キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でジャーナリストの峯村健司が11月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国が原料供給する鎮痛剤「フェンタニル」について解説した。
アメリカで若者を中心に過剰摂取が問題になっている「フェンタニル」
飯田)峯村さんが夕刊フジで連載する「ニュース裏表」のなかで、『“現代版アヘン戦争”米中麻薬戦争』という記事を書かれています。フェンタニルは鎮痛薬なのですか?
峯村)もともとは末期がんなどの患者の痛みを和らげるための医療品です。ところが、鎮静効果が通常の覚醒剤に比べて約50倍あり、薬としても効くのですが、ドラッグとしても人気が出ているのです。
飯田)モルヒネの数十倍の強度があると。
峯村)100倍ぐらいと言われています。
飯田)使用目的を逸脱し、ドラッグとして使われてしまっている。手に入りやすいのですか?
峯村)手に入りやすくなっています。
物価上昇によって生活必需品を買えない人たちがドロップアウトし、ホームレスが増えているアメリカ
峯村)私がいつも定点観測している地域がいくつかあるのですが、そのなかの1つが、ニューヨークのやや北東部にあるイースト・ハーレムです。ハーバードにいた2013年から、(アメリカへ)行くたびにここに行きます。今回訪れて衝撃的だったのが、1年前に比べてホームレスが急増していたことでした。首都、ワシントン中心部でのホームレスは増えていました。
飯田)ワシントンですか。
峯村)首都ワシントンは公園がたくさんある、きれいな街です。その公園がほとんどテントで占拠されているような状況で、ワシントン市長も非常事態宣言を出すぐらいの勢いです。私が特派員を務めていた5年前には、これほどはおらず、散見する程度でした。いま、「アメリカの景気はいい」というイメージだと思いますが。
飯田)そうですね。
峯村)確かに景気はいいのですが、物価が8%くらいに上がっていたではないですか。そうすると、生活必需品を買えない人たちがドロップアウトしてしまたのでしょう。
フェンタニル常用者が朦朧と彷徨っている
峯村)特にニューヨークで感じたのは、下を向いてうな垂れている人がかなりいたことです。フィラデルフィアなどには、「ゾンビタウン」と呼ばれている場所もあります。要は全身が脱力してしまって、朦朧と彷徨ってゾンビのようになってしまうのです。
飯田)原因は薬物なのですか?
峯村)なかでもフェンタニルの影響が大きいと言われています。
フェンタニルの原料を供給する中国 ~「現代版アヘン戦争」とも言える状況
飯田)薬物依存はアメリカ国内の社会問題だというイメージがありますが、中国との結びつきは何なのですか?
峯村)ここは慎重に話をしなくてはいけないのですが、もちろんアメリカでは昔から薬物がまん延していました。フェンタニルは、メキシコのマフィアなどがメキシコ国境などから密輸したものです。その原料のほとんどは中国から来ています。
飯田)原料は中国から。
峯村)メキシコ経由で入ってきているという構図ですが、2018年、当時のトランプ政権の要求を受け、中国政府はフェンタニルの輸出の規制を強めたのです。ところが、2022年に当時のペロシ下院議長が台湾を訪問しました。それに反発した中国サイドが、フェンタニルの規制担当の交渉ルートを閉鎖したのです。それでまたフェンタニルの輸出が増えてしまった。
飯田)なるほど。
峯村)若干飛躍しましたけれど、それがまさに現代版のアヘン戦争ではないかと感じるところです。
飯田)いろいろなフィールドがあるのですね。
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