独ソ戦を引き合いに「ウクライナに味方する国はナチスと同じ」と国民に訴えるロシア 歴史を政治利用

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ジャーナリストの須田慎一郎が9月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシア各地で行われた式典「軍国主義日本への勝利と第二次世界大戦終結の日」について解説した。

独ソ戦を引き合いに「ウクライナに味方する国はナチスと同じ」と国民に訴えるロシア 歴史を政治利用

2023年2月21日、モスクワで連邦議会に対する年次報告演説を行うロシアのプーチン大統領(タス=共同)

対日戦勝式典 ~歴史を政治利用するロシア

ロシアのプーチン政権は9月3日、「軍国主義日本への勝利と第二次世界大戦終結の日」の式典を各地で行った。サハリン(樺太)の式典にはメドベージェフ前大統領が参加。「日本は歴史の教訓を学び、軍国主義的な計画を放棄すべきだ」と主張した。

飯田)降伏文書に調印したのが9月2日で、2010年以降はこの日を「第二次世界大戦終結の日」としていました。ただ、中国が翌3日をこうした記念日にしていたこともあり、ロシアもそれに合わせる形で日程の変更がされたようです。

須田)歴史の政治利用があからさまに行われていると思います。いまロシアとウクライナをめぐり、ロシアと日本は敵対関係になってきています。そのため国内に対し、「ウクライナと連携する西側諸国をナチス連合と呼べ」という指示が出ているようです。

飯田)ロシア国内において、ですか?

須田)ロシアの歴史教育のなかでは、第二次世界大戦以降の歴史を占める部分がかなりの割合で入っており、ロシア現政権の正当性をいかに訴えていくかに力を入れています。そのなかで第二次世界大戦に勝ったことが大きな権威付けになっているわけです。これを精一杯利用したいのだと思います。

ロシア国民のDNAに刻み込まれている独ソ戦 ~「ウクライナに味方する国はナチスと同じ」と訴える

飯田)第二次世界大戦で勝ったときの相手が、ナチスドイツでした。独ソ戦は悲惨を極めましたが、それがあるから「ウクライナに味方する国々はナチスなのだ」と訴えるわけですね。

現体制がより大きな危機感を持っていることの裏返し ~ドローンがウクライナからの攻撃であることに薄々気付いているロシア国民

須田)独ソ戦は「大祖国戦争」と位置付けられ、ロシア国民のDNAに刻み込まれている歴史的な一件です。それを呼び起こそうとして、「あのときの危機をもう1度思い出すべきだ」と示しているのです。そう考えると、現体制がより大きな危機感を持っていることの裏返しだと思います。

飯田)歴史認識も引っ張り出さないと、気持ちを向かせられないところがあるのですか?

須田)政権批判に向かってしまうのです。ましてや、いまはドローンでロシア国内、モスクワ等が攻撃されているわけです。

飯田)正体不明ということになっていますけれど。

須田)ロシア国民も「ウクライナからの攻撃だ」ということに薄々気付いています。だとすると、「いつロシア本土も攻撃されるかわからない」という危機感があるわけです。とは言えウクライナはロシアと違って国際法を守る国ですから、軍事施設しか攻撃していないのですが。

独ソ戦でのドイツの空からの攻撃を呼び起こそうとするロシア政府

飯田)ウクライナによるものかどうか、あるいはロシア国内の反体制派の可能性も指摘されていますね。

須田)特に独ソ戦では開戦当初、ナチスドイツが徹底的にロシアの空軍を叩いたため、そのとき保有していた航空機の約7割を失い、制空権を一気に失ったと言われています。開戦当初からモスクワあるいはサンクトペテルブルクが空爆されたのです。

飯田)当時。

須田)大量虐殺に遭っている。そういう危機感をもう1度呼び起こすことは、非常に意味があるのです。

飯田)空からの攻撃の怖さのようなものが身に染みている部分がある。

須田)そうですね。

ロシアによって塗り替えられた貝殻島の灯台

飯田)日本に対してもプロパガンダ戦を行っているわけですが、一方では、北方領土からミサイルが撤去されたという話が出てきています。

須田)それが一体どんな意味合いを持つのか。貝殻島の灯台は色が塗り替えられ、ロシア国旗が掲揚されています。これは日本国内から見ることができますし、ある種のメッセージだと思いますが、それだけ大きな危機感を持っているのではないでしょうか。

飯田)根室や納沙布岬があり、その先に歯舞群島がある。歯舞群島との間の浅瀬にある貝殻島には灯台が存在し、これはもともと日本が建てたものです。色を塗り替えたということは、ある意味でロシアが主権を行使したことになりますね。

須田)いままで打ち捨てられていたものが、そういう形で回収されている。当然、日本に見られていることを意識しているのだと思います。

飯田)あそこは陸上からでも、目を凝らせば見えますものね。

「日本に対して北方領土を譲歩する予定があったが、ウクライナをめぐる日本の対応によって永久にそれが失われた」と揺さぶりを掛けるロシア

須田)なおかつラブロフ外相は「北方領土問題で日本に対して譲歩する予定はあった。ところがウクライナをめぐる日本の対応によって、永久にそれが失われた」という、ある種の揺さぶりを行いました。「本当に譲歩するつもりがあったのか?」と思いますけれどね。

飯田)結果的には、まったくそういう気配もありませんでしたし、経済協力を引き出そうとする部分ばかりだった。ロシアはそういう情報戦で揺さぶりを掛けてくるのでしょうか?

須田)北方領土返還を望んでいる北海道の方々に対して、ロシアと敵対関係にある日本政府の対応はおかしいのではないかと思わせ、分断を図っているのだと思います。

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