「減税発言」が起こるのは「解散」を意識するからか
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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が10月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆院の解散時期について解説した。
公明党・北側副代表「所得税の定額減税がふさわしい」 ~選挙を意識しての発言か
飯田)公明党の北側一雄副代表が10月12日の会見で、経済対策について「所得税の定額減税がふさわしい」と発言しました。公明党からは今週、「給付付きの減税」という意見も出ています。こういうものが出てくるというのは、やはり……。
松井)いよいよ「選挙も意識している」ということでしょうが、永田町の友人たちによると、「選挙という雰囲気はない」と言います。
飯田)いわゆる解散風のようなものは……。
松井)風は吹いていないと言うのです。ただ、岸田さんにとっては、2024年の総裁選前の解散を考えているとしたら、「できないのではないか」と言う人も多いですよね。やっても大丈夫なように経済対策は万全を期すると。木原さんも党務に戻られました。
飯田)木原誠二さん。
松井)インターネット番組でかなり踏み込んだ発言をされています。あの辺りはどこまで岸田さんと連携プレーしているのか。また、ある番組では小川淳也さんが森山裕さんの(税に関する)発言に対し、テレビ番組で「このような政治はどうなのか」と安倍さんの名前を出して言っていたり、少しきな臭くなってきましたね。
消費税を引き上げた際の解散例
飯田)岸田さんの周辺が「減税」などと言い出す。税の使い道を変えるのは、やはり「代表なくして課税なし」ですから、「選挙だ」という話になる。
松井)森山さんが言っていることは正しくて、税をいじるなら、やはり「民意を」という話なのです。特に消費税を引き上げるときは解散して、それも含めて信を問う。かつての民主党はそれで下野したことがありました。
飯田)そうですね。
松井)安倍さんは消費税引き上げのタイミングをめぐって、解散をある種上手に使われた。かつては所得税減税も、1998年に橋本龍太郎さんが参議院選挙のときに、所得税減税をめぐって責任を問われたような形になったのです。
飯田)自民党が破れて。
松井)そういうことも思い出されるので、もしかすると、そういう議論になっていくような気もします。
基幹税の減税・増税に踏み切るときは、「信を問う」のが永田町の慣習
松井)本来は、これを議論しているからと言って、「必ずしも解散しなくてもいい」という話ではあると思います。
飯田)解散しなくてはいけないという話ではない。
松井)しかるべきタイミングで民意を問うということです。税制改正は毎年行われていますが、そのたびに解散しているかと言うと、そうではありません。ただ、大きな所得税、基幹税の減税や増税に踏み切るときは、「信を問う」というのが永田町の従来の慣習だと思います。
飯田)基幹税の減税や増税の場合は。
「選挙で勝つために国民の歓心を買う」ために政局が動くのはどうか
松井)いずれにしても、かつて「悪夢の民主党政権」と言われた時代は、税収が38兆円くらいしかなく、「やりたいこともできない」という状況でした。しかし、いまはこれだけ税収が上振れしているのです。
飯田)そうですね。
松井)インフレ傾向も税収の上振れに貢献しています。自民党の方々から「税収の増収分をいかに国民に配当するか」という議論が出るのは理解しますが、選挙前に選挙のネタとして「補助金を、交付金を、減税を」という話が出てくると、本当に大丈夫だろうかと思います。
飯田)それでいいのかと。
松井)岸田さんは「防衛財源としての増税」を示して支持率が落ちたので、それを挽回したい。また、宗教法人法についてもそうですが、「選挙で勝つために国民の歓心を買う」という方向で政局が動いているとしたら、それはどうなのだろうと思うわけです。
将来的に活きるお金を使うべき
松井)ガソリン補助金も期限が延長になったではないですか。これまでに約5兆円という金額を使っているわけです。今年(2023年)は日本人のノーベル賞受賞者はいなかったけれど、約5兆円あったら、科学技術や人材育成への投資を行うべきではないでしょうか。
飯田)将来のために。
松井)将来世代のために仕事をしなければいけないのに、とりあえず現在の支持率を考えながら、いろいろな政策判断を短期的にせざるを得なくなっている、この永田町の構造はどうなのでしょうか。それに対して野党も、別の意見を提示できているわけではありません。
飯田)野党も。
松井)同じ土俵に乗っているのです。例えば安倍さんが消費税を引き延ばしたときも、野党のどこからも異論はなかった。結局、ばら撒き合戦のような話になってしまいます。
飯田)ばら撒き合戦。
松井)国民経済は大変ですし、財務省のようなことだけを言っていたら世の中が回らないのは事実ですが、本質的に「何にお金を使うか」をもう少し考えないと、ガソリンもそうですが、お金を燃やして終わりではいけないのです。
飯田)活きたお金にしなくてはいけないのに。
松井)それをしっかりと考えて欲しいです。
アジア通貨危機を経て国策として音楽や映画に取り組んだ韓国 ~同じような転換点が日本にも必要
飯田)「異次元の少子化対策」という看板はあるけれど、「肉付けはどうなのか」というところですよね。
松井)いま30代くらいの世代の人たちが、20年後、「あのお金が活きてきたよね」と、「あそこをボトムにして日本経済が回復した」と言われるようにしなければいけないと思います。先日、授業のあとに韓国人の留学生が来て、「自分の両親は1998年のアジア通貨危機のときに指輪も供出させられた」と話していました。当時はIMF(国際通貨基金)の管理になっていたのです。
飯田)韓国はそうですね。
松井)そこから韓国は国策として、音楽(K-POP)や映画など、「芸術振興的なソフトを開発する」という方向に取り組み出した。そういう転換点が日本にも必要なのではないでしょうか。
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