外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。キャンプデービッドで開催された日米韓首脳会談について解説した。
日米韓首脳会談で合意した情報共有の機能を試すことになった北朝鮮のミサイル発射
飯田)北朝鮮のミサイル発射に対して、G7外相が北朝鮮を非難しています。また、先日は日米韓首脳会談がキャンプデービッドで行われました。
宮家)そこでは三国間で情報共有を行うという内容の合意も進んだわけですが、それが本当に機能するかどうかという矢先に、北朝鮮がミサイルを撃ってきたのです。
飯田)情報共有を始めたところに。
宮家)日米韓の外相がすぐに連絡を取り合い、事務レベルでも連絡し合っている。けっこうスムーズに動いているのでしょう。
飯田)電話会談が開催され、今回のミサイル発射を非難しました。
宮家)北朝鮮のおかげです。逆効果になるということが、どうしてわからないのでしょうか。中国も1996年、台湾での総統選挙の際にミサイルを発射しました。それによって李登輝さんが勝ってしまった。どうして独裁者はわからないのか。北風と太陽ではないけれど、「太陽ならば、もっとうまくやるだろう」と思います。ことごとく、ありがたい方向に動いていますよね。
飯田)こういう危機感が物事を動かしていく。
宮家)そうですね。
飯田)尹錫悦さんにはその危機感があり、もちろんアメリカや日本にもある。
キャンプデービッドでの日米韓首脳会談で日韓の関係を早く修復したかったアメリカ
宮家)1978年に中東の和平条約「キャンプデービッド合意」がありましたけれど、あのときは首脳たちが13日間も缶詰めになっていました。
飯田)当時のエジプトのサダト大統領と、イスラエルのベギン首相の会談。
宮家)当時のエジプトとイスラエルは戦争状態にありましたから、今の日韓とは全然違うのだけれど。今回はやはり、アメリカが急いだのでしょうね。
飯田)日韓関係の修復を。
宮家)やる以上はより永続的なものにしたいし、最終的には韓国の外交政策を変えたかったのです。
東アジア・インド太平洋地域に2国間の枠組みを重層的に重ねて、NATOのような枠組みをつくる ~そのためにも日米韓首脳会談を開き、日韓関係を修復したかったアメリカ
宮家)第1になぜ急いだのかと言うと、ヨーロッパでウクライナ戦争があり、当分は終わりそうにない。その上、中国が何かを企んでいるような兆候もある。ヨーロッパには北大西洋条約機構(NATO)があるけれど、東アジア・インド太平洋地域にはNATOのような枠組みがないわけです。
飯田)東アジア・インド太平洋地域には。
宮家)2国間の枠組みを重層的に重ねて、NATOのような枠組みをつくりたいと思っても、これまでの経緯を考えると、いちばん弱い部分が日韓なのです。
飯田)日韓関係が。
宮家)だからアメリカは日韓を何とか改善したかったのだと思います。いままでは水面下、しかも閣僚レベルでやっていたけれど、今回はキャンプデービッドで開催し、首脳レベルで会談したというのは、相当アメリカが危機感を強めていたからだと思うのです。
日米韓首脳会談を毎年開催する ~韓国の政権が野党に代わっても「日米韓の連携は変わらない」というメッセージ
宮家)2つ目に、永続性をどう保つか。韓国は民主主義だから、野党が次の政権を獲る可能性があるわけです。だから、韓国内の特に野党に対して「あなたたちが戻ってきても日米韓の連携は続く。あなたたちが変えようとしても変わらないですよ」というメッセージを出した。今も韓国内にはゴールポストを動かす勢力がいるわけですから、それに対する強いメッセージを示したのが、永続性のポイントだと思います。
飯田)どのような政権になっても変わらないのだと。
宮家)「日米韓首脳会談を毎年やる」という言い方をしているところがポイントです。
変わりつつある韓国の外交政策 ~朝鮮半島だけでなく、「インド太平洋地域の平和・安定」へ
宮家)韓国の外交政策はいま、変わりつつある。伝統的には、北朝鮮にも中国にも配慮して、全体でバランスを取る外交政策でした。
飯田)これまでは。
宮家)しかし、北朝鮮があのような状態で、中国がこれだけ大きくなると、アメリカは北朝鮮も大事だけれど、中国の脅威のことがまず念頭にあるわけです。
飯田)アメリカは。
宮家)そのため、韓国にも今後は「インド太平洋地域の平和・安定」という発想をもっと強く打ち出して欲しい。それを今回の「キャンプデービッド原則」の中に書きこみ、それを韓国が受け入れたということは、韓国の安全保障政策もしくは外交の重点が、単なる朝鮮半島だけではなく、より広がっていく兆候だと思います。
飯田)これまでであれば北東アジア、特に北朝鮮を相手にしていたけれど。
宮家)特に進歩系の人たち、文在寅政権がそうでした。それが変わるかどうかがポイントだと思います。
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