無許可の臓器あっせんを野放しにした、臓器移植法にあるいくつかの「不備」

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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が3月3日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。NPO法人による臓器斡旋事件について解説した。

無許可の臓器あっせんを野放しにした、臓器移植法にあるいくつかの「不備」

送検のため、警視庁蔵前警察署を出る菊池仁達容疑者=2023年2月9日午前、東京都台東区 写真提供:産経新聞社

海外での臓器提供の斡旋を行ったNPO理事を再逮捕

国の許可を受けずに、海外での臓器移植を希望する患者に臓器の提供を斡旋したとして逮捕されたNPOの理事が、別の患者にも斡旋をした疑いで2月28日、再逮捕された。理事は容疑を否認している。

海外での臓器斡旋が横行

野村)深刻な事件です。臓器移植で何とか命を救ってもらいたいと思っている方々がいます。そのためには、臓器移植してもらえる人や、提供してもらえるところを探します。今回、そこに付けこんだ人たちにより、海外での臓器斡旋が横行していることが明らかになったわけです。

新行)そうですね。

野村)また、日本の法整備にかなり不備があったことも明らかになっています。こういう人たちを野放しにしてきたからです。

新行)野放しにしてきた。

野村)世界中で最も問題となっているのが、臓器売買です。そういうものに加担していなかったのかどうかが気になります。海外で行われていた活動において、臓器売買を斡旋していたり、臓器売買で臓器を得て、それを提供するという形につないでいたのではないか。そこを掘り下げていかなければなりません。今後、捜査が長引きそうなので、再逮捕が繰り返されていくのではないでしょうか。

生体間の臓器移植は規制の対象外

新行)臓器移植法は、どこに不備があったのでしょうか?

野村)生体の臓器移植、生きている人同士の間の臓器移植については、規制の対象外になっているのです。

新行)生体の間での臓器移植は。

野村)脳死を含む、死体からの臓器提供に対して規制してきたということです。つまり、生体移植を求める方々に対する斡旋行為は、法の外に出てしまうことになる。

新行)生体移植を求めている人に臓器を斡旋することは。

野村)さらに、もともと脳死を含む死体からの臓器提供を斡旋することに関しては、まず団体として許可を求めることになっているので、無認可でそういう行為を行えば犯罪になるわけです。

無許可で行っている人たちを調査できないという根本的な問題 ~狭い範囲でしか法律ができていない

野村)ただ、海外で密かに行われているものまでは十分に規制が及んでいませんし、報告を求めるのは許可している団体だけです。だから、許可されていない人たちに対して調査する権限が法定されていないという、根本的な問題もあります。

新行)なるほど。

野村)日本では、臓器移植は極めて例外的な行為だと考えられていたので、狭い範囲でしか法律ができていないのです。それは臓器移植を広く求める人にとってみると、無法地帯的なものを許してしまっていることになります。

海外では厳しく刑事罰を科される臓器売買

新行)海外との違いはあるのでしょうか?

野村)海外では、本当に深刻な臓器売買が横行しています。相当厳しく刑事罰を科していますし、捜査や国際手配などもずいぶん行われています。貧困の国では、臓器を売って生活しなければいけないような状況をつくり出しかねないので、あってはいけないことなのです。

新行)そうですね。

野村)それを防止しようという貧困国との向き合い方が、海外には存在しています。日本は島国なこともあり、呑気に構えている部分があって、目が行き届いていないのかも知れません。

新行)島国であるということで。

野村)摘発されたことで、国会で議論が進んでいくと思います。法改正を視野に入れた国会での審議が、今回の事件をきっかけに行われるのではないでしょうか。

二国間での国際協力の条約を進めていく必要がある

新行)実際に2月27日の衆院予算委員会では、岸田総理が臓器移植法の制度の見直しを進める考えを示したということです。

野村)もう1度、論点を洗い出して、「何が足りないのか」を考えることも大事ですし、実際に違法行為を行っている人を捕まえたり、罰するときの手段をどうするのか。国際的にも協調しなければなりません。今回のケースとは違いますが、広域強盗事件との関係で、国際的に犯罪が拡散していることもわかってきました。そういうことも含めて、二国間での国際協力の条約を進めていく必要があると思います。

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