「オスマン帝国復活」を掲げ再選を狙う、トルコ・エルドアン大統領

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地政学・戦略学者の奥山真司が5月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。トルコの情勢について解説した。

「オスマン帝国復活」を掲げ再選を狙う、トルコ・エルドアン大統領

政府専用機で来日したエルドアン・トルコ大統領夫妻=2015年10月7日午後、羽田空港 写真提供:産経新聞社

トルコ大統領選が決選投票へ ~エルドアン大統領が有利か

飯田)トルコ大統領選挙では、エルドアン大統領と野党統一候補のクルチダルオール氏がともに過半数へ届かず、決選投票になりました。

奥山)決選投票は5月28日ですから、約2週間後ですね。このままいくとエルドアンさんがまた勝つという状況になりそうです。20年以上にわたり政権を握っています。

飯田)首相から数えるとそうですね。

奥山)その間のトルコの動きを見ると、エルドアンさんが就任する前のトルコは周りの国といい関係を築いていて、軍事的にも激しいことをしているわけではなかった。その間に、最初のほぼ10年でいろいろなところと関係をつけて、周辺で起きた内戦に介入するのです。

昔のオスマントルコ時代の帝国をもう一度復活させるような動きをするトルコ

奥山)周辺のスーダン、リビア、ソマリア、イエメン、カタールなどにも軍隊を送っていました。

飯田)そうですね。

奥山)ナゴルノ・カラバフ紛争にも関与しました。そういうことをやって、昔のオスマントルコ時代の帝国をもう一度復活させるような動きをしており、興味深く見ています。

ロシア・中国の陣営と西側の間にいるトルコ

奥山)世界はロシア・中国の陣営と、西側の2つの陣営に分かれています。

飯田)そうですね。

奥山)そのちょうど中間にトルコがいて、他にもグローバルサウスと呼ばれる国がいて、インド、ブラジルなどの大きな国がいる。

世界の中間地帯で帝国の復活を狙うトルコ

奥山)そのなかでトルコの何が違うかと言うと、NATOのメンバーであり、西側に片足を突っ込んでいるというところです。

飯田)そうですね。

奥山)中間地帯の真空を埋めるような動きに、過去の帝国の復活という意識を感じます。私がイギリスに留学していたとき、トルコ人でオスマンという名前の友達がいたのですよ。

飯田)オスマンくん。

奥山)「帝国の名前だな」ということで「オスマン帝国」と呼んでいたのですけれど、彼はいつも悲しそうに「でもね、帝国は失われてしまったのだよ」とよく言っていました。

トルコのアイデンティティは「帝国復活だ」と言うことがうまくアピールできた

奥山)それをエルドアンさんは当然の如く意識しているのです。今回の選挙も、トルコ経済自体は過去の10年くらいに比べて落ち込んでいて、インフレ率も43%くらいになっています。けれど、経済の話ではないのだと。「トルコとしてのアイデンティティはイスラム教ではなく、トルコ民族もしくはトルコの帝国復活だ」というところをうまくアピールした。だから今回、ギリギリ再選しそうな段階にきているのだなと見ました。

飯田)トルコのアイデンティティは帝国復活だと。

奥山)帝国と言うと、我々は「昔の話をしても」という感じなのですが、こういう国は過去の栄光からインスピレーションを受けて未来のビジョンを描く。それがオスマン帝国にあったのではないかと見ています。

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