岸田総理が辞めても辞めなくても、今後は「緊縮財政派」の意見が強くなる

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元日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が12月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党内に信頼回復のための新組織の立ち上げを表明した岸田総理について解説した。

自民党の幹部会合に臨む岸田文雄首相=2023年12月25日午後、永田町の党本部 写真提供:産経新聞社

自民党の幹部会合に臨む岸田文雄首相=2023年12月25日午後、永田町の党本部 写真提供:産経新聞社

岸田総理、自民党の信頼回復のため新組織の立ち上げを表明

岸田総理大臣は12月25日、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受け、茂木幹事長ら党幹部と今後の対応を協議した。協議後、総理は記者団に対し、年明けにも自民党の信頼回復に向けた新しい組織の立ち上げを表明。また、松野前官房長官らが東京地検特捜部の任意の事情聴取を受けたことに関して、「自民党の信頼回復のために全力で取り組まなければならないと強く感じている」と述べるに留めた。

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岸田総理)年明け、できるだけ早い時期に党の信頼回復のための組織を立ち上げるなど、毅然とした対応を取っていくことを確認いたしました。党の信頼回復のために全力で取り組まなければならないと、強く感じております。

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片岡)今回の問題は、政治資金パーティーから出てくる上がり分の目標の超過を、出と入り両面においてしっかり記載していなかったことです。それがある意味、裏金のような形で使われていたのが問題であり、直接的に正すようなことを行えばいいと思います。

議員の政策能力に伴う形で収支を明らかにして、政治活動が円滑に進むような体制に

飯田)記載漏れに関して、「記載していればどうなったのか」と考えると、そのお金は政治資金として使えたのではないかという話もあります。ただ、全体としては政治資金規正法を改正する方向へ議論が進んでいますが。

片岡)本質的には、政治家個人がそれぞれの議員の政策能力に伴う形で、献金する人はきちんと献金でき、しっかり収支も明らかにする。それで政治活動が円滑に進むような体制になってくれたらいいなと思います。

これを機に使途不明金の問題も前進させるべき

飯田)現在の政治資金の調達方法は、個人献金に関してはできるけれど、金額がかなり絞られています。

片岡)限定されており、自民党なら自民党全体というような色彩が強いと思います。そうなると結果的に差がつかない状況になるので、みんなで一生懸命汗をかいてパーティー券を売り、その上がり分を分配して色をつけるような方法が常態化しやすいのでしょう。全部を国費で対応するような扱いをし過ぎると、一方で弊害が生まれるのだと思います。

飯田)かつて政治改革のなかで、政治資金の調達は平準化され、基本的に税金で行うことになりました。政党助成金や政務活動費などで賄う。確かに入りとしては一定金額が入る形になり、政策を一生懸命してもしなくても同じお金が入ってくる。ある意味での共産主義的な考え方になってしまいましたね。

片岡)そうですね。他にも文通費など、使途不明金のようなものはたくさんあります。自民党が本気でこの状況を改善したいのであれば、これを機に野党が言っている使途不明金の問題をより前進させるようなことも、改革としては必要だと思います。

今後は緊縮財政派の意見が強くなっていく

片岡)「政治とカネの問題」は常にある話です。経済においても外交や安全保障など、さまざまな分野で日本は重要な局面に立っていると思います。そうしたなかで、政治とカネの問題は、もちろんいいことではないのですが、ことさらにこれを取り上げて政権を崩壊させるような動きをするのは本当に正しいことなのか、もう少し考えた方がいいと個人的には思います。

飯田)さまざまな部分に影響が出ています。外交でも、1月に南米を歴訪する予定でしたが、どうやら先送りになりそうです。また自民党を取材すると、これによって「経済政策の意思決定が変わってしまうのではないか」という声もあります。安倍派には積極財政派の人たちが多かっただけに、と話す人もいます。

片岡)ある意味、安倍派が積極財政派で、そのプレッシャーを岸田政権のなかでは活かしつつ、金融もそうですが、バランスを取って運営していた部分があると思うのです。

飯田)緊縮財政派もいるなかで。

片岡)むしろ岸田さん自身の考えからすると、多少は財政支出に前向きな政策スタイルがつくられてきた側面があったと思いますが、そういう意味では今回、清和会系の方々がいなくなってしまった。そのため立ち位置としては、やや緊縮気味な意見がより取り入れられる傾向になるかも知れません。

浮揚しかけている経済にどう影響するか

飯田)一方で、これから賃上げなどを行おうかというときに引き締められたら、回るお金も回らなくなってしまいますよね。

片岡)国民の方々の目線は非常に厳しいところがポイントだと思います。「増税メガネ」という言葉もあり、流行語大賞にはなりませんでしたが、インターネットなどでは非常によく使われています。現局面では増税の話なども含め、国民負担が高まることに対して、国民の不安は大きいでしょう。政治資金規正法の話もそうですが、結局は国民がしっかりすることが大事で、政治の不正があるのであれば「許さない」と、しっかりした意見を持つことが大事だと思います。

岸田総理が辞めることになれば、後継候補はどれも緊縮派

片岡)ただ、現局面は経済が浮揚しかけており、政策の一押しが大事なところなので、なぜ日本はこういうときにいつも横槍が入るのかなと思います。加えて、岸田さんが仮に辞めた場合、後継のような人たちはみんな緊縮派なのです。

飯田)そうかも知れません。

片岡)結局、財政拡張派が今回のことで一掃されてしまうと、岸田さんよりもさらに酷い人たちが政権を握りやすい局面になります。経済政策の観点からみても、いまの流れは本当に「どうしてこういうことが起こるのだろう」という気持ちでいっぱいですね。

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