ガザの病院地下に「ハマス司令部」は本当にあったのか

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ジャーナリストの須田慎一郎が11月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエル軍が地上侵攻を続けるパレスチナ自治区・ガザの状況について解説した。

パレスチナ自治区ガザのシファ病院内で見つかったとされる武器=2023年11月 イスラエル軍が16日公開(公開元による画像処理があります) 写真提供:時事通信

パレスチナ自治区ガザのシファ病院内で見つかったとされる武器=2023年11月 イスラエル軍が16日公開(公開元による画像処理があります) 写真提供:時事通信

イスラエル軍、ガザ地区に侵攻する地上部隊の作戦領域を拡大

パレスチナ自治区ガザで地上侵攻を続けるイスラエル軍は11月18日、地上部隊が作戦領域を拡大したと発表した。またイスラエルのガラント国防相も18日の会見で「我々は地上作戦の第2段階に入った」と述べた。

飯田)「第2段階」に関しては「ガザ南部も」というような報道が出ています。

須田)いままでは北部と南部に分離し、北部の住民たちに南部へ避難するよう促していましたが、イスラエル軍の狙いがハマスの完全殲滅にあるとするならば、やはり南部も例外ではないのだと思います。

ガザの病院地下にハマスの作戦司令部が本当にあったのか ~イスラエルの行動を国際的に監視する必要がある

須田)一方でイスラエル側の発表によれば、病院の地下にハマスの作戦司令部があるという話でしたが、本当に作戦司令部があったのかどうかを含め、検証が必要ではないでしょうか。イスラエル側が発信している情報のすべてが事実とは思えないような状況があります。いまの行動自体が戦争法に合致しているかどうかも疑問なので、国際的に監視していく必要があると思います。

飯田)そもそも、病院への攻撃自体が戦時国際法では禁じられています。ただし病院とされるところが、実は軍事作戦に使われているような場合は仕方ないのですが、攻撃する際には挙証責任があります。世界保健機関(WHO)による調査が各紙に出ていますが、かなりの遺体が見つかり、ガザ最大の病院について「死の領域」になっているとして、残る人々の即時退避の必要性を訴えています。「市民を避けて攻撃していた」というイスラエル軍の主張がどこまで正しかったのか、少なくともWHOはかなり疑問視しながら報告を出しているところがあります。

須田)地下から出てきたとされる武器についても、検証しきれていない状況もあります。

隣国エジプトがパレスチナの難民を受け入れないのはなぜか

須田)南部に対して攻撃が移っていった際は、「なぜ隣国エジプトが難民を受け入れないのか」という政治的な思惑も考えなければならないと思います。

飯田)エジプトが難民を受け入れないのはなぜか。

須田)ハマスの前身であるムスリム同胞団に、エジプト国内が翻弄されてきたという歴史的経緯があるのです。そのような意味では、エジプト側もハマスやパレスチナに寄り添っているわけではありません。それも含めて、パレスチナの住民たちをどのように救済していくのか。「中東情勢は複雑だ」と言いますが、それを1つひとつ紐解いていく必要があると思います。

飯田)バイデン大統領は2国の統治、特にヨルダン川西岸とガザ地区に関しては「パレスチナ自治政府が統治するべきだ」という、原則論に戻るような発言をしたという報道もありました。しかし自治政府の方も、果たして統治能力があるのかどうかは疑問視されています。

須田)中心になっているファタハも腐敗が指摘されていますので、住民たちの支持が得られるかどうか。もちろん、ハマスの政治的指導部はガザ地区にはいないわけです。

飯田)トップは。

須田)海外で安穏な生活を送っているという状況もあります。

日本のパレスチナへの支援が正しかったのかどうかの確認も必要

須田)もう1つやらなければいけないのは、日本もパレスチナに対して相当な額を支援しています。それが適正に自治区の住民たちへ渡っているのかどうか。支援している金が「イスラエルに対するテロ行為に使われていなかったか」というところも見なければいけません。もちろん医薬品や食料など、すべてが不足しているのですが、それらが届いていなかったとしたら、日本政府がしてきたことは正しかったのかどうか……。そこは甚だ疑問だと思います。

「5日間の停戦と人質解放」交渉が大詰めか

飯田)米紙ワシントン・ポストは18日、「5日間の戦闘の休止と引き換えに、ハマスが人質を解放する米国仲介の交渉が合意に近付いている」と報じていますが、実現するのでしょうか?

須田)そこに向け、イスラエルに対してアメリカが強烈なプレッシャーを掛けているのでしょうね。アメリカはイスラエルに金銭的な支援を行っており、大きな影響力を持っています。アメリカがイスラエルをどのように説き伏せるのか。アメリカもこの問題に関しては孤立していますからね。

飯田)国際的に。

須田)パレスチナ問題に関しては、日本とアメリカの考え方が必ずしも一致しているわけではありません。その点ではアメリカの孤立化が際立っていて、「アメリカはどう動くのか」が問われていると思います。バイデン政権にとって、ワシントン・ポストは機関紙のような存在なので、「そのように動いている」という情報発信として受け止めていいと思います。

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