数量政策学者の高橋洋一が11月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理の経済対策について解説した。
宮沢税調会長のインタビュー
飯田)各紙に宮沢税調会長のインタビューが載っていますが、所得減税の期間については「1年だ」と明言しています。また、防衛増税の時期や手法に関しても、法人・所得・たばこの3税を「一体として処理すればいい」と。岸田さん自身は「減税」を言っていて、「増税していないではないか」などと言いますが、これを見ていると、周りは増税と引き締めが好きな人が多いですね。
財源が50兆円あるのだから、減税ではなく給付金でもいい ~早く実行するべき
高橋)「岸田さんは頑張った」など、いろいろ言われるけれど、それなら「今国会で減税を12月にやればよかったのに」と思います。(期間が)1年だけなら別に減税にこだわる必要はなく、給付金でもいいのです。財源は50兆円もあるのだから、なぜこんなに渋っているのかわかりません。
飯田)50兆円の財源。
高橋)過去2年分の補正予算からの税収の上振れと、今年度の予想できる上振れ。また、過年度分の経済対策の余り。それに外為特会を合わせると50兆円ぐらいです。
飯田)50兆円もあるのですか? GDPの1割ぐらいですね。
高橋)外為特会だけで含み益が30兆円ほどありますからね。円安だと法人税収も所得税収も上がるし、徐々に物価も上がっているので、消費税収も上がります。税収増と持っている含み益だけで50兆円です。なぜ、これを吐き出さないのか不思議ですね。
税収の上振れた部分を還元 ~過去2年分の税収であれば、3~5兆円ぐらいしかない
飯田)岸田さんは、まさに「税収の上振れた部分を還元する」と言っていますが。
高橋)税収でやると言っても、来年度に処理するわけです。そうすると過去2年分だけで、今年度分はあとの処理になるはずです。過去2年分であれば、3~5兆円ぐらいしかありません。そういう意味では、所得税の減税も大したことがなくなるのですよね。財源をどう見るかによってだいぶ違うのです。
「いつまで」に「いくらやるか」がポイント
高橋)私は「いつまでに」、「いくらやるか」の2つしか決めません。経済対策などを見ると、その他大勢の細かい話ばかりです。どうもマスコミの人たちは、そういう話が好きなのですよね。はっきり言って、減税でも補助金でも経済効果はほとんど一緒です。
飯田)市中に出て行き、その分を何かに使ってもらえばいい。
高橋)私は「何がいいか、悪いか」という金の奪い合いに関わるのが嫌だったから、全体の数字しか言いません。
飯田)最近の経済対策だと真水として、予算としてはいろいろと積んであるのですが、それが基金になってしまうことが多い。結局、「市中に出ないと有効需要にならない」という指摘があります。
高橋)補助金系だとそういう形になり、有効需要にならないのは確かです。減税系にした方が100%執行できます。しかし、補助金系も最終消費者に直接届くものは執行率100%になります。
減税、もしくは最終消費者への給付金にすればいい
高橋)基金系や、業者への補助金系にすると、執行率は悪くなるのですよね。それなら全部減税にするか、最終消費者への給付金にすればいい。今回の対策を見ると、ほとんど事業者への補助金系ですよね。9割くらいがそうだと思うので、また執行がうまくいかず、積み回されるパターンが予想されます。
飯田)それがまた次の補正に吸収されたりして、永遠に表に出てこない。
高橋)経済対策をすごく打っているように見えるけれど、実際には打っていないという形になる。既存経費の振り替えという話になるから。全部一気に消化したいのであれば、減税なり、最終消費者への給付金にすればいいのです。
飯田)そうすれば可処分所得が直接伸びることになる。
高橋)最終消費者に回せば、「使い切れない」などと悩むことはまったくありません。
飯田)ただ、減税しようとすると法律改正が必要になりますか?
高橋)それは補正予算も一緒ですけれどね。定率減税も定額減税も過去に行った例があるから、すごく簡単な税制改正ですよ。みんなすぐ「法律改正があるから」と言うけれど、予算だって国会形式で全く一緒です。
飯田)確かに法案なり予算なりを提出して、それを審議してもらう意味では一緒ですね。
高橋)技術的に難しいことはありますが、今回のような定率減税・定額減税などはすごく簡単です。
政労使会議を11月中に開催する方向で調整
飯田)最近は賃上げの話もありますが、政労使会議を11月中に開催する方向で調整しているようです。
高橋)これはセレモニーですからね。需給ギャップをきちんと埋めていけば、失業率がすごく下がって人手不足感が出てくるから、企業もすぐに賃上げします。政策を出すと、あとは儀式のような話になるから、自ずと簡単に進むのです。需給ギャップさえ真水で埋めておけば、ものすごく楽です。
飯田)逆に言えば、需給ギャップが埋まらないと賃上げしない。
高橋)産業界の人であればマクロの話をしても、自分の産業に照らし合わせて、いま本当に「埋まっているかどうか」がわかるのですよね。要するに「需給ギャップが自分の業界で埋まっていない」と思ったら、賃上げしませんよ。
飯田)「まだまだ人がいるから、これでいい」と。
高橋)それでおしまいです。
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