双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が7月28日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。林外務大臣の東南アジア・アフリカ諸国への歴訪について解説した。
林外務大臣のインド・アフリカへの訪問がスタート
南西アジアとアフリカを歴訪中の林外務大臣は、インドの外相と会談した。対中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力を確認したとみられる。林氏は7月28日に政府関係者や経済人らが参加する「日印フォーラム」で講演する。その後、スリランカ、モルディブ、南アフリカ、ウガンダ、エチオピアを訪問し、8月4日に帰国する予定。今回の歴訪は、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国との関係を強化する狙いがある。
どこもインドを味方にしたいと考えている ~独自の立場を貫く
飯田)国会も閉まり、海外出張に向かう閣僚も多く、林さんもインドに行きました。インドは20ヵ国・地域(G20)の議長国でもありますからね。
吉崎)先日はアメリカに国賓としてモディ首相が招かれました。インドはいま、ちょっとしたモテ期ですね。
飯田)モテ期がきている。
吉崎)みんながインドを味方につけたいと思っています。このようなことは滅多にないので、インドとしては、このチャンスを逃さず、今年(2023年)の9月に開かれるG20首脳会議の前に、自分の国の魅力アップを図っているところだと思います。
飯田)インドとしては、どういうポジションを取りたいのでしょうか?
吉崎)彼らは、天上天下唯我独尊なのです。「俺たちがどっちにつくかなど、お前たちはそんなことを考えるなよ。俺は俺だ」というようなところがある。
飯田)俺は俺だと。
日本はアメリカに寄り添う以外に選択肢はない、と見ているインド ~自分のことは自分で決めるインド
吉崎)我々は何となく、G7バイアスのようなものが掛かっていて、「利益を考えたら西側につくだろう」と思ってしまうのですが、インドは違う見方をしています。彼らは日本外交について、「日本は結局、アメリカにべったりで他に選択肢はないだろう」と見ている。
飯田)日本の外交を。
吉崎)「俺たちは違うぞ、自分で決めるのだ」というところがあり、見方の違いがあるのだと思います。
ロシアとインドの強い結び付きを知らない日本 ~ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのBRICS会議の内容が報道されることはない
吉崎)2017年にモスクワで開かれた「日露専門家会議」に、小泉悠さんなどと一緒に参加したことがあります。その会議はさておいて、たまたま泊まったホテルの朝食会場がインド人でいっぱいだったのですよ。
飯田)そうなのですね。
吉崎)「ロシアとインドの方々の交流は、こんなに凄いのか」と思い知らされましたね。
飯田)その会議に出席した人だけではないのですか?
吉崎)会議に出た人だけではなく。ロシアとインドの間の人流は、我々からはまったく見えていないなと思います。もはやレーダーサイトから抜けてしまっているわけです。
飯田)抜けていますよね。
吉崎)考えてみたら、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカによるBRICSの会議がありますよね。この5ヵ国の首脳会議は、毎年きちんと開催されていて、今年は8月下旬に南アフリカで行われます。
飯田)そうですね。
吉崎)いままで我々は、BRICSの会議でどんな議論が行われていたか、報道で聞いたことがあるかと言うと、ないですよね。
飯田)確かにないですね。
吉崎)ところが、ロシアで読める数少ない英語の新聞を見ると、「今年のBRICS会議ではこんな議論がされている」という内容が出ているわけです。
飯田)ロシアで発行されている新聞には。
「グローバルサウス」と言いつつ、その国々のことを狭い範囲でしか見ていない日本
吉崎)いかに我々が彼らのことを見ているようで、見ていないか、ということです。
飯田)そうですね。
吉崎)最近になって、「グローバルサウス」という便利な言葉が出てきましたが……。
飯田)もっと見なくてはいけない。
吉崎)みんなそう思っているのですが、いかにいままで我々は狭い範囲だけしか見ていなかったかということです。
日本が介在しない人の流れや経済の動きを見ようとしてこなかった
吉崎)日本外交と言うと、まず日米と日中が大事で、あとは領土問題があるからときどき日露。あるいは朝鮮半島……ザッツオール、というような。だいたい報道はその辺りですよね。
飯田)国際面で出てくるのはそうですね。
吉崎)よく考えてみると、日本が介在しないところの人の流れや、経済の動きなどについて、いかに我々が見ていないかということです。ちょっと愕然とするものがあります。
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