福島県富岡町「とみおかワインドメーヌ」小浜栽培圃場 福島第二原発が見える丘にある「深い理由」

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東日本大震災から12年。福島県富岡町のワインづくりについて新行市佳アナウンサーが取材、3月7日のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」でレポートした。

福島県富岡町「とみおかワインドメーヌ」小浜栽培圃場 福島第二原発が見える丘にある「深い理由」

福島第2原発の(右から)3、4号機=2014年1月15日午後3時54分、福島県富岡町 写真提供:産経新聞社

「とみおかワインドメーヌ」小浜栽培圃場

新行市佳アナウンサー)福島県富岡町の「とみおかワインドメーヌ」小浜栽培圃場と、駅東栽培圃場の2ヵ所を取材してまいりました。お話を伺った一般社団法人「とみおかワインドメーヌ」統括リーダーの細川順一郎さんは、静岡県浜松市のご出身です。エンジニアとしてIT企業で働いていたのですが、ワイン好きが高じてワインショップで働くようになり、さらにワインバーのソムリエになります。2010年に山梨県甲州市に移住し、ワインの醸造に携わってきましたが、独立を考えていたときに、「とみおかワインドメーヌ」代表理事の遠藤さんに誘われます。2021年に初めて福島県富岡町を訪れ、移住を決心したということです。

飯田)すごいですね。

過酷なチャレンジを始める「本気の覚悟」を感じ、足が震えた

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新行)「とみおかワインドメーヌ」代表理事である遠藤さんから誘われて移住されたということですが。

細川)「とみおかワインドメーヌ」から見る景色もいいのですが、この場所の特徴としては、「福島第二原発が畑から見える」ということです。ここに初めて来たとき、遠藤さんのやろうとしていることの本気度合いも伝わってきたのですが、もっと驚いたのは、「何という場所で何ということをやろうとしているのだろう」と足が震えました。いまでも覚えています。なぜこのような過酷なチャレンジをしようと思っているのだろうと。足が震えたのは、ここでこのようなことをやろうという覚悟が本気すぎて、いままで感じたことのない感情が生まれたのだと思います。

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新行)小浜栽培圃場は、海面から約30~40メートルほど上の丘にあるそうです。目の前に海が広がっていて、すごくいい眺めなのですが、その先には福島第二原発が見えるのです。ここで一からワインをつくるという覚悟に、細川さんは衝撃を受けたとおっしゃっていました。

飯田)確かに地図を確認すると、圃場から海沿いに南を見たら、おそらく第二原発の煙突などがくっきり見えるだろうな、ということがよくわかりますね。

新行)もう1ヵ所、「とみおかワインドメーヌ」の駅東栽培圃場にも行ってみたのですが、こちらはまた少し風景が変わり、JR常磐線の富岡駅の目前にあります。いまは1.3ヘクタールの葡萄畑があるのですが、2023年春と2024年には、さらに合わせて3ヘクタール増やすということです。まさに富岡駅の周辺に東京ドーム1個分の葡萄畑ができることになります。また、富岡駅周辺でのワイナリー建設も計画しているそうです。

富岡駅の近くにワイナリーをつくる2つの目的 ~「とみおかワインドメーヌ」の駅東栽培圃場

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新行)この場所にワイナリーをつくろうと思ったのはなぜですか?

細川)特急が富岡駅に停まるので、来る時間を調べておき、ここから手を振ってJRさんに猛アピールするためです。1人で作業していても、私が手を振ると、たまに優しい運転手さんが警笛を鳴らしてくれます。私たちが駅の近くにワイナリーをつくる目的の1つに、公共交通機関を使えば安心してお酒が飲めるということがあります。

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飯田)なるほど。車を運転せずに訪れて、ワインを飲むことができる。確かに車で醸造所めぐりをしようと思ったら、ハンドルキーパーを1人つくらなければいけないのは考えどころですからね。

新行)電車なら安心ですし、しかも駅前は町の顔になる場所です。第一印象になると思うのですが、それが車窓から見える一面の葡萄畑というのは、降りてみたいなという気持ちになりますよね。

震災時に奇跡的に残った蔵を中心にワイナリーをつくる予定

新行)富岡駅周辺の葡萄畑エリアには1つの蔵が建っているのですが、そこは津波浸水区域で、震災時にほとんどすべてのものが流されてしまいました。しかし、奇跡的に1つの蔵だけが流されずに残り、これが「とみおかワインドメーヌ」代表理事である遠藤家に代々伝わる蔵だったのです。その蔵を中心にワイナリーをつくる予定で、震災前の景色の一部だった蔵が今度は新しい景色の一部になり、新しい役割を果たすようになっていくのです。

ワインを通して人と人をつなげていく ~富岡町を去った人にもワインを飲むことで故郷を思い出してもらう

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新行)富岡町でワインをつくる意味は何でしょうか?

細川)この町は帰還率がまだ低くて、おそらく今後、増えることはないだろうと言われています。そのなかでも、故郷の富岡を思う気持ちがある方はたくさんいると思うので、そのような人たちに「富岡のワインが出たんだよ」と発信し、それを買いに来て飲んでいただきたい。それで故郷の富岡を思い出してもらうことこそが、この町で失われてしまったコミュニティをもう一度つくり直すということであり、私たちのテーマでもあります。ワインというフィルターで人と人をつなげていくことが、今後できたらいいなと思っています。

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新行)まさに先を見据えたプロジェクトで、100年後を見据えているともおっしゃっていました。自分たちよりも次の世代や、次の次の世代にいい状態でバトンを渡していきたいという思いも語っていました。

飯田)駅前の圃場辺りは、津波で大きな被害を受けたところです。駅から見て海側は本当に何もなくなってしまったのですが、1軒蔵が建っていたことは(以前訪れた際に)何となく覚えています。

新行)覚えていますか! そこにワイナリーができる予定なのです。

香りが豊かで少し塩味を感じるフレーバーの富岡ワイン

飯田)駅前に綺麗なホテルも建っていて、圃場から少し先に行くと漁港もあります。あの辺りは美味しい魚がたくさん獲れるのですよね。

新行)特に白身魚、ヒラメなどが獲れるので、ワインとの相性も抜群です。気になるワインの風味ですが、まだ本数が少ないため試飲はできませんでした。話を伺ったところ、海に近いので潮風の影響を受け、植物が自分を守ろうとして葡萄の身の皮が厚くなるそうです。その皮の成分がワインには非常に大切で、ポリフェノールや、赤ワインであればタンニンなどのようなものになります。香りが豊かで、少し塩味を感じるフレーバーだそうです。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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