日本は「医療の充実」にもっとお金を使うべき
公開: 更新:
東京都医師会理事で「葛西中央病院」院長の土谷明男氏が5月26日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。今後の医療の在り方について語った。
今後の医療はどうあるべきか
飯田浩司アナウンサー)かかりつけ医についての議論がありますが、そのさらに先、今後の全体的な日本の医療をどうするべきかにつながるような気がします。どうお考えでしょうか?
土谷)日本は成熟した社会になったと思います。例えば50年前、戦争が終わった直後はものがなかったわけです。いまはものが溢れんばかりになっています。それにアクセスできない人がいるのも事実ですが、日本全体としては、いろいろなものが手に入るようにはなっています。
医療サービスの質を上げるには税金が必要になる
土谷)「では何が欲しいか」と言いますと、いまの生活の質をもっとよくしてくれるもの、特にサービスです。そのなかに医療も入るのではないかと思います。
飯田)医療へのアクセスの容易さや、何かあったときには、もっと高度な医療を受けたい。そういう仕組みがあるといいのでしょうか? 流れとしては、医療費がある程度掛かる話になってきますよね。
土谷)「質のいいものを受けたい」、また「提供したい」と双方が思えば、やはりお金の話になります。お金をどうすればいいかということですよね。お金の話は、どうも煮詰まってしまっていると思います。特に税金の話です。
飯田)全体の均衡点を探すのは、本来は政治の役割であるはずですが。
土谷)そういったサービスが欲しいのであれば、お金が必要です。そのお金をどうするのだとなれば、税金という話になります。税金について政治家が言おうとすると、自分の政治生命をかけて言わなければなりませんので、なかなか難しいと思います。
お金以外に欲しいものの1つが「医療の充実」 ~本当に欲しいものにもっとお金を使うべき
飯田)全体の文脈のなかで、ここ20年~30年先の医療をどうしていくのか。議論として、そこまで医療を最大限に施すべきなのか、それとも別の生き方など、ある意味「クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)」を高めるような方向にいくのか。その辺りはすべて、「現状維持でお願いします」というような状態になっていますよね。
土谷)現状維持でもお金が足りなくなってきているわけです。しかし、見て見ぬふりをしている。「いま何が欲しいのか?」となると、ものやサービスではなく、結局は「お金が欲しい」という話になっています。それが生活の質になかなか結び付いていないのが、いまの日本ではないでしょうか。
飯田)みんなお金が欲しいとなると、お金の価値が上がって、デフレになっていく。経済論とはまた別の部分、気持ちの部分でのデフレ作用があるのかも知れませんね。
土谷)お金以外に欲しいものがなくなってきていると思います。みんなお金が欲しいと思っている。しかし、お金を持って何をするのかということです。
飯田)その先がない。
土谷)医療はその1つだと思います。それが欲しい人は、医療に使っていいのではないでしょうか。でも、使える人が使うのではなく、病気や怪我については誰もがなる可能性があります。
飯田)そうですね。
土谷)そこに力を入れていくことは大事だと思いますが、「本当に必要なもの」にもっと使ってもいいのではないでしょうか。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます