憲法9条によってNATOには入れない日本 いざというとき「どう守るのか」

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数量政策学者の高橋洋一が4月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。外務省の外交青書について解説した。

憲法9条によってNATOには入れない日本 いざというとき「どう守るのか」

NATO首脳会議に出席する岸田首相(手前中央)=2022年7月29日、スペイン・マドリード(代表撮影・共同) 写真提供:共同通信社

外務省の外交青書、中国とロシアの軍事的連携強化に重大懸念

外務省の外交青書がまとまり、2022年を「歴史の転換期」と位置付けた。ロシアによるウクライナ侵略を強く非難した上で、中国とロシアが軍事的な連携を強化する動きが見られるとして、 重大な懸念を持って注視すると強調した。

飯田)外交に関しては白書ではなく、青書という名前なのですね。

高橋)歴史的な話でしょうけれどね。

飯田)去年(2022年)は歴史的な転換期だったとしています。ロシアによるウクライナ侵略を念頭に、「力による一方的な現状変更は、いかなる場所でも許してはならない」と記したということです。

高橋)これが歴史的な転換点でなかったら大変ですよね。戦後の秩序では、安保理の常任理事国が何かするという前提にはなっていません。核兵器不拡散条約(NPT)についても、常任理事国は核を持っているけれど、何もしないことが前提です。でも、全部崩れてしまったわけです。

飯田)確かに核を使って脅すし、侵略しました。

国連が機能しないので欧州ではNATOを機能させるしかなくなってしまった

高橋)常任理事国がそれをやったら、全部が機能しないでしょう。

飯田)そうなってしまいますよね。

高橋)国連がすべて機能しないのだから、他に何を機能させるかと言うと、NATOしかなくなってしまったのです。

飯田)ヨーロッパにおいては。

憲法9条によってNATOに入れない日本はどうする

高橋)アジアにおいて、日本はどうするのか。

飯田)結局、NATOに入っていなかったフィンランドとスウェーデンが……。

高橋)焦って入ろうとしたわけでしょう。長年の中立政策を全部捨てて。昔は中立政策のことを「フィンランド化」などと言いました。それがなくなってしまったので、「NATOに入らなければ大変だ」ということになったのです。

飯田)みんな集団的自衛権の傘の下に集まると。

高橋)心配だから。そもそもウクライナはNATOに入っていませんし、非核三原則の姿勢を取っていたからこうなってしまったのです。「フィンランドには日本のような憲法9条がなくてよかったですね」と思います。NATOに入れますから。

飯田)フレキシブルに入ることができる。

NATOに入っても憲法9条の交戦権否認によって他国を助けることができない ~そうなると入ることができない

高橋)アジアの方ではNATOのパートナー国として、オーストラリアとニュージーランドと日本がいます。

飯田)NATO首脳会合にはオブザーバー的に岸田総理も出席しました。

高橋)ニュージーランドとオーストラリアはNATOに入ってしまうかも知れません。そうするとNATOという言葉も変えなければなりませんが、国連が機能しないのであればどうしようもありません。そのとき日本はどうするのか。「いや、日本は入れないのです」と言うのでしょうか?

飯田)憲法の制約があるからと。

高橋)いまの憲法だと難しいでしょうね。NATOに入ると、どこか一国が攻撃を受けたら、NATOの国は平等に助けることになっているけれど、日本は行けないでしょう。

飯田)憲法9条の交戦権否認が……。

高橋)それを言ったら、「あなたは自分のときだけ助けに来て欲しいと言うけれど、人が助けに来てくださいと言っても来ないよね」と言われてしまう。それではNATOに入れないですよね。

飯田)NATOはもともと集団的自衛権でお互いを守り合う組織です。

日本に有事が起きた際にどうするのか ~議論するべき

高橋)日本の場合は「お互い」にならない。武器移転の話がウクライナ情勢で話題になっているでしょう。日本は困ったときに「弾をください」と言うけれど、相手が困っているときは「出せない」という言い方になってしまう。

飯田)そうなりますね。

高橋)それも議論しなければ、いざというとき、本当に困ったときに困ると思いますよ。相手が本当に困っているときに助けない国は、自分が本当に困ったときに助けてもらえません。

核兵器を持っている非民主主義国が日本の周りに3つもある

飯田)苦肉の策としてトラックを出した。用途としては戦闘用ではないけれども、「現地に行ったらどう使われるかはお任せいたします」と。

高橋)もしくはNATO基金を通じて、殺傷性のない装備品支援を行った。でも、苦肉の策ばかりやっていたら本当に疑われてしまいますよね。相手が有事のときに助けないと仕方ありません。自分たちが困ったときだけ「助けてください」というロジックは通用しないと思いますよ。

飯田)しかし、湾岸戦争のときにも同様の議論があって、そのあとクウェートが感謝の広告を出したところに、日本の名前がなかった。あるいは何とかPKOで人員を出そうという話など、30年ぐらい前からずっと堂々めぐりを続けているように感じます。

高橋)でも当時、ロシアは少し脅威でしたが、まだ中国の脅威はなかったでしょう。今回は外交青書にもあるように、中国とロシアが2つの脅威であり、その2つが連携するという話ですからね。他に北朝鮮もいるのです。日本の周りには核を保有する危ない国が3つもある状況で、あまりにも無防備ですよね。

飯田)危ないというのは、潜在的なリスクがあるかも知れないと。

高橋)それはそうでしょうね。私が危ないと言った意味は、「非民主主義国は戦争を起こしやすい」という国際関係論です。間違いなく、非民主主義国は戦争が起きやすいのです。核兵器を持っている非民主主義国が、日本の周りには3つもある。太平洋の方を見ると安心ですが、背後の方は大変ですよ。

安倍元総理が提起した「核シェアリング」

飯田)軍事面ではいろいろ連携していますが、「それだけで足りるのか」というところですか?

高橋)いろいろな意味で、矛盾が露骨に出すぎていますね。

飯田)外交青書には書かれていませんが、核抑止についても、安倍さんがかつて提起した核シェアリングなども考えなければなりませんね。

高橋)岸田さんは「被爆国だから検討しません」と言っていますが、ロジックとして理解できないですよね。「検討しない」ということで大丈夫なのでしょうか。外交青書ではそこまで踏み込めないのでしょうが、政府ですから、党の方でやればいいと思います。

飯田)なるほど、自民党で。

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