経済アナリストのジョセフ・クラフトが7月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。国税庁が発表した2023年の路線価について解説した。
都内の路線価が3.2%上昇
飯田)7月3日、国税局が2023年の路線価を発表しました。東京は3.2%上昇、全国でも1.5%上昇しています。この辺りが伸びてきているのも、景気がよくなっているからでしょうか?
クラフト)全体的に、株価も示すように景気が改善しています。デフレ経済からは脱却した印象を受けますし、地価のニュースもそれを反映しているのだと思います。さすがにゼロ金利がずっと続いているので、上がって当然と言うか、「やっと上がったか」という感じです。
タワーマンション相続税の新ルールがどう影響するか
飯田)資産インフレと言いますか、資産価値が上昇すると、やがて消費などに効いてきますか?
クラフト)多少は効いてくると思いますが、いまの若い人は土地を持っていませんよね。
飯田)恩恵がないですよね。
クラフト)恩恵がないので、「一気に進む」という感じではないと思います。これからの動きについて、1つは、政府が打ち出したタワーマンションの相続税の新ルールなどがどう影響するかです。
飯田)「タワマン節税」を防ぐための。
クラフト)日銀の金融政策が来年(2024年)に向けて一定程度、正常化に向かうのかどうか。不動産業界にもブレーキが掛かり得る可能性はありますが、これはこれでいまのところバブルとは言えませんので、いい傾向だとは思います。
日銀が「異次元の緩和」から通常の緩和政策に移行する可能性も
飯田)日銀の金融政策は「異次元の緩和」をいまも行っていますが、物価の見通しが高止まりしていくと、どこかで手仕舞いになりますか?
クラフト)最近の日銀の金融政策その他の発言を見ると、「インフレの上振れリスク」という言葉が少しずつ増えています。日銀も1.8%~2%というインフレ率を見通しているのですが、どうも、そこまで下がらない可能性があると見ているのではないでしょうか。
飯田)今年(2023年)の年末辺りで。
クラフト)来年は植田総裁もインフレがまた上がっていくと言っていますので、そうなるといまのゼロ金利、異次元緩和を維持する大義名分がなくなるわけです。
飯田)なるほど。
クラフト)私の推測なのですが、おそらく植田総裁は、緩和は続けるけれど、異次元緩和に関しては違和感を抱いていると思います。例えばマイナス金利や長短金利コントロール、いわゆるYCC(イールドカーブ・コントロール)などの制度は、年末から来年の春先にかけて撤廃、修正していく。ただゼロ金利は当面、下手をすれば2025年~2026年まで維持する。このように異次元緩和から、通常の緩和政策に少しずつ移行するのではないかと思います。
飯田)国債をいきなり買わなくなるなど、そこまでの急ブレーキは踏まないけれども、というところでしょうか?
クラフト)国債は基本的に従来型の金融政策ですので、それは続けると思いますが、買う量は少し減るでしょうし、上場投資信託(ETF)の買い入れ策などは極力避けたいと思っているのだと感じます。
いきなり引き締めをして経済を冷やすことがないよう、バランスの取れた舵取りを試みる
クラフト)いきなり引き締めに入ってしまうと、株価もそうですし、地価も下落しかねません。しかし、異次元緩和をやめて従来型の緩和に移行することは、おそらく経済には大きなショックになりません。正常化には向かうのですが、強い引き締めではありません。そうすると地価も維持できますし、経済活動にも冷や水を掛けられることはない。そのように、うまいバランスで政策の舵取りをしようと試みているのではないでしょうか。
市場に対し「徐々に正常化していく」シグナルを少しずつ出す植田日銀総裁 ~景気がよくなっているから金融政策も緩和してきている
飯田)もともと植田総裁は、市場に先行きの金融政策の方針を示す「フォワードガイダンス」を、25年ほど前から提唱されている方でもあります。その辺りの対話の仕方はどうなのでしょうか?
クラフト)6月の記者会見で植田総裁はYCCに関し、データによってはサプライズもあり得ると。つまり、修正する可能性もあると言っています。市場に対しては、一気に正常化するのではなく、「徐々に行う」というようなシグナルを少しずつ出しています。
飯田)一気に正常化するのではなく。
クラフト)向こう1年で、まったく政策が変わらないという状態にはならないと思います。これから少しずつ変わるのではないでしょうか。景気がよくなっているから、金融政策も少し緩和してきていることを意味しているので、相対的にいいことだと思います。
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