停戦終了 戦闘再開でハマスは同じことを繰り返す

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が12月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエルとハマスによるガザ地区での戦闘について解説した。

渋谷駅前でイスラエル支持の集会が開かれ、ハマスに拉致されたとされる人たちの写真を掲げる人たち=2023年10月11日午後、東京都渋谷区 写真提供:産経新聞社

渋谷駅前でイスラエル支持の集会が開かれ、ハマスに拉致されたとされる人たちの写真を掲げる人たち=2023年10月11日午後、東京都渋谷区 写真提供:産経新聞社

イスラエルとハマス、戦闘休止を1日延長で合意

イスラエルとイスラム組織ハマスによるガザ地区での戦闘休止は、期限ギリギリの11月30日、休止期間を1日延長することで双方が合意したが、12月2日、イスラエルは戦闘を再開した。

市民の犠牲を最小限に留めて南に安全なエリアをつくって欲しいアメリカ ~戦闘再開したいイスラエル

(※編集部注:以下、2023年12月1日 午前6時50分時点の情報)

宮家)イスラエルは「最大でも10日」と前から言っています。今朝CNNを観ていたら、アメリカのブリンケン国務長官が記者会見していました。彼はイスラエルのネタニヤフ首相に対し、「戦闘休止の期限を伸ばして、できるだけ多くの人質を解放させろ」と言っているのですが、イスラエルはやる気満々なのです。

飯田)やる気というのは……。

宮家)戦闘を再開させる気で、準備もしていると思います。アメリカ側は、イスラエルの自衛権の行使については支持すると言いつつ、市民の犠牲は最小限にして、人々が逃げられるよう南の方に安全なエリアをしっかりつくって欲しいなど、いろいろな条件をつけています。アメリカは「本当に支持しているのか」と思うぐらいです。

飯田)注文が多くて。

宮家)つまり、アメリカはアメリカでイスラエルを支持はするけれど、とにかくこれ以上民間人、特に女性や子どもが亡くなることを懸念しています。その意味では、アメリカとイスラエルの間ではものすごいせめぎ合いが起きていて、イスラエルも困っていると思います。ハマスはどうかわかりませんが、どちらでも対応できるよう、柔軟に考えているのではないでしょうか。しかし、おそらく10日以内に、イスラエルは「やらざるを得ない」と思っている。少なくともネタニヤフさんはそう考えている可能性があります。

イスラエルが戦闘再開できないよう国際社会の支持を得ようとするハマス

飯田)ハマスは両面で見ながら、国際世論に訴えかけていく感じですか?

宮家)どちらでもいいのです。人質の全員解放などできるわけがないのですから。ズルズル戦闘のない状態が続いて、イスラエルが戦闘再開できないような状況に追い込む。そのために国際社会の支持を得ようとして、パレスチナの市民を犠牲にしているわけです。でも、イスラエルからすれば、これでもし戦闘再開できなかったら「負け」です。勝てません。

戦闘が再開されれば、人質を前に出し、同じことを繰り返すハマス

宮家)彼らの戦争目的は、いまでもハマスの殲滅です。それができなくなる可能性は十分あり得ると思います。ハマスは、人質解放の取り引きができずに戦闘が再開されたら、また人質や女性・子どもを前に出して、「人間の盾」として使うわけです。

飯田)今回と同じように。

宮家)そうすると再びイスラエルに対する国際的非難が高まり、また戦闘を少し休止する。それが何度も繰り返されたら、亡くなるのはパレスチナの市民です。やりきれませんよ。

飯田)本当にどちらもという感じです。ハマス側も、自分たちで取った人質を自分たちで解放して……。これを「人道的だ」と言うのは、あまりにご都合主義ですよね。

宮家)酷い話です。しかし、ハマスにはこれ以外の戦闘方法がないのです。火力では圧倒的にイスラエルが有利ですから、まともに戦えません。ゲリラ的に戦うとなれば、彼らハマスにとって人命など関係ありません。

飯田)なりふりかまっていられない。

宮家)なりふりかまわずやるでしょうね。それが残念ながら成功しているのが実態です。

イスラエルの最終目的は「ハマスがガザを支配しないようにする」こと

飯田)この先の話ですが、一方でハマスの指導者たちは、ガザ地区にはいないと言われています。カタールなど、いろいろなところにいる。そうなると、現地はイスラエルが戦闘によって獲ったとしても、地下茎のように残ってしまいませんか?

宮家)指導者がカタールにいようがどこにいようが、戦闘員が一網打尽にされたら動けません。昔、パレスチナ解放機構(PLO)がレバノンから追い出された際、結局アラファトはチュニジアに行ったのですが、組織自体は完全に弱体化してしまったわけです。戦闘員がいなければ力にならないからです。

飯田)指導者がどこにいても。

宮家)イスラエルは「そういうことも考えているのかな」という気がしないでもない。イスラエルの目的はハマスの殲滅ですが、殲滅と言っても全員殺すわけではなく、「ハマスがガザを支配しないようにする」という言い方をしています。戦闘員を追放して武装解除させ、指導者たちを追い出す。その結果、ハマスはガザで支配権を確立できなくなる。これがイスラエルのとりあえずの目的だと思います。

領土問題とパレスチナ人の国家ができるかどうかがポイント

飯田)そこを「誰が統治するのか」が問題ですよね。

宮家)どう考えてもうまくいかない。この問題の本質は宗教でも何でもなく、政治です。領土問題と、「パレスチナ人の国家ができるかどうか」がポイントです。その意味では、やはり2国家共存による解決ですよね。パレスチナの独立国家をつくり、パレスチナ人に統治させる。そして、ハマスのような連中はパレスチナ政府が取り締まる。それが本来あるべき姿なのです。それをイスラエルがやってしまうから話がややこしくなる。しかし、イスラエルは絶対に2国家共存をやりたくないのでしょう。特にネタニヤフさんは、パレスチナ全部を併合する気でいますからね。

飯田)少なくともオスロ合意までは戻らなくてはいけないけれど、ということですか?

宮家)戻るような状況にはないかも知れません。それは世界全体にとって不幸なことだと思います。

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