クレームは「アップグレード要求系」と「無料要求系」の2種類 専門家が「カスタマーハラスメント問題」を解説

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ホテル評論家の瀧澤信秋氏が10月4日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。ホテル業界におけるカスタマーハラスメント問題について解説した。

クレームは「アップグレード要求系」と「無料要求系」の2種類 専門家が「カスタマーハラスメント問題」を解説

※画像はイメージです

ホテル業界のカスハラ問題

2023年6月に成立した改正旅館業法により、宿泊拒否を原則禁止する旅館業法で、例外として客が理不尽な要求をする「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を行った場合は宿泊を断れるようになる。年内の施行を予定しているが、施行されることでどのような変化が起こるのか、カスタマーハラスメントの実態はどういったものなのか。

新行)ホテルや旅館におけるカスタマーハラスメントですが、これまでどういった問題がありましたか?

瀧澤)今回、施行に向けて議論されていますが、私自身はホテル評論家10年目ですけれど、10年前からこの件を取材しており、記事にもしました。

クレームに2つある「アップグレード要求系」と「無料要求系」

瀧澤)業界では「コンプレイン」という言葉が苦情という意味で使われますが、威圧・恫喝がセットになっています。また、2つの要求系があり、1つは「アップグレード要求系」です。

新行)アップグレード要求系。

瀧澤)何か不満があると「部屋をアップグレードしろ」と主張するものです。もう1つは「無料要求系」で、「無料にしろ」と主張します。

新行)無料要求系。

瀧澤)先日、無料系について実際に聞いた話なのですが、夫婦で訪れたお客さんがいて、文句を言われたそうです。事務室に通して話を聞き、「すみません、すみません」と謝って、最後には仕方がないので「では無料にします」と言ったら、夫婦で顔を見合わせて「やったぜ」という感じだったそうです。

インバウンド活況から増えたクレームも

ジャーナリスト・佐々木俊尚)昭和の時代はいまほど接客ができておらず、逆にカスハラのような問題は少なかった気がします。「接客がよくなりすぎてカスハラが増えた」というような逆相関もあるのでしょうか?

瀧澤)「お客様は神様」という言葉がありますが、その意識はずっとこの業界にあり、根底には「お客様が大事だ」という思いができているのかも知れません。

佐々木)カスハラかどうかを見極めるのは難しくないですか? どこから先がカスハラで、どこまでが許容されるクレームなのでしょうか。

瀧澤)「苦情は大事だ」という認識が業界内にはあります。「苦情から新しいサービスが生まれる」こともあるのです。ただ、インバウンド活況もあり、多種多様な文化を持つ方々が増えることで、トラブルも増えてきた傾向は1つあるでしょうね。

インバウンドによって多様な宿泊客になった

佐々木)海外からのインバウンドのお客さんは、クレームの内容が違うのでしょうか? 日本人との違いはありますか?

瀧澤)先日取材してあった例は、アメリカ人のお客さんでしたが、2人の予約だったのです。しかし、チェックイン時にはその人たちのお子さんもいて、3人が来ていました。

新行)お子さんがいて。

瀧澤)その追加料金を「払う、払わない」で揉めたのです。結局、そのあと部屋に入ってから「部屋が臭い」などいろいろなことを言い出し、追加料金に関して最後まで文句を言い続けていたそうです。

新行)最後まで文句を言っていた。

瀧澤)こういうことは、日本人の場合でも起こる話です。ただ、全体的に観光客が増えてきたのと、多様なお客さんが来ていることは、1つ根底にはあるのかなと思います。

改正旅館業法

新行)改正旅館業法ではカスタマーハラスメントがあった場合、宿泊を断れるようになります。具体的にはどんな状況がありますか?

瀧澤)まず不当な要求ですね。対面・電話・メールでの不当な要求や、アップグレード要求、過剰なサービスを要求する。

新行)過剰なサービスを要求する。

瀧澤)また、特定の者に対して出勤させない……あるスタッフに対して「この人を出勤させるな」というようなことを求める。あとは土下座等の社会的相当性を欠く方法で謝罪を求める行為などが挙げられています。文言を見ると、そのような行為を「繰り返した場合」と書いてあります。

障害者への配慮

瀧澤)一方、障害者の方への配慮として「障害があることを理由に宿泊を拒否できない」と改正旅館業法にも明記されています。

新行)障害を持つ方への配慮。

瀧澤)過去にハンセン病の元患者さんたちが宿泊を拒否される問題がありました。「差別を助長する」ということで、今回のたたき台においても留意される必要があると思います。

新行)こういった流れがあり、実際にホテル業界に従事する方々からはどんな声がありましたか?

瀧澤)実際、カスハラで心身を病んでしまい、ホテル業を辞める方もいらっしゃいます。宿泊施設はステイする場所であり、宿泊者と従業員が一定時間、同じ場所にいます。当然、公衆衛生上、保安上のルールを守る必要があるということです。

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