自公の不思議な事態 東京での「選挙協力解消」も、都議会で「政策協定維持」せざるを得ない事情

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ジャーナリストの須田慎一郎が5月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。東京での選挙協力を解消する方針を決めた公明党と自民党の今後の関係について解説した。

自公の不思議な事態 東京での「選挙協力解消」も、都議会で「政策協定維持」せざるを得ない事情

自民党の茂木敏充幹事長へ東京での自公間選挙協力関係の解消を伝え記者団の質問に答える公明党・石井啓一幹事長=2023年5月25日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

公明党が東京での自民党とのすべての選挙協力を解消 ~「東京での信頼関係は地に落ちた」石井公明党幹事長

次期衆院選から新設される東京28区の候補者調整をめぐり、自民党と公明党で折り合いがつかず両党が対立していた問題で、公明党は5月25日、東京28区への候補者擁立を断念した上で、東京では自民党の候補者に推薦を出さない方針を決めた。自民党内では約20年にわたる連立政権への影響を懸念する声も出ている。

飯田)公明党の石井幹事長はメディアの前で、「東京での信頼関係は地に落ちた」と発言しています。

須田)公明党の石井幹事長は温厚な方として知られているだけに、これだけの発言が出てきたのは驚きです。ただ、頷ける部分もあります。

飯田)頷ける部分も。

須田)その前に公明党の石井幹事長と自民党の茂木幹事長が協議していたわけですが、部屋の外まで両者の怒鳴り声が聞こえたそうです。相当、激しくやり合っていたのでしょう。感情的な対立の部分もあったのではないかと思います。

千葉5区の補欠選挙で公明党に出馬辞退の協力を求めた自民党 ~その見返りが東京28区だった

須田)翻って見ると、先の5つの選挙区で行われた補欠選挙において、千葉5区に英利アルフィヤさんが出馬するにあたり、公明党に出馬辞退の協力を求めたのです。その代わり「28区は公明党へどうぞ」という形だったのですが、自民党の東京都連がそれを受け入れなかったという状況があったのだと思います。公明党からすれば「話が違うではないか」となります。

飯田)公明党からすれば。

須田)公明党としても引くに引けない。なぜかと言うと、公明党にとって重要な地域であり、「常勝関西」と呼ばれている大阪、兵庫……特に大阪です。公明党の国会議員が初めて出たのは大阪の選挙区ですから。

最大の問題は自公執行部間のパイプが細ってしまったこと

須田)加えて、最大の支援団体である創価学会の関係において、東京都議会は重要なのです。東京都という地域を非常に重要視している。

飯田)なるほど。

須田)10増10減のあおりを受けて、公明党は非常に厳しくなっています。「東京28区で東京の国会議員を1人増やしたい」という考えを持っていたのだと思います。

飯田)東京28区で。

須田)それに対して、公明党からすれば「自民党の裏切りだ」という形になったのではないでしょうか。そうなる前に、もっと密に公明党サイドと調整するべきだったのです。自公執行部の間でパイプが細ってしまったことが、いちばん大きな問題だと思います。

相手を立てて自民党が一歩引くような形でやらないと、この手の連立関係は長続きしない ~茂木幹事長の配慮が足りなかったか

飯田)二階さんが幹事長のころは、「平時に顔を合わせてご飯を食べることが大事だ」というエピソードを聞いたことがあります。平時から顔を突き合わせていると、何かあったときにすぐわかる。逆に、何かあったときだけ話していると、向こうの腹の内などがわからない。「それでぶつかってしまう」と話していましたが、まさにそうなってしまったのですか?

須田)幹事長と国対委員長の間で、形式上の定期会合が行われていますが、会ってもすぐに終わってしまうのです。

飯田)「何かありますか?」「ないですね」というような感じで。

須田)連立パートナーとやり取りする場合、それでは会う意味がないだろうと思います。議員数は公明党の方が圧倒的に少ないけれど、数の力に驕ることなく、むしろ相手を立てて自民党が一歩引くような形で進めないと、この手の連立関係や友好関係は長続きしないのではないでしょうか。

飯田)自民党が一歩引いて。

須田)そういった意味では、「上に弱く下に強い」と言われる茂木幹事長ですから、少し配慮が足りなかったのかも知れません。

幹事長がリーダーシップを発揮して都連を説得するべきだった

飯田)幹事長が約束しても、都連と意思疎通できていなかったということですよね。「28区は増えるのだから公明党さんでいいだろう」と思っていたら、都連からすると「いやいや、練馬は大事なのだ」という認識だった。

須田)党全体の方針としては、「千葉があって東京があって」と、ある種のバーター的なことがあったのだから、選挙の最高責任者として幹事長がリーダーシップを発揮し、都連を説得するべきだったと思います。

東京都議会において、第1党である都民ファーストと対峙するための政策協定を維持している自公

飯田)東京都議会の方だと、自民党と公明党の関係はどうなのですか?

