リビア大洪水 「内戦状態」が被害を拡大させている原因か
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二松学舎大学国際政治経済学部・准教授の合六強が9月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。リビアの大洪水について解説した。
リビア大洪水
内戦が続く北アフリカ・リビアで発生した洪水に関し、リビア国営通信は9月12日、内務省のデータに基づいて、地中海沿岸にあり被害が最大とされる東部デルナの死者が5300人に上り、数千人が行方不明になっていると報じた。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は行方不明者が1万人以上になる可能性を指摘しており、死傷者数はさらに増える可能性がある。
飯田)国際移住機関(IOM)によると、デルナで3万人以上が避難したと伝えられています。想像を絶する被害が出ていますね。
内戦状態が被害を拡大させている原因か
合六)リビアと言うと、2011年にカダフィ政権が崩壊して以降、統一政府として国を1つにまとめようと努力してきたのですが、治安状況も進まず、東西に2つの政府が分裂している状況です。
飯田)2つの政府に。
合六)そこに国際社会がさまざまな形で関与しており、内戦状態にあるので、それが被害を拡大させている原因ではないかと言われています。
飯田)報道によれば突然、爆発のような音がして、ものすごい勢いの水が流れ込んだと言われています。上流のダムが内戦の間、ずっと放置され続けていたという話もあります。
地震のあったモロッコでは、モロッコ側がフランスの支援も拒否
合六)統一政府がないとインフラへの投資もできませんので、それも被害を拡大させているのではないでしょうか。同じ北アフリカのモロッコでも地震があって、発生から間もなく1週間になります。
飯田)そうですね。
合六)救助も進んでおらず、モロッコとは関係が深いフランスの支援もモロッコ側が拒否しているようで、論争にもなっています。いちばん困っているのは、そこにいる人々だと思いますから、支援が行き渡ることを祈ります。
UAEやスペインなど、救援に「入ってもいい国」を限定しているモロッコ
飯田)ユニセフに話を聞いたところ、政情が安定していないので支援も入りづらいようです。当然、安全確保が難しくなりますからね。
合六)トルコ・シリア地震のときも同じような問題がありました。やはり支配している勢力が許可しないので、NGOや国際機関が入っていけませんでした。
飯田)トルコ・シリア地震のときも。
合六)今回のモロッコのケースであれば、理由はフランスとの政治的な関係ではないかとも言われていますが、「入っていい」という国を限定しているようです。
飯田)救援してくれる国を限定している。
合六)例えばアラブ首長国連邦(UAE)やスペインなど、かなり限定しているようです。逆に言うと、それ以外はまだ認めていないという状況です。背景には複雑な理由があるのでしょうけれど、まず何よりも困っている人たち、被害に遭われた方たちに対する支援が行き届けばいいと思います。
今回の災害でヨーロッパでの難民問題が再発する可能性も
飯田)災害が起こって経済的に苦境になり、政治的にも政情不安に陥ると、「対岸のヨーロッパに逃げ出そう」という人がまた増える可能性もありますね。
合六)この地域では2010年代に「アラブの春」が起き、民主化が一気に進むのではないかという期待感がありました。しかし、安定せずに内戦状況が続くなかで、難民問題が出てきた。
飯田)そうでしたね。
合六)ドイツにもかなり多くの難民が押し寄せ、受け入れを決定したことによって、ヨーロッパにおける極右ポピュリズムが台頭してきました。ここ最近、その傾向は下火になっていましたが、今回のことでその問題が再発する可能性もあると思います。
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