東京都医師会理事で「目々澤医院」院長の目々澤肇氏が10月14日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。頭痛に関しての新しい医療、また医療のIT化について語った。
月1回の注射で片頭痛発作の発症を抑制できるCGRP関連薬
飯田浩司アナウンサー)頭痛に関して、新しい医療は出てきているのですか?
目々澤)これまで、片頭痛のための決定的な予防薬はなく、てんかんの薬や抗うつ剤、循環器系の薬を流用していました。要するに、片頭痛に対して「効果がある」とエビデンスが認められたものが予防薬として使われていたのです。
飯田)決定的な予防薬ではなく。
目々澤)ところが去年(2021年)から、CGRP関連薬というものができました。注射を月に1回打つものですが、これが効くのです。
飯田)CGRP関連薬。
目々澤)いままでは月に10回以上、頓服の痛み止めであるトリプタン剤を飲んで誤魔化していたというような人が、月に1回CGRP関連薬を打つことによって、薬を使う回数が大きく減ったのです。商品名では「エムガルティ」、「アジョビ」、「アイモビーグ」と呼ばれる3種類があります。
飯田)3種あるのですね。
目々澤)人によって「どれが合うか」というのは微妙なところがあります。1つの種類が合わなかったから他もダメだというわけではありません。もし悩んでいる人がいたら、きちんと頭痛専門医に受診して相談なさるといいと思います。この注射が打てるドクターは限られます。
新行市佳アナウンサー)そうなのですか?
目々澤)それなりの専門医でないと打ってはいけないことになっています。そして、在庫の保存にもお金がかなりかかるのです。うちの診療所の場合は、冷蔵庫のいちばん下の段がこの薬で埋まっていますが、患者さんが予約なしでいつ来ても大丈夫なように、ある程度の数を保存して用意してあります。
日本の医療IT化の現状
飯田)先生は電子カルテの普及など、医療のIT化について訴えられていますが、現状はいかがですか?
目々澤)いま、我々のいちばんの問題は、マイナンバーカードを使った健康保険証です。
飯田)マイナンバーカードを使った。
目々澤)通常は健康保険証がカード、あるいは紙に印刷されていますが、すべてマイナンバーカードに移行される予定です。そのためには、まず「医療機関にマイナンバーカードを読み取る機械を入れさせよう」というオンライン資格確認の義務化があります。
飯田)医療機関が機械を導入しなければならない。
目々澤)療養担当規則……「療担規則」と我々は厚生労働省の方から呼ぶように言われていますけれども、これを入れないと療担規則違反になります。「懇切丁寧な指導を繰り返すことになります」などと厚生労働省の方が説明会で言っていました。この件では怒っていらっしゃる先生もいます。
飯田)機械を入れなければならないということに。
目々澤)ただ、うちの診療所のように既に入れているところであれば、それなりに便利なのです。マイナンバーカードを患者さんが持ってこなくても、既にある情報が正しいかどうかを確かめることができます。
飯田)マイナンバーをどう使っていくかが議論されました。諸外国のように「感染症対策でもうまく使えるのではないか」ということも言われましたが、なかなか日本ではうまくいかないところがある。
目々澤)新型コロナに関しては、「失敗だ」と言われて止まってしまったCOCOAや、我々が症状を記入していたHER-SYS、患者さんが自分で症状の経過を記入するMy HER-SYSがあります。それらをひとつながりにして、その先に厚生労働省が最近言い出した「標準的電子カルテ」につながればいいのではないでしょうか。
飯田)電子カルテにつなげる。
目々澤)私は自民党のプロジェクトチームのヒアリングにも行って、「医療記録をつくってください」とお願いしているのですが、国がやろうとしているのは3文書・6情報の限られたデータをまず共通化しようということです。
飯田)3文書・6情報のデータを。
目々澤)でも目標が達成されたら、それを「標準的電子カルテ」と言われてしまいそうで怖いなと思います。そんなことよりも、ワクチン接種記録や患者さんの日々の診療記録などをひとつながりにして、記録で見られるようにすることが大切だと思います。
飯田)ワクチン接種記録や診療記録などが見られるようにする。
目々澤)それはスウェーデンでは当たり前になっています。そちらの方をきちんとやって欲しいので、いろいろなところでお願いしているわけです。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます