シリコンバレー銀行破綻 急激利上げした「FRBの政策ミス」も原因
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エコノミストで複眼経済塾塾頭のエミン・ユルマズが3月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。FRB副議長が言及した銀行への監督・規制強化について解説した。
銀行への監督・規制強化
米連邦準備制度理事会(FRB)のマイケル・バー副議長は3月28日、議会上院の公聴会で証言し、シリコンバレーバンク破綻の原因は「銀行の経営陣が金利と流動性のリスクを適切に管理しなかったからだ」と指摘。銀行の監督不行き届きの可能性と、中堅銀行への規制を強化する必要性に言及した。
飯田)シリコンバレーバンクの破綻ですが、集めたお金を米国債などで運用していたけれど、その資産が目減りしてしまった。また、ネット上で経営不安から取り付け騒ぎが起きたなど、いろいろと言われています。アメリカ全体としては、これからどうしていくのでしょうか?
2018年にトランプ前大統領が資産規模1000億ドルから2500億ドルに規制を緩和
ユルマズ)FRB副議長が言っている正しい点は、中堅銀行、もしくは地銀の規制を強化する必要があるということです。もともと強化していたのですが、2018年にトランプさんが緩和してしまった。
飯田)トランプ前大統領が。
ユルマズ)資産規模1000億ドルという規制が昔からあって、それを2500億ドルに上げたのです。当時、トランプさんに対してロビー活動をしていたのが、シリコンバレーバンクの最高経営責任者(CEO)でした。
飯田)そうだったのですか。
ユルマズ)自分たちの都合のいいように、うまい具合に上げてもらったのです。
急激な利上げをしたFRBの政策ミスでの結果でもある ~2021年から緩やかに利上げをしていれば銀行も資産を調整できた
ユルマズ)ただ、FRBはまるで自分たちにまったく責任がないかのように言っていますが、これはFRBの責任なのですよ。
飯田)FRBの責任。
ユルマズ)この人たちが買っていたのは、それほどリスキーなものではなく、アメリカの国債です。それを急に1年間で5%も利上げするから、こういうことになるのです。
飯田)急激な利上げによって。
ユルマズ)徐々に利上げせず、インフレがものすごい勢いで上がってきたため、パニックになって急速に利上げしたからこういう状況になった。これはFRBの政策ミスなのです。
飯田)急ブレーキを踏んだから。
ユルマズ)確かにシートベルトをしていない人も悪いのだけれど、この人たちはフロントガラスから外に投げ出されたわけです。急激にブレーキを踏んだのも悪いし、シートベルトをしていないのも悪い。
飯田)そもそもスピードが出ているのに、適切にコントロールしなかったではないかと。
ユルマズ)そういうことです。もっとゆっくり、2021年から緩やかに利上げしていれば、これほど銀行にストレスをかけず、銀行側も資産を調整できた。そうではなく一気に上げてしまったから、こういうことになっているのです。
商業施設用ローンが傷むアメリカ ~不良債権化する可能性も
ユルマズ)似たような状況にあるのは、おそらく他の地銀も一緒です。もう1つ、問題がさらに深刻化していく可能性があるのですが、地銀は商業施設、商業用不動産への貸付けを行っているのです。いまアメリカでいちばん傷んでいるのは住宅ローンではなく、商業施設用ローンです。
飯田)商業施設用ローン。
ユルマズ)この辺りは拠出率が高くなってきているし、焦げ付く可能性があります。さらにそれが銀行にプレッシャーを掛けているのです。いままではどちらかと言うと不良債権化していないリスクなので、FRBも火消しできたかも知れないけれど、不良債権化していってしまうと、相当まずいことになると思います。
今後、さらに破綻する銀行が続けばFRBは救済できない
ユルマズ)逆に、「先に破綻したもの勝ち」のような状況になる可能性もあるのです。シリコンバレーバンクは、先に破綻したので救済されましたが。
飯田)預金は全額保護されます。
ユルマズ)でも今後、同様の銀行が多くなってくると、すべて救済はできません。できるはずがないですし、能力はないのです。
飯田)不安に思った預金者たちが預金を引き上げるなどして、銀行も怖がって貸し剥がしなどが起こる可能性もある。そういう不安マインドになってしまいますよね。
ユルマズ)なりますね。それがいま動いていて、少しインフレ抑制になっているのです。アメリカのフィナンシャルコンディションが、少し引き締めに動いてしまったので、いまアメリカの預金金利は0.25%です。アメリカの1年債はつい最近まで5%だったので、預金する必要がないのです。
飯田)そもそも。
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