会議を通じて、アフリカとも開発で連携しています。グローバルサウスと対照して言うのであれば、グローバルノースとの橋渡しをするような役割を、日本が果たすべきだと考える方は多いですね。

新行)そこに対する期待値も高いですか?

井形)特に日本は2023年のG7議長国でもあるので、期待は大きいです。

「自分たちは声なき人たちの声を代弁するリーダーなのだ」という立場を取り始めたインド

新行)一方でグローバルサウスと呼ばれている国々の代弁者のような位置を、中国が狙っているところも気になります。

井形)昔、「グローバルサウス」と言うときは新興国を全部含めていたので、中国も入っていたのです。

新行)かつては。

井形)ただ、いまは米中による「権威主義対民主主義」の対立が激しくなっているなかで、グローバルサウスの国々は「自分たちは一歩距離を置きたい」と考えています。

新行)グルーバルサウスの国は。

井形)「中国に代弁のようなことをされると困る」という人たちが出てきている。だからこそ、インドが「自分たちの出番だ」として、「自分たちは声なき人たちの声を代弁するリーダーなのだ」という立場を取り始めています。

アメリカにも中露にもつかない ~ただし、連携できるところは連携してもいいという外交に向かうインド

新行)インドの存在感は増していますよね。

井形)経済規模も大きくなっていますし、人口も2023年の終わりには中国を抜くのではないかという話も出ています。インドとしては、自分たちはグローバルパワーなのだという認識で外交を行っています。

新行)今後の展開はどのようなことが予想されますか?

井形)インドは基本的に5年~10年すれば、自分たちの方が中国よりも人口が大きくなり、経済規模も成長が見えているので、どっしりと構えています。「自分たちはアメリカにもつかない、中国にも、ロシアにもつかない。ただし、連携できるところは連携してもいい」というような、横綱的な外交を行うのではないでしょうか。

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