安倍派の集団指導体制で見えてきた「森喜朗元首相」の存在感 「もう、影響力はない」

By -  公開:  更新:

ジャーナリストの須田慎一郎が8月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。安倍派の新体制について解説した。

安倍派の集団指導体制で見えてきた「森喜朗元首相」の存在感 「もう、影響力はない」

自民党安倍派が政治資金パーティー。「清和政策研究会との懇親の集い」であいさつする森喜朗元首相=2022年5月17日午後、東京都港区の東京プリンスホテル 写真提供:産経新聞社

自民党最大派閥・安倍派、8月末をめどに新体制の発表へ

自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)は8月20日、長野県軽井沢町で派閥の研修会を開いた。研修会の冒頭、派閥の取りまとめ役となった塩谷元文部科学大臣は、派閥の運営を行う常任幹事会のメンバーを8月末にも発表する方針を明らかにした。

飯田)安倍元総理が亡くなった2022年7月以降、会長の不在が続いています。

須田)最初から「こうしておけばよかったのではないか」というところに、最終的に落ち着いたのではないでしょうか。会長を置かずに座長を据えるという。

今後、5人衆の共同協議において、派閥の方針は決まっていく

須田)とりあえず派閥との窓口役を置く。安倍派が一本化にまとまるという点では、あるべきところに落ち着いたのかなと思います。

飯田)実際の運営に関しては実力者たちが集まって、ある意味の集団指導という形を取る。

須田)集団指導体制です。ただ、常任幹事会に関して言うと、中心になるのは5人衆と言われる人たちに加えて、閣僚経験者が入ってくるとされています。おそらく、5人衆の共同協議において、派閥の方針が決まっていくのだと思います。

飯田)5人衆の共同協議によって。

安倍派の集団指導体制で見えてきた森元首相の存在感 ~もう影響力はない

須田)ただ、これによって見えてきたことが1つあります。これまでオーナー然として振る舞ってきた森元首相の意向、あるいは影響力が「完全に終わったな」ということです。

飯田)そうなのですか?

塩谷さんを嫌っていた森元首相 ~森元首相の意向は届かず、落ち着くべきところに落ち着いた

須田)森さんは塩谷さんとそりが合わなかったのです。だから塩谷さんに対し、森さんは終始一貫して反対してきた。何がきっかけで森さんは塩谷さんのことを嫌いになったのかと言うと……。

飯田)きっかけは。

須田)塩谷さんは静岡県出身なのですが、静岡県の政界において、影の最大実力者として影響力を持っているのが、スズキの鈴木修相談役です。かつては会長を務めていました。

飯田)鈴木修さん。

須田)あの方が最も大きな影響力を持っている。塩谷さんは選挙に弱いので、森さんが鈴木修相談役のところにお酒を持って行き、「よろしく頼む」と頭を下げたのです。

飯田)森さんが。

須田)しかし、森さんは塩谷さんに「お願いしておいたからフォローしておくように」と言ったのだけれど、塩谷さんは何もやらなかった。そこで「何だあいつは」となったという、子どもの喧嘩のようなことがあったのです。

飯田)そういうことが昔あったわけですか。

須田)だから「塩谷さんは絶対ダメだ」というようなことを言ったのですが、結果的に落ち着くべきところに落ち着いた。森さんの意向が届くのもここまでかなと思います。

会長の代替案として5人衆がトップ5となる ~森元首相の意向は萩生田光一氏と西村康稔氏が将来的に清和政策研究会を引っ張っていくことだった

飯田)森さんはもともと、「安倍さんの一周忌までには会長を決めようではないか」というような発言をしていましたが、そうはならなかったのですか?

