アメリカはコロナ禍で壮大な「ベーシックインカムの社会実験」を行った エミン・ユルマズ氏が持論を展開

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エコノミストで複眼経済塾塾頭のエミン・ユルマズが3月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。コロナ禍でアメリカがベーシックインカムを支払うための社会実験を行ったのではないかという持論を展開した。

アメリカはコロナ禍で壮大な「ベーシックインカムの社会実験」を行った エミン・ユルマズ氏が持論を展開

2023年1月12日、バイデン大統領による出迎えを受ける岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/13usa.html)

コロナ禍でベーシックインカムを払ったためにインフレになったアメリカ

飯田)今後、AIの存在価値が増し、人に十分な職を与えられなくなり、特に人口の多い中国やインドは政府がベーシックインカムを渡さなければならなくなるかも知れないということですが。

ユルマズ)そうなるのではないでしょうか。私はそれも想定して、アメリカはコロナ禍に壮大なベーシックインカムの社会実験を行ったのではないかと思っています。インフレになるかどうかを試したのです。そして、インフレになってしまった。

飯田)インフレになった。

ユルマズ)コントロールの仕方が大変なのです。本当にベーシックインカムでお金を払えるかどうかですね。

ベーシックインカムでお金を払い続けるためには、働いている人たちがその分の付加価値を生まなければならない

飯田)特に日本は人口が減少しているので、人口減少でデフレが起こるとも言われていました。ベーシックインカムにより、1人あたりいくらでお金を配った場合、やり方を間違えるとインフレになってしまうのですか?

ユルマズ)なります。やり方を間違えるとハイパーインフレになりかねません。

飯田)インフレの起き方ですが、最初は生産力があるから政府もお金を配れますよね。

ユルマズ)そうですね。

飯田)お金を配ることによって、生産していくのですが、どこに国全体としての稼ぎ頭を設けたらいいのか。

ユルマズ)ベーシックインカムでお金を支払い続けるためには、当然ながら国全体として、働いている人たちがその分の付加価値を生まなければいけません。そうしないと通貨の信認が落ちていくのです。

給付金を払いハイパーインフレになってしまったベネズエラやトルコ ~働いて付加価値を生んでいる人の給料も減少し、国の購買力や通貨の価値がなくなりドル化が進む

ユルマズ)ベーシックインカムという名前ではないけれど、新興国や独裁国家も似たようなことをよくやります。ベネズエラやトルコのここ10年間の動きを見ても、政権が支持を得るために年収の低い人たちに対して給付金を渡しています。

飯田)支持を得るために。

ユルマズ)しかし、時間が経つとものすごいインフレになってしまう。ベネズエラもトルコもハイパーインフレなので、結局、配っているお金はたいしたお金ではなくなるのです。

飯田)給付したお金が。

ユルマズ)これが起きてしまうと、働いて付加価値を生んでいる人たちの給料まで目減りしてしまい、何も買えなくなって、国全体の購買力がなくなってしまう。実質上、通貨にも信認がなくなるのでドル化が進むのです。

飯田)自国の通貨よりも、ドルの方が信用できると。

ドル化が進むと巻き戻しが難しい

ユルマズ)そうなると、ドルはアメリカ以外の国では印刷できませんので、さらにドル需要を高めて悪循環になります。

飯田)ある意味、金融政策をすべてドルが掴んでしまう。

ユルマズ)そういうことですね。ハイパーインフレになってドル化してしまうと、巻き戻しが難しいです。

世界はインフレの時代に ~デフレマインドのままの日本

ユルマズ)いままで日本はデフレを敵視してきたけれど、インフレもある一定レベルを超えると、抑制することが難しくなります。インフレは厄介なものです。

飯田)確かにここ30年ぐらいデフレの時代しか経験していないので、実感がないところが多いかも知れません。

ユルマズ)そうですね。私はいまの日本人はデフレ脳、デフレマインドだと思っています。でも、既に世界はデフレからインフレに変わっています。デフレの時代が終わってインフレの時代に入っているのに、日本人はまだ気付いていない。

飯田)インフレの時代に入っていることに。

ここ7年間で年収に対して12%上昇している住宅価格 ~日本人の給料が12%目減りしているということ ~資産インフレが進む日本

ユルマズ)気付かないと、持っている資産はどんどん目減りしていきます。日本人が既に持っている日本円の価値は、毎日ものすごい勢いで目減りしています。

飯田)目減りしている。

ユルマズ)いままで買った大きなアイテム、例えば車だと、軽自動車の価格は15年前に比べて50%ぐらい上がっています。車全体で見ると20%くらい上がっています。家も同じで、日本の平均住宅価格はここ7年間で、年収に対して12%も上昇しています。ということは、日本人の給料は12%目減りしたということです。

飯田)本来は12%上がってくれないと困るのに。

ユルマズ)例えば6000万円のマンションが7000万円になったということで、その1000万円は消えたのです。7000万円持っていたら1000万円余っていたところが、1000万円はインフレに消えてしまった。

飯田)そういう意味では、資産インフレの方が先に進んでいるのですね。

今後、日本もアメリカのように格差による分断が起こる可能性も

ユルマズ)そういうことです。資産インフレはもっとたちが悪いのです。資産インフレは資産を持っている人にとってはいいのですが、資産を持っていない人にとってはマイナスであり、格差を広げてしまうのです。

飯田)資産を持っていない人にとっては。

ユルマズ)最も極端な例が、やはりアメリカです。アメリカの資産・財産は、上位1%の手に集まっていて、下の人たちは何も持っていない。大きく分断してしまっており、国が二極化しているのです。そういう状況を生んでいて、社会秩序が乱れてきています。

飯田)日本はいま、その分岐点のようなところにいる。

ユルマズ)日本もこの状況が加速していくと、そうなってしまうかも知れません。みんな「金利が上がるとローンも」と心配していて、確かに家を買ってしまった人はそうだと思います。でも、いまから買う若い人にとっては、こんなに住宅価格が上がっていったら、みんな一生買えなくなりますよ。

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