国民皆保険制度における財源の問題をどう克服するか

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東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が9月26日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。国民皆保険における医療費の財源について解説した。

国民皆保険制度における財源の問題をどう克服するか

※画像はイメージです

年間医療費約1兆円を保険料で5割、税金4割、国民負担1割で賄っている

飯田浩司アナウンサー)国民皆保険は国際的に比較しても素晴らしいものである一方、医療費負担については毎年、金額が増えていると言われます。どれくらいのペースで増えているのですか?

尾﨑)毎年、1兆円ぐらい増えています。

飯田)保険料で全部を賄えているのでしょうか?

尾﨑)実際には保険料が5割ぐらいですね。足りない分は公費として税金で4割ぐらい負担しており、残りの1割を国民1人ひとりが負担しています。

少子高齢化で現役世代が高齢者の医療費を支えることが難しくなってきている

飯田)いまは保険料が5割ということですが、この保険料の分は、基本的に現役世代が払っているのでしょうか?

尾﨑)75歳以上の後期高齢者は2割負担になりますが、広域連合が保険を扱う組合のような形になっていて、そこに現役世代の健康保険組合などから出ているわけです。全体の構造としては、働いている世代の若い方が高齢者を支える形になります。

飯田)昔は9人で1人を支える神輿型などと言われましたが、現在は3人で1人の騎馬戦型になり、2050年には1.3人で1人を支える肩車型になると言われています。現役世代からすると厳しいですよね。

尾﨑)厳しいですね。

国民皆保険制度における財源の問題をどう克服するか

新行市佳アナウンサー、尾﨑治夫氏、飯田浩司アナウンサー

財源を消費税から

新行市佳アナウンサー)財源については、どのような議論が行われているのでしょうか?

尾﨑)いままでは医療費を増やさないように、減らせるところがないかという議論が大きかったわけです。診療報酬全体を抑えたり、薬剤費が多ければ薬価を下げることが検討されてきました。

飯田)診療報酬や薬価を下げて。

尾﨑)また、高齢者の方の負担は原則1割だったものを、後期高齢者の場合は2割にするなど、負担を増やしました。しかし、これ以上の財源を増やせるかと言うと、限界にきている。

飯田)現在の仕組みでは。

尾﨑)国民が等しく必要な医療を受けられる制度を維持するためには、新しい財源を増やさなければいけない。私は消費税が大事なのではないかと思います。

飯田)消費税。

尾﨑)所得税や法人税は景気が悪いと落ち込んでしまいます。しかし、消費税は安定的な収入になる。それからある意味、平等なのですよね。

飯田)平等。

尾﨑)基本的な生活必需品・食料品などに対する消費税は安くするなどの検討は必要ですが、基本的には消費税を上げ、それをすべて医療費などの財源にする。ここが大事なのです。

飯田)すべてというところ。

尾﨑)いままで消費税を上げるときに、例えば民主党の時代でも5%上がると、4%が借金返済に使われていたのです。そうすると現実には、1%しか医療費などに使われなかった。国民としては5%も上げていろいろ負担してきたのに、自分たちに帰ってくるものがほとんどないわけです。だから「消費税を上げても、取られるだけではないか」というイメージが強い。

消費税を財源とする場合はその理由を国が伝えるべき

飯田)いままで「医療・介護のために消費税を上げる」と言っていたけれど、気付いたら保険料も上がっている状況があります。「現役の負担がどんどん増えているのではないか」というところが不満にもなるし、社会全体としてよくないですよね。

尾﨑)ですから、はっきり「消費税はこういうもので、こういうメリットがある」と国が伝えるべきだと思います。

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