なぜ公共人材確保法を整備するべきなのか 元官房副長官が解説
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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が3月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。公共人材確保法整備の必要性について解説した。
公共人材確保法を整備するべき
飯田)定年延長のために改正した国家公務員法と地方公務員法が4月1日に施行されますが、公務員の働き方について、松井さんは月刊誌『Voice』に「公共人材確保法を整備せよ」という文章を寄稿されています。公務員の方々の処遇や採用の仕方について問題提起されています。「リスキリング(学び直し)」などという言葉を岸田政権も使っていますが、新卒はもちろん、途中から入ってくる人も含めて、いろいろやらなければならないことは山積していますか?
国家公務員採用試験の総合職合格者が官僚にならず、外資系コンサル企業に行く現象が起きている ~合格するような優秀者が入ってこない
松井)公務員の種類によっても違います。例えば私が経験したような、いわゆる「キャリア官僚」と言われる総合職の公務員の場合。
飯田)総合職の公務員。
松井)東大法学部は、実はその人材のためにつくったような学部なのです。しかし、東大法学部の優秀層は公務員試験を受けないのですよ。あるいは公務員試験を3年生の秋に受験する。外資系コンサルティングファームなどは、3年生の冬ぐらいに採用を決めてしまうのです。
飯田)採用が早い。
松井)ですので、そちらに入るためのある種の能力の証明として(公務員試験の合格を)取って、外資系コンサルなどに行く人が増えているのです。
国会答弁での資料づくりや審議会の資料などの質が変わっていく
松井)つまり、優秀な人たちを難しい試験で選別しても来ないのです。この流れはおそらく、いまの若手の課長補佐くらいから始まっているのではないでしょうか。
飯田)その世代の時期からそういう現象がある。
松井)もちろん、いまの課長補佐の方々はみんな優秀ですよ。立派でよく働くけれど、従来のような人材は来ていないのです。質的にあと10年経ったら、まったく変わると思います。おそらく国会答弁での資料づくりや、審議会の資料などの質が変わってくるのではないでしょうか。
専門性を持った人材の中途採用を増やすべき
松井)定年を延長し、年齢にかかわらず働くことは大事だけれど、金融庁などは比較的進んでいますが、専門性を持った人材の中途採用をするべきです。本当に金融の先端的な知識を持っているような、政策について競争力がある人を社会から登用しなければならないと思います。
これまでのやり方を続けていては競争力のある公務員は生まれない
松井)新卒から育てて、年功序列のなかで30年かけて育て上げる方法では、競争力のある公務員が生まれない状態になっているのです。それを第一線の官邸官僚を務めてきた人たちに話しても、「もう無理だよね」と言います。
飯田)いままでのやり方では。
松井)「やり方を変えなければいけない」と言いながら、公務員の採用や処遇、昇進など、全部変えていないのです。
飯田)変えなければいけないことはわかっているのに。
松井)業績の評価の在り方や、仕事の仕方も全部変えていかなければならないのに、相変わらず昭和の高度成長期のような仕組みのままで、定年延長だけを進めているのです。
飯田)定年延長だけを。
松井)そうするとますます職のバランスが悪くなります。私たちのようなシニア世代が生き残り、若い人材が取れない状況になってしまいます。これでは公共政策の現場力が落ちていきますよ。
官僚の天下り問題
飯田)30日の朝日新聞に、国交省元次官の方の天下りに関する記事が出ています。それに対して、ニッポン放送の番組で辛坊治郎さんが「結局、そのキャリアパスの先には、天下りすることによってリタイア後の“ハッピーリタイアメント”も保証されている。そのような全体のキャリアパスは、昭和の時代ならそれでよかったのかも知れないけれど、既に崩れているのに全体の制度がまだ残っている。だからグレーゾーンと知りながらも、こういうことをやらなければならないのだ」とおっしゃっていました。
松井)結局はスキルアップしていないのです。相変わらず役所のなかで、いろいろな人たちの間を調整している。みんな本来は優秀な人なのに、専門性を磨かず……。
飯田)その能力を。
松井)そして、そういう人たちがトコロテンで出ていく。あの記事で「社長にしろ」などと言っている元次官は、私の同期の人だったと思います。もともと優秀な人です。しかし、組織のなかで通用するスキルを磨いてきただけなのです。その専門性が世の中に出たとき、社会のなかで活かすことができないのは不幸なことですよ。
飯田)日本の大企業もそうですけれど、「ゼネラリストを育てるのだ。どこでも使えるのだ」と言いますが、それは会社のなかや業界のなかだけのゼネラリストなのですよね。
松井)そのスキルを社会に押し付けているのだけれど、押し付けられる方は逆に「困るのですが」となる。
飯田)こちらは商売しなければいけないのですよ、と。
松井)システムを変えていないことをどう考えるか。それは結局、働いている人たちにとって気の毒なことですよ。
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