10年後に「尖閣諸島を実効支配できる」とする中国の「狙い」

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ジャーナリストの佐々木俊尚と慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が4月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2022年度の回数が778回だった航空自衛隊の緊急発進について解説した。

10年後に「尖閣諸島を実効支配できる」とする中国の「狙い」

中国海警局の船(中央)を挟み込むように航行し、調査船への接近を防ぐ海上保安庁の巡視船=2023年1月30日午前、沖縄県石垣市の尖閣諸島沖 写真提供:産経新聞社

航空自衛隊の緊急発進778回 ~約4分の3は中国機対策

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浜田防衛大臣)2022年度の航空自衛隊による緊急発進の回数は778回でした。このうち、中国機に対する緊急発進回数は575回であり、ロシア機に対する緊急発進は150回でありました。

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2022年度の自衛隊の緊急発進(スクランブル)は全体で778回だった。約4分の3は中国機に対するもので、特に無人機への対応が急増。2023年2月のアメリカによる中国の偵察気球撃墜を受け警戒を強化したため、国籍や正体不明の飛行物体などを示す「その他」の原因も増加した。

多くが大量に飛んでくるドローンへの対応 ~その対応に疲弊する航空自衛隊

飯田)1004回で4桁だった2021年度に比べると減ったとは言え、10年連続で700回を超えているということです。現場の負担も大きいのではないでしょうか。

佐々木)自動操縦のドローンですよね。通常の戦闘機は人間が操縦しますから、操縦訓練が必要なので時間がかかるため、それほどたくさん増やせません。しかし無人機になると、製造すればするだけ増やせるわけです。

飯田)ドローンであれば。

佐々木)大量に無人機が飛んできて、日本の空自が対応しなくてはいけないとなると、空自の方々が疲弊していきます。その疲弊を狙っているのではないかという話もあるくらいです。

飯田)中国が。

佐々木)これまでは予算の問題もあり、なかなかドローンに対応できませんでした。今後は防衛費を倍増させるということで、無人機への対応も増やしていくと思いますが、厄介な問題だと思います。

米国防総省がF16ベースの戦闘機の無人運用に成功

佐々木)台湾有事についても海に隔てられているので、中国は簡単に台湾を攻められないだろうと言われていますが、ドローンが進化すれば有利になっていく可能性があります。

飯田)そうですね。

佐々木)現在のドローンは戦闘機よりも小さいですが、アメリカの国防総省は、F16ベースの戦闘機の無人運用を成功させました。今後、AIによる戦闘機の自動操縦などが増えれば、さらに空の戦いは危険な状況になってくると思います。

日本との関係を決定的に悪化させたくない中国 ~大幅に増えているわけではない

飯田)細谷さんはどうご覧になっていますか?

細谷)2つあると思います。1つに、数字は重要だと思うのですが、数が大幅に増えているわけではない。中国はやはり日本との関係を決定的に悪化させたいわけではないということです。

飯田)日本との関係を。

細谷)米中対立が悪化するなかで、日本との関係改善は難しいのですが、「現状は横ばい」というのが1つのメッセージだと思います。

尖閣諸島に常駐、建築物を構築していない日本 ~10年で中国船の数が増えれば日本の実効支配は失われる

細谷)もう1つ重要なのは、尖閣諸島もそうですが、現状では日本が実効支配しているわけです。しかし、必ずしも人が常駐したり建築物を構築しているわけではなく、周りをぐるぐる回っていることが、日本が施政権を持っているという根拠なのです。

飯田)周りを回っていることが。

細谷)これは中国からすれば、「10年間で数を増やせばひっくり返せる」という話だと思います。中国側のパトロールする数などが増えれば、事実上、日本の実効支配が失われたことになります。

飯田)日本よりも中国側の数が増えれば。

細谷)そうすると、数の競争になってきます。中国は「このまま数を増やせばひっくり返せる」という発想だと思います。現状でも限界ぎりぎりで運用していますが、10年後を考えると日本がいまと同じような発想で、尖閣諸島の周りへのパトロールで現状維持ができるかと言うと、かなり深刻な問題になると思います。

「数の問題」だということを認識するべき

飯田)かつては公務員を常駐させる議論もありましたが、その辺りも視野に入ってきますか?

細谷)現状維持がひっくり返されるような懸念が、いま目の前に迫っていますので、いずれその手の議論は出てくるでしょう。この件についてはあまり報道されていませんし、国民の意識も追いついていません。数の問題だということがもう少し認識されてもいいと思います。

佐々木)世界的に有名な中国のドローンメーカー「DJI」は、世界シェアの7割を占めると言われているくらい、中国のテクノロジーは進んでいます。技術が進化すると、あらゆるものが無人化していくでしょう。ロボットを含め、無人化された戦闘機や船が尖閣諸島などに押し寄せる可能性も、充分あると思います。そうなったときにどう対抗するのか。現状だと対応は難しいのではないでしょうか。

ドローンが増加すれば、いずれ衝突事故が起こる ~その際、弱い対応をすれば日本にとって大きなリスクになる

飯田)日本の立場としては、尖閣諸島は既に日本固有の領土であり領海ですので、何の紛争等もないことになっています。誰かが行くことも問題ないはずなのですが、さまざまな忖度から動いてこなかった。その10年間のツケのようなものが回ってきているのでしょうか?

細谷)以前の発想で、日本があくまでも施政権を持ち、コントロールしているという認識があると思います。もう1つ考えなくてはならないのが、ドローンが増えてくると、かなりの確率でいずれ衝突事故が起きるということです。

飯田)このまま増え続けると。

細谷)例えば、人間の窓口でお願いするなら融通が利くではないですか。同様に人間が操縦する場合は、現場での柔軟な対応が可能ですが、プログラムはそうではありません。ぐるぐる回っているときに、何らかの形で接触事故が起きる可能性があります。

飯田)ドローンによる。

細谷)そうなったとき、日中間が軍事的に相当緊張すると思います。ドローンが増えることのリスク、いずれ接触事故等が起きたとき、日本としてはどんな対応をするのか。弱い対応をしてしまうと、本当に日本にとってリスクになると思います。

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