ジャーナリストの須田慎一郎と中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が10月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。パレスチナ情勢について解説した。
イスラエル邦人退避、チャーター機出国に1人3万円請求
飯田)松野官房長官は10月16日、イスラエルからチャーター機で出国した搭乗者に1人3万円の運賃を請求したことに対し、「適切だった」とコメントを出しました。イスラエルの情勢も含めて、どうご覧になりますか?
パレスチナ自治区を無政府状態にしないためにもハマスは残さざるを得ない
須田)よくわからないのは、イスラエルが最終的なゴールをどこに置いているのかということです。今回の件は、引き金はハマスが引いたのですが、ハマスを取り除いたとして、あるいは交渉相手と認めなかったとして、パレスチナ自治政府に交渉相手はいるのか、当事者は存在するのかということになります。
飯田)パレスチナ自治政府に。
須田)イスラエルはその辺りのジレンマに陥っているのだと思います。ハマスを消滅させてしまうと、無政府状態になってしまう。そのため「残さざるを得ない」という声がイスラエルからも上がっているのです。
飯田)ヨルダン川西岸地区はファタハが治めていると言われていますが、そちらにはどのような力があるのかというところですか?
須田)ファタハにはほとんど影響力はありません。住民、市民からほとんど支持を得ておらず、正当性もないと思います。
ハマスの非道な行為に対し、イスラエルが自衛を含めて攻撃することに大義はある
飯田)この辺りは報じる方も難しいですよね。
野村)難しいですね。まず絶対に押さえなくてはいけないのは、ハマスが今回、残虐非道なテロ行為を行っているという事実です。彼らの行為に対し、イスラエルが自衛を含めて攻撃すること自体には一応、大義があります。
パレスチナを分断させるためにハマスを利用してきたイスラエル ~ガザにおけるハマスとファタハの対立
野村)ただ実際のところ、これまでイスラエルがハマスという集団を「どう扱ってきたのか」という問題もあります。イスラエル自身がパレスチナ勢力を分断させるために、ハマスを利用してきた部分もあるわけです。そのような経緯があるからこそ、ファタハが勢力を失っているような状態が起きている。
飯田)ハマスに比べて。
野村)内部で喧嘩させてきた部分もあるなかで、現状をどう評価するかは非常に難しいです。
イスラエルによる掃討作戦が行われればパレスチナ人がその被害に遭い、国際社会から今度はイスラエルが非難される
野村)ガザ地区の人口は約222万人ですが、そこにハマスは数万人しかいないわけです。イスラエル側による掃討作戦が行われたら、ほとんどのパレスチナ人、民間人が被害に遭うことになります。そうなれば、今度は国際社会から批判が出るでしょう。
飯田)イスラエルに対して。
野村)イスラエルはそれをどう収めていくのか。「イスラエルが何を考えているのか」がわからないと、このニュースを捉えきれないのではないでしょうか。
中東全域の紛争に拡大することをどう止めるか
飯田)他方でネタニヤフ政権は、右派政党と宗教政党との連立政権であることから、穏健な方向へ舵を切れない可能性があるのでしょうか?
須田)ネタニヤフ政権は今年(2023年)に入って発足しましたが、連立政権を組むときに、極右とも組んでしまったのです。それがヨルダン川西岸でやりたい放題やってきたという経緯もあり、どのように対応していくのかという問題が残っていると思います。
野村)気になるのはイランです。中東のなかには、イスラエルとサウジアラビアが手を結ぶのを嫌っている人たちもいて、その人たちが陰で仕掛けている可能性もあります。そうなると中東全域での紛争になる危険性もありますので、それをどう止めるかが重要だと思いますね。
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