地政学・戦略学者の奥山真司が2月28日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。エジプトのシュクリ外相のシリア訪問について解説した。
エジプトの外相がシリアを訪問
エジプトのシュクリ外相は2月27日、シリアの首都ダマスカスでアサド大統領と会談した。エジプト外相のシリア訪問は、2011年に始まったシリア内戦で両国関係が緊張して以降初めて。
トルコ・シリア地震がきっかけで中東における国際関係の組み替えが行われている
新行)エジプト外務省によると、シュクリ外相は会談で、2月6日のトルコ南部を震源とする大地震で大きな被害を受けたシリアに「連帯のメッセージ」を伝達。また、シリア国民のために「より多くの支援を提供する用意がある」と述べたとのことです。
奥山)エジプト外相の話ですが、背後にはもちろんサウジアラビアが控えています。サウジアラビアには、イスラム教の最大の聖地メッカがあります。
新行)サウジアラビアには。
奥山)中東の政治は、基本的にサウジアラビアたちを中心にイラン、もしくはシリアの陣営という、大きく2つの陣営に分かれています。地震という自然災害はそれほど国際政治を動かすものではないと言われますが、今回は1つのきっかけになり、中東における国際関係の組み替えが行われているのが印象的です。
シリアのアサド政権は倒せない ~地震を契機に共存を選んだサウジ、エジプト側
奥山)シリアは悪名高きアサド政権なのですが、2011年くらいから内戦が起き、バックにイランとロシアがいたのです。イランとロシアが相当な武器を供給し、それに対抗する形で西側、およびイスラエルやサウジアラビア、エジプトなどが介入し、バトルロイヤルが繰り広げられている状況でした。
新行)そうですね。
奥山)シリアのアサド政権を打倒するため、サウジアラビアは何十億ドルもお金を注ぎ込んでいたのですが、ここ1年くらい、うまくいっていません。サウジやエジプト側の国々が「これは倒せない」と気付いてしまい、「仕方ないから共存するしかない」と諦めたところで、たまたま地震が起こった。そこで「人道的な(支援)」という形で関係改善につながったのです。
新行)大きく見れば。
奥山)端的に言えば、シリアのアサド政権は倒せないので、周りが諦めた。ポジティブな意味ではありませんが、関係改善が生まれているということです。
「仕方ないから共存していこう」西側とエジプト、サウジ
新行)関係改善の流れは、この先も続いていきそうですか?
奥山)おそらく続くと思います。アサド政権を倒そうという意志は全般的に強く、西側も武器を供給し、エジプトやサウジアラビアもお金を出していたのですが、イランとロシア側に供給される武器が多い。ロシアに関しては市内に入り、反対派に爆撃も行っています。そこに対抗しきれなかった。
新行)西側、およびサウジやエジプト側が。
奥山)「これはシリアを存続させていくしかない」というネガティブな意味で、「仕方ないから共存していこう」という諦めの方が強いのではないかと思います。
アラブ首脳会議にアサド政権のアサド氏を招待か ~中東政治が大きく動く
新行)この先、共存のためにどのような動きが考えられますか?
奥山)通常は毎年3月にアラブ連盟首脳会議が開催されており、今回はサウジアラビアの主催です。内戦が始まってから初めてだと思いますが、おそらくそこにアサド政権トップのアサドさんを呼ぶのではないかと注目されています。
新行)アラブ連盟首脳会議に。
奥山)雪解けではないのですが、「いるのだから仕方がない。君たちも呼んであげようか」という形になるのではないでしょうか。「中東の政治がかなり大きく動いているのではないか」と、イギリスなどでも注目されています。
新行)それほどまでに、トルコ南部を震源とする大地震の被害は大きかったのですね。
奥山)我々も地震の国なので、その辺りは注目度が高いのですが、それが周りの国に大きな影響を与えているということです。
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