東京大学公共政策大学院教授・政治学者の鈴木一人が5月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福島第一原発の視察を終了した韓国視察団について解説した。
韓国視察団による福島第一原発の視察が終了
東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出をめぐり、韓国の視察団は福島での現地視察を含む主要な日程を終えた。5月26日に帰国し、処理水放出の安全性などについて確認を進める方針で、経済産業省の担当者は「誠実に韓国側の要望にこたえた。説明を尽くした」などとしている。
飯田)もともと国際原子力機関(IAEA)も視察団を入れていて、報告書をまとめつつあるという会見を行っていました。
鈴木)IAEAが視察団を入れることは前から決まっていた話ですが、やはり客観的、科学的に分析する人たちにきちんと見てもらうのが大事です。
視察団を送ったことは「問題の解決に前向きに対処したい」という尹政権の意思の表れ
鈴木)今回、韓国が視察団を送ったのは、「問題解決に前向きに対処する」ということでしょう。今後も日本を批判し続けるのであれば、こういうことはやらずに、彼らは処理水を汚染水と呼ぶのですが……「汚染水を放出するなどけしからん」と言い続けると思います。
飯田)今後も批判だけをするのであれば。
鈴木)少なくとも、前政権はそうでした。いまの政権になり、「問題を解決したい」という意思の表れから視察団を送ってきたのです。
飯田)尹政権になって。
鈴木)結果がどうなるかはわかりませんが、これだけきちんと対処し、通常の40倍に薄めて放出することをしっかり確認できれば、韓国としても「科学的にはこうだと言える」という報告はするのではないでしょうか。「科学的にそうだから安心だ」ということとは、また別の話だと思いますが。
飯田)安全と安心の議論ですね。
鈴木)しかし、少なくともこういうことをやったのだから、そろそろいいのではないかという空気をつくる。そこに政権の狙いというか、尹大統領の意思を感じます。
韓国国内の感情的な部分を解きほぐすためにも入り口は科学 ~あとは世論がどう捉えるか
飯田)あとは、これを受け止める韓国側の世論ですか?
鈴木)世論サイドがそれでも「けしからん」と思うのか、「ここまでやったのだから、そろそろいいのではないか」と思うのか。その辺りの判断は韓国国内の世論次第だと思います。
飯田)韓国国内の世論次第。
鈴木)太平洋側に向いている原発の事故が、韓国の近海に影響を及ぼすというのは、少しロジックとして難しいものがあります。科学だけではない部分、感情的な部分が相当あるのでしょう。それを解きほぐすためにも、やはり入り口は科学になるのではないでしょうか。
未だに日本への反発を持つ韓国のリベラル派
飯田)尹大統領の支持率がどうなっていくのか、世代的に見てもグラデーションがあるという話もあります。
鈴木)年齢が低ければ、これまで日本との確執を続けてきたことに対する理屈がよくわからないかも知れません。
飯田)若い世代は。
鈴木)でも高齢になれば、感情論として日本との関係を考える。韓国の場合、いまの日本だけではなく、過去の日本と付き合ってきた保守に対する反発があります。要するにリベラル派、進歩系の人たちは「保守派が日本と付き合うのはけしからん」という発想があり、そこが韓国の国内政治とリンクしてしまっているのです。リベラル派は高齢の方、特に民主化運動を進めていた人たちに多い。
飯田)386世代と言われるような方々ですね。
鈴木)そういう人たちは、過去の保守による酷い行いを覚えているので、「保守は親日であり、日本とのつながりで我々を抑圧してきたのだ」という恨みのような感情がまだ残っているのだと思います。
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