鶏レバーやささみに潜む「ギラン・バレー症候群」発症のリスク
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医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が10月4日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。カンピロバクターによる食中毒について解説した。
食中毒の原因として最も多いのは「カンピロバクター」によるもの
新行市佳アナウンサー)年間で食中毒の発生件数がいちばん多い時期は9月~10月にかけての秋で、「カンピロバクター」によるものが最も多いということです。「カンピロバクター」というのはあまり聞き慣れない名前ですけれども。
森田)カンピロバクターは細菌です。これによる食中毒が真夏と秋に多いのです。実際は季節問わずに発生しています。
新行)季節問わずに。
森田)体に細菌が入ってから1日~7日で下痢や腹痛、発熱、嘔吐などの症状が出ると考えられています。少量の菌でも発症しますので、加熱不良の食品を提供した場合には、食中毒事故につながりやすいと考えられています。
鶏レバーやささみなどから感染 ~生の鶏肉を飲食店が提供することは法律で規制されていない
新行)何を食べてカンピロバクターによる食中毒になる場合が多いのでしょうか?
森田)主な原因食品は、生や加熱不足の鶏肉料理と考えられています。また、それらを調理したまな板や包丁などに付着した細菌によって、他の食材に二次汚染が生じることもあります。
新行)二次汚染が起こることも。
森田)具体的な食べ物としては、鶏レバーやささみなどの刺身……とりわさなどがそうですね。鶏肉を生で食べる食文化は日本には根強くあります。飲食店で提供することは、法律では規制されていません。ただし、厚生労働省もカンピロバクターによる食中毒を予防するため、「適切に取り扱い、十分な加熱処理をして安全に提供しましょう」と呼びかけています。
新行)法律では規制されていないのですね。
森田)食文化を変えるのは難しいことと、もう1つはカンピロバクターによる食中毒の多くは、命に関わることなく治る場合が多いからではないかと思われます。
カンピロバクターに感染後、ギラン・バレー症候群が発症し、死に至る場合も ~鶏肉は生で食べない方がいい
森田)しかし、カンピロバクターに感染したあと、1~2%の患者さんに手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などの症状が出る「ギラン・バレー症候群」を引き起こすことがわかっています。カンピロバクターという細菌と戦う際に体にできた免疫物質が、神経組織を傷害させることが原因と考えられ、重篤な例では、呼吸に関わる筋肉が麻痺して死亡する例も報告されています。
新行)症状が重篤化することもあり得るのですね。
森田)そうですね。私の立場からすると、「鶏肉は生で食べない方がいい」と考えます。厚生労働科学研究による報告では、鶏肉にカンピロバクターが見つかる割合が6割を超えているということです。
新行)6割を超えるのですか。
森田)「新鮮だからといって安全ではない」と言われています。厚生労働省は、生や半生状態で提供するお店に対して、「鶏肉や鶏肉製品を扱っている場合、メニューを見直しましょう」と広報しています。今後、重症例が報告されるようになった場合には、法律で鶏の生肉を食べること自体が規制される可能性もあるのではないでしょうか。
生の鶏肉や牛や豚のレバーを調理したあとは手をよく洗い、調理器具も十分に洗浄する
新行)お店で鶏肉を食べたり、自宅で調理する機会もありますが、カンピロバクターによる食中毒を予防するにはどうしたらいいですか?
森田)生、あるいは加熱不十分な鶏肉や鶏レバーは食べないということですね。十分な加熱……中心部を75度以上で1分間以上加熱するといいでしょう。
新行)十分に加熱する。
森田)生の鶏肉や牛や豚のレバーなどを調理したあとは、手をよく洗う。また、調理器具を十分に洗浄することが大事です。生肉を保存する、あるいは調理する際には、他の食材、野菜や果物などとの接触を防ぐようにしてください。特に抵抗力が衰えているお年寄り、小さなお子さんは生の鶏肉に気を付けていただきたいと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます