経済アナリストのジョセフ・クラフトが9月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日米それぞれの金融政策について解説した。
FOMC、年内もう1回の追加利上げを示唆 ~2024年に4回かけて行うとされた利下げが2回に
飯田)アメリカでは現地時間9月19日~20日、連邦公開市場委員会(FOMC)の政策会合が行われました。今回は「利上げしない」ということでしたが、長期金利上昇への警戒感は、「先々にはまた上がる」という考えがあるのでしょうか?
クラフト)今回のFOMCでは、先行きの金利見通しをそれぞれの政策委員が発表する、いわゆる「金利予測分布図(ドットプロット)」があるのですが、これを見ると年内はあと1回、利上げの可能性があるようです。ただ、重要なのは来年(2024年)に4回かけて行うとされていた利下げが、2回に修正されました。つまり、高金利がより長く維持されるということです。
長期金利が上昇することによってドル高、円安に ~日銀の金融政策決定会合では「当面維持」日米の金利差拡大から円安が進む
クラフト)アメリカでは「ハイヤー・フォー・ロンガー(より高く、より長く)」の方針で維持するということで、長期金利が上昇します。これによってドル高になり、円安が進むことになります。
飯田)9月21日~22日に、日本でも日銀の金融政策決定会合がありましたが、こちらも現状維持という感じになりました。
クラフト)こちらはアメリカと違い、「当面は維持」という方針から市場が安心して日米の金利差が拡大すると見て、ドル高・円安に進んだということです。
植田日銀総裁が2023年12月~2024年3月の間にマイナス金利を解除する可能性を示唆 ~12月までは何もしない
クラフト)日銀に関しては、9月9日の読売新聞に植田総裁のインタビューが掲載されました。それによると、2023年12月~2024年3月の間にマイナス金利を解除する可能性を示唆しています。
飯田)2024年3月までにマイナス金利を解除する可能性がある。
クラフト)日銀はそろそろ、出口戦略というのは少し言い過ぎですが、現状の政策を修正していくということです。2023年7月には「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)」を修正したばかりです。「次はマイナス金利ではないか」と言われていますが、逆に「12月までは何もしない」とも言えます。
飯田)確かにそうですね。
クラフト)アメリカは利上げするかも知れない。日本は12月までは動かないだろうということで、ドル高・円安の状況が少しずつ進んでいます。
神田財務官「あらゆる選択肢を排除せず」
飯田)それもあってか、足元は1ドル=148円80銭になっています。これから1ドル=150円を見にいくのかというところですが、どうご覧になりますか?
クラフト)いま市場は円買い介入を警戒して、ゆるやかに円安へ進んでいるのですが、1~2週間で150円に乗せてくるのではないかと推測しています。
飯田)「通貨の番人」や「通貨マフィア」と呼ばれますが、日本の財務官は現在、神田眞人さんが務めています。「あらゆる手段を取る用意がある」というメッセージを出すなど、いまは「口先介入」を行っていますね。
クラフト)まずは「口先介入」なのですが、大事なポイントとして9月19日、アメリカのイエレン財務長官が為替介入に関して「日本と意思疎通を図っている」と発表しました。
1ドル=150円台で為替介入の可能性は十分にある
クラフト)その後の経過で、日米当局は介入に関して合意しています。ただし条件があり、為替の過度な変動が生じた場合の介入に関して「アメリカ側は容認する」ということなので、いまの動きを見ていると、過度とは言えないのです。
飯田)ジリジリとは動いているけれど、大きく上がったり下がったりはしていないのですね。
クラフト)日米当局者が意思疎通を図ったという面では、介入が近付いているということですが、いまの為替の変動幅では時期尚早だと思います。ただ、これが1日に1円以上、150円台に乗ってくると、介入する可能性は十分にあると思います。
飯田)逆にそのようなニュースを水面下で、「関係者の話によると」という形でジワっと流すことにより、「矛盾するなよ」というメッセージを出しているのですね。
クラフト)これから神田財務官、あるいは日米の財務省による為替介入に関する言及が増えれば、それは「介入が近付いている」というシグナルでもありますので、報道を注意深く見ていきたいと思います。
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