ジャーナリストの須田慎一郎が5月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。エルドアン大統領が再選した理由について解説した。
エルドアン大統領が再選
トルコでは5月28日に大統領選挙の決選投票が行われ、現職のエルドアン大統領が当選した。大統領選は今月14日に投票が行われていたが、当選に必要な過半数の票を獲得した候補者がいなかったため、現職のエルドアン氏と野党統一候補のクルチダルオール氏の決選投票となっていた。
再選の背景にトルコ的なナショナリズムの存在とヨーロッパに対するトルコ国民の視線
飯田)トルコ選挙管理委員会がエルドアン大統領の当選を発表しました。第1回の投票でも、エルドアンさんは49.5%の票を獲っていたのですよね。
須田)決選投票前の世論調査でも、エルドアン大統領が有利ではないかと言われていたので、予想通りの結果になったのだと思います。
飯田)予想通りの結果。
須田)その背景には、ある意味、トルコ的なナショナリズムがあったのではないでしょうか。1つは地域大国として、エルドアン大統領が存在感を発揮したということ。もう1つは、ヨーロッパに対するトルコあるいはトルコ国民の視線です。
飯田)トルコ的なナショナリズム。
須田)トルコはNATOには加盟しているけれど、EUには加盟していません。エルドアン大統領以前は、EU加盟に向けて一生懸命やってきたわけです。
EUに加盟せず、地域大国としての地位を固める ~エルドアン大統領のスタンスを支持したトルコ国民
須田)私もトルコに取材に行ってわかったのですが、例えばトルコは道路の車幅がEU規格に比べて狭いので、拡幅する作業を行ったわけです。加えてトルコは農業大国なので、フランスなどEUの有力な農業大国は、トルコが加盟してくると自分たちの立場が弱くなってしまう。そのため、ある種の規制を掛けようとしたのです。
飯田)トルコに対して規制を。
須田)それについても従うなど、トルコサイドは譲歩に譲歩を重ねていたのだけれど、結果的にはEUに加盟できなかった。
飯田)譲歩を重ねたけれど。
須田)トルコ国民には、ヨーロッパに対する複雑な思いがあるのです。結果的にエルドアン大統領は「EUに加盟しない」という方針を打ち出した。ヨーロッパに対抗し、地域大国としての地位を固めていくスタンスを取ったのです。今回は、そのスタンスに対する国民の大きな支持があったのだと思います。
飯田)そこに対する支持が。
須田)経済政策で大失敗し、インフレを止められないなど、いろいろ問題はあるのだけれど、それ以上にナショナリズムの部分でトルコ国民はエルドアン大統領を支持したのだと思います。
ボスポラス海峡を押さえて存在感を強めるトルコ ~「地域大国」を実現しているエルドアン大統領に対する、国民の支持がある
飯田)地域大国という意味では、実はウクライナと黒海を挟んでおり、小麦の船を通すなど独自の仲介をしています。
須田)かつ、イスタンブールでは海峡を押さえていますからね。
飯田)ボスポラス海峡を押さえている。
須田)トルコの影響力は非常に大きく、存在感を強めていると思います。
飯田)地震の対応で失敗し、「支持率を落とすのではないか」と言われていましたが、結局は乗り越えました。
須田)経済対策や地震対策などでは、ミスも多いのです。失政も多いのですけれど、結果的にそれを上回る熱い国民の支持がどこにあったのかと言うと、背景にはトルコ独自の存在感、「地域大国」を実現しているエルドアン大統領に対して、国民の支持があるのだと思います。
今後の対ロシア政策
飯田)この先は対ロシアの部分も、独自のスタンスで動くことになりますか?
須田)かつては露土戦争なども含めて、ロシアとは地域覇権を争っていた国ですからね。ロシア、あるいはアゼルバイジャンの問題もそうですし、トルコとしては独自の対ロシア政策を進めていくと思います。
飯田)ウクライナとの間の仲介までいくのでしょうか?
須田)ウクライナをめぐっては、アメリカあるいは西ヨーロッパの利害が複雑に絡んでいます。また、トルコが出ていって収められるような状況ではありません。とは言え、ウクライナとの関係強化をめぐり、ロシアとの対立軸を鮮明にしていくでしょう。結局は黒海での覇権が関係しています。
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