作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴が9月28日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米政府機関の一部閉鎖の恐れが出ている予算案をめぐる米議会の協議難航について解説した。
予算案めぐる議会の協議難航で、米政府機関が一部閉鎖の懸念
アメリカでは10月から始まる2024年度の予算案が議会で成立する目処が立たず、政府機関の一部が10月1日から閉鎖される恐れが一段と高まっている。議会上院では9月26日、交渉時間を確保するため、民主・共和両党が11月17日まで予算の執行を続けるための「つなぎ予算」の案を超党派でまとめた。
飯田)会計年度末が30日に迫っています。議会上院はつなぎ予算案をまとめましたが、問題は下院とも言われています。
青山)下院の共和党ですよね。「アメリカの病気がまた出たか」というところです。予算が成立しないので公務員にお金を払うことができず、政府機関が止まってしまう状態は、クリントン政権やオバマ政権、トランプ政権でもみんな起きました。
飯田)そうですね。
青山)ちなみに私はオバマ政権のとき、ハワイ・真珠湾の米軍司令部を自費で訪ねたことがあります。司令部の道を挟んだ向かい側に駐車場があるのですが、米軍司令部のための駐車場はないので、それは国の駐車場です。そのときは真珠湾の記念施設の駐車場を使おうと思ったのですが、そこが閉鎖されていたため車が止められず、往生したことがありました。
2024年の大統領選に向けて民主・共和の対立が激しくなっているため ~米二大政党制の弱点
青山)なぜこのようなことが起きるのかと言うと、今回は2024年11月の大統領選挙に向けて、民主・共和の対決が激しくなっている影響があります。
飯田)大統領選の影響も。
青山)いまは耳にタコができるくらいアメリカの分断が言われていますが、日本では「アメリカの二大政党制はいい」と言われてきたところがあります。一時期、「政治改革」と称して小沢一郎さんや河野洋平さんも含め、みんなで「やろう、やろう」となった時期がありましたよね。
飯田)ありました。
青山)しかし、二大政党制なので真っ二つに割れてしまっている。外交・防衛で一致しているはずが一致しなくなっており、特にトランプ政権以降では、それが顕著になっています。
日本の「党議拘束」がなく、アメリカの場合、法案を通すときも1人が反対したらできない ~今回がその象徴
青山)アメリカはこの病気を繰り返しているのですが、ますます深刻になっていると感じます。共和党内でさえ、上下両院が割れてしまっているのです。
飯田)共和党のなかでも。
青山)共和党も上院では民主党と一致して、とりあえず11月17日までのつなぎ予算をまとめると決めたのですが、同じ共和党の下院、しかも一部の議員に保守強硬派がおり、その一部の人たちのために何もできないのです。
飯田)一部の議員のために。
青山)何ごともいいことと悪いことの裏返しがあり、日本では党議拘束が存在します。私は党議拘束に従わず、LGBT法案に反対したので処分を受けていますが、アメリカではそのようなものは一切なく、何か法案を通す際は1人ひとりの議員に働きかけをします。
飯田)アメリカの場合は。
青山)普段は民主的なように見えても、このような場合、1人が反対したら進められないのです。「議会制民主主義とはそういうものだったのか?」というような状況になっている。今回はその象徴です。アメリカはときどき国家の機能停止を繰り返しますが、同盟国である日本は余計、それを冷静に考えないといけません。岸田政権はあまりにもアメリカの言うことを聞きすぎだと思います。
クリントン政権から繰り返される米政府閉鎖 ~慣れてしまっている一面も
飯田)政府機関の閉鎖において、どんな影響が出るのかという内容が記事になっています。バイデン大統領が「このままでは米兵が無給になってしまう」とX(旧ツイッター)に書き込んだ、という報道まで出ていました。そうなると日本の安全保障にも影響しますよね。
青山)ただ、クリントン政権からずっと繰り返しているので、嫌な言い方ですが経験豊富なのです。
飯田)慣れている。
青山)バイデン大統領の言い方も、2024年の大統領選挙で再選を目指していますから、いまも労働組合側について一緒に「ストライキ賛成だ」と言っています。その場所に今度はトランプさんが乗り込んで演説されるそうですが、そういう最中なのです。
飯田)大統領選へ向けての。
青山)アメリカはそもそも国家元首を大統領が兼務していますよね。為政者と元首が1人の人間で、その人を誰にするか決めるというのは、日本では想像できないくらいのことなのです。
飯田)大統領を決めることは。
青山)日本だと、例えば羽田政権や宇野政権が2ヵ月~3ヵ月で潰れても、上に揺るがない権威、国の象徴として天皇陛下がいらっしゃるので、社会は安定しています。しかし、アメリカにはそれが一切ないので、大統領選挙で大激突した場合、「外交・安全保障だけは大丈夫」という状況ではないのです。むしろそこに影響が出てきます。
何でも選挙で選ぶと選挙目的になってしまう ~戦後アメリカから持ち込まれた選挙
青山)バイデン大統領の言い方は、「できることなら安全保障に響くから早くやめよう」というように受け取りたいのですが、実態は「安全保障だってダメになるのだから、さっさと共和党の下院は言うことを聞け」という脅しと、「共和党はこんなに酷いのだ」と大統領選挙に向けて言っていることがバレバレなのです。
飯田)自分のアピールもある。
青山)これも民主主義のコストですよね。何でも選挙で決めるから「選挙、選挙」になってしまう。日本は戦前において、何もかも悪かったわけではありません。何でも選挙で選ぶと選挙目的になってしまうので、知事は官選だったのです。
飯田)戦前の日本は。
青山)沖縄戦の際、最後まで沖縄県民のために命を捧げられた島田知事は官選知事であり、政府が選んだ知事でした。何でもかんでも選挙で決める、小学校の級長選びまですべて選挙というのは、敗戦後にアメリカから持ち込まれたものです。
すべてアメリカに従うのではなく、日本の本来の姿をもう一度考えるべき
青山)そのアメリカはイギリスの真似をしたのであって、「日本の風土や文化とすべて合っているわけではない」ということをしっかりと考えるべきです。
飯田)そうですね。
青山)むしろ世界からは、日本の理念や哲学が求められている。この80年くらいはアメリカ流のやり方で、国連本部もニューヨークにあり、アメリカ中心に動いてきました。
飯田)これまでは。
青山)しかし結局、ウクライナ戦争も止められませんし、武器を供与するだけで中途半端に腰が引けた形しかできない。核の脅威にも向かい合えないことを考えれば、「いい、悪い」ではなく、客観的に日本の本来の姿をもう一度考えるべきだと思います。
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