須田)それができないということを受けて、5人衆による集団指導体制となった。つまり、いままで会長代理を務めていた下村博文さんや塩谷さんを脇に置いて、「5人衆がトップ5を務めればいいのではないか」という代替案を出したのです。

飯田)なるほど。

須田)森さんの意向としては、萩生田光一さんと西村康稔さんの2人が、将来的に清和政策研究会を引っ張っていけばいいのではないかという考えでした。

5人衆の弱点は「私がやります」と言う人がいないこと

須田)ただ、5人衆の悪いところは、「私がやります」と言う人がいないのです。「他の人が推してくれるのであればやります」というような。

飯田)なるほど。

須田)しかし、権力とは自分から取りに行くものです。それをやらないところが、5人衆の弱いところではないかと思います。

飯田)「何が何でも」と前に出るのではなく、「皆さんがそうおっしゃるのであれば、やぶさかでもない」という感じなのですね。

須田)だから決め手に欠けていたのです。

他派閥からすると安倍派に一枚岩でまとまられるとやりにくい ~以前のように森氏が内部で暴れてバラバラな方が組みやすい状況だった

飯田)今回、座長に塩谷さんを置いて常任幹事会体制になりましたが、ある意味で折衷案のようなものなのですか?

須田)そうですね。ただ、他派閥からすると、塩谷さんが座長になって一枚岩でまとまる方がやりにくいと思います。

飯田)他の派閥からすると。

須田)いままでのように森さんが内部で暴れて、バラバラになってくれた方がいいのです。安倍派は党内最大派閥であり、100人の国会議員を抱えているわけですから。それが一枚岩にならないということは、特に岸田さんからすると、組みやすい状況だったのではないかと思います。

「帯に短し襷に長し」の5人衆  ~すべてを持っていた安倍氏の代わりはできない

飯田)しばらくはこの体制で固まっていくのでしょうか?

須田)やはり「帯に短し襷に長し」なのです。金はあるけれど人望がない。あるいは人望はあるけれど政策がないなど、それが5人衆のそれぞれですから。そういった点で言うと、安倍さんはすべてを持っていた人でした。

飯田)その安倍元総理が突然亡くなり、下にいた人たちのバランスが崩れてしまった。

須田)安倍体制であと10年は進めるはずだったのです。そのなかで切磋琢磨して次の世代が育ってくるというのが、清和政策研究会の方向性だったけれど、いきなりトップが亡くなってしまった。安倍さんに代わってすぐに会長をやれる人などいません。

内閣改造、党役員人事はどうなる ~一枚岩にまとまってしまうと安倍派からの一本釣りは難しい

飯田)最大派閥となると、複数の閣僚ポスト、あるいは党の重要な役員の要求も考えられます。人事が間もなく迫ってきますよね。

須田)9月早々にも内閣改造、そして党役員人事があることを前提に、一枚岩にまとまっておこうという考えだと思います。

飯田)岸田さんからすると、5人衆のなかに手を突っ込んで、「誰かを閣僚に」ということを考えるわけですか?

須田)かつてそれをやったのは小泉純一郎さんです。要するに派閥の意向は受け付けず、閣僚については一本釣りというような。

一本釣りをして断られたら、安倍派が「岸田下ろし」を仕掛けかねない

須田)しかし、このように一枚岩にまとまられてしまうと、「閣僚にどうですか?」と一本釣りをしようとしたとき、「結構です」と言われたら党内最大派閥を敵に回しかねない状況になるわけですから、一本釣りするにも相当な覚悟が必要です。

飯田)一本釣りで失敗すれば、総理のメンツが潰れてしまうわけですよね。

須田)潰れますし、党内最大派閥が岸田さんに対して、岸田下ろしを仕掛けかねない。そういう状況になる可能性もあります。

飯田)「派閥のなかに手を突っ込むなんて」という。

須田)そうですね。

いまの体制で松野官房長官、西村経済産業大臣、萩生田政調会長をどうするのか

飯田)誰を推してくるのでしょうか?

須田)いまの体制で松野官房長官や西村経済産業大臣、あるいは萩生田政調会長をどうするのかと考えると、萩生田さんは「幹事長狙い」もあります。ただ、少し早いところもある。

飯田)萩生田さんは59歳です。いまの幹事長である茂木さんはどうするのか。

番組情報

飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組HP

忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。

Page top