須田)「自公完全決裂なのか」という報道一色です。公明党は、都議会でも「選挙協力はしない」という方針ですが、不思議なことに政策協定は結んだままなのです。小池都政と対峙するのが、いまの自民党と公明党のスタンスですから。

飯田)都議会において。

須田)2年前からの政策協定については維持する形で結んでいます。ですから、完全離婚という形にはなっていないと思います。

飯田)確かに都議会では、都民ファーストが第1党にいるという都議会の事情があります。そこと対峙しなければならないのですよね。

自公の不思議な事態 東京での「選挙協力解消」も、都議会で「政策協定維持」せざるを得ない事情

2023年5月20日、集合写真撮影に臨む岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202305/20g7summit_session.html)

翔太郎秘書官の問題によって解散時期を再考する岸田総理

飯田)選挙の話がいろいろ出てくると、解散風にもつながると思いますが、その辺りはどうですか?

須田)国政でも今回の内容が大きな注目を集めているのは、「選挙はいつなのか」というところとも完全に連動しているからだと思います。

飯田)そうですね。

須田)場合によっては6月解散もあり得るというなかで、こんなことをやっている場合ではないだろう、という状況にもなりかねませんし、選挙スケジュールにも大きな影響を及ぼしかねない。加えて、ここにきて支持率が低下しています。

飯田)岸田政権の支持率が。

須田)G7サミットの成功によって「ドーン」と支持率が上昇しましたが、長男である翔太郎秘書官の問題が出てきてしまった。あのようなわかりやすい問題が出ると、支持率が下がってしまいますから、岸田さんとしても出鼻をくじかれる形となった。いま選挙をやるのがいいのか悪いのかを考えているのではないでしょうか。

飯田)解散風が吹いたあとに、やや凪になってきた感じですか?

須田)タイミング的にはベストとは言えないですよね。

大阪4小選挙区に候補を擁立する方向か ~大阪維新の会

飯田)先ほどの常勝関西という公明党の話とも絡みますが、日本維新の会が注目されています。

須田)もともとは大阪都構想をめぐる維新と公明党との協力関係ですから、ある意味では野合なのです。しかし大阪都構想がなくなった以上、いまの維新による大阪府下での実力をもってすれば獲れる議席なのだから、それを逃すことはないだろうという判断だと思います。

飯田)大阪には公明党の現職がいる4つの選挙区がありますが、その4小選挙区に候補を立てるかも知れない。

須田)全部立てるのはあからさまですから、ジワジワと進める形になると思います。公明党の総得票数も、比例においては800万票台から600万票台に下がってしまっているわけですから。

飯田)比例の票数が。

須田)その足元を見ているのだと思います。

右肩上がりの日本維新の会 ~党内がバラバラで自滅のプロセスに入った立憲民主党

飯田)常々、馬場代表が「野党第1党を獲る」と発言していますが、それを見据えながら全国で立てるような形になるのですか?

須田)維新の会が勝つというよりも、立憲民主党が自滅のプロセスに入ってしまったのではないでしょうか。党内がバラバラに分裂しています。

飯田)泉代表が「150議席獲らなければ辞任する」と表明し、統一地方選挙の責任論が紛糾したという情報が、議員総会などでも出てきています。

須田)入管法の改正案をめぐり、自民、公明、維新、立憲民主党の間で修正協議が進められ、合意に至った。ところが法務委員会で採決する際、いきなり立憲民主党が反対に回ってしまいました。

飯田)合意に至っていたにもかかわらず。

須田)党内の調整がついておらず、党内左派にひっくり返されたということです。ある立憲民主党の議員の方が「我が党は活動家に乗っ取られた」と言っていました。

飯田)乗っ取られた。

須田)選挙において、一枚岩で戦えるような体制になっていない状況だと思います。

飯田)泉さんでもハンドリングが難しいし、立憲民主党はどうなってしまうのか。

須田)もちろん、日本維新の会の力は強いです。最近は右肩上がりに伸びていますけれど、立憲民主党も野党第1党を失うべくして失ったのだと思いますね。

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