英・郵便局冤罪事件 ドラマ題材となり世論の注目を集める
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ジャーナリストの佐々木俊尚が1月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イギリス・郵便局冤罪事件について解説した。
イギリス・郵便局冤罪事件 富士通幹部が議会で謝罪
イギリスで700人以上の郵便局長らが不当に訴追されたイギリス史上最大規模の冤罪(えんざい)事件で、富士通の幹部が議会に出席し、提供していた会計システムに欠陥があったことを認め、「誠に申し訳ない」と謝罪した。
飯田)イギリスにある富士通の子会社が、原因となった会計システムを提供していたそうです。お金の残高が合わないとか、そういったことが……。
佐々木)ニュースで知っただけなのですが、700人以上でしょう。しかも昔の話だと思ったら、1999~2015年にかけてということですから、ついこの間の話ですよね。郵便局でシステムを調べたら、自分の口座の残高が1000万円ぐらい足りず「これは何だ」となり、「郵便局長が隠したのだろう」と言われて捕まったりとか。あるいは1000万円ぐらい自分のお金で賠償させられる。それが1人や2人ではなく、700人以上にも及んでいて、何も発覚しなかったのが不思議ですよね。
飯田)本当にそうですよね。さすがに個人ではなく、システムを疑うと思うのですが。
佐々木)当時、組織的にやっていたという話でもなかったわけです。「それぞれの郵便局長が個別に悪いことをした」という話になっていた。700人以上が同時多発的に個別に悪いことをするなど、到底あり得ないと思うのですが、それでも捕まって賠償を求められた。何とも言えないイギリス社会の闇ですね。
テレビドラマの題材になり、改めて世論の注目を集める
飯田)本来は運営会社が一義的に責任を負うはずですが、この冤罪事件を題材としたドラマが放送され、改めて世論の注目を集めたということです。
佐々木)2年ぐらい前から騒ぎになっていたけれど、テレビドラマになったことで、さらに騒ぎが大きくなったようです。知りませんでしたが、富士通はイギリス政府などのシステムに食い込んでいるらしいですね。BBCの記事によると、4年間で100件ぐらい政府との契約を獲得しているそうです。総額20億ポンドですから、4000億円近い金額になります。
飯田)そうですね。
佐々木)日本のエレクトロニクスや電機メーカーもそうですが、最終消費財などをつくれなくなってきたので、インフラや公共システム、鉄道などの方で稼いでいるのです。日立はイギリスで鉄道システムを受注し、そこから政府系のシステムに入り込んでビジネスをやってきた経緯がある。富士通がイギリスの郵便局に関するシステム会社を買収したのもその一環だと思います。まさか買収した会社がこうなるとは当時、誰も思っていなかっただろうから、富士通としても「困ったものだな」という感じでしょうね。
富士通幹部「補償に貢献する道義的な責任ある」
飯田)全体の賠償額は1800億円ぐらいになるという見通しもあり、税金で弁済するということです。
佐々木)民事で裁判されたら、さらに巨額になる可能性もあります。しかもテレビドラマを放映してから、「うちも被害が起きている」と告発する人が100人ぐらい増えているというような話もあります。今後、どこまで広がるのか予想がつかないですね。
飯田)富士通本社の執行役員で、欧州地域の責任者であるポール・パターソン氏が議会で証言し、「冤罪の被害者の補償に貢献する道義的な責任がある」と明言しています。さすがに一義的には納入した運営会社の責任になりますものね。
佐々木)当時、システム側の責任だということをなぜ突き止められなかったのか。現時点では、まだわからないことが多すぎる気がします。
飯田)全体を統括する会社の体質はどうだったのか、など。
金融系の巨大システムを維持するのは大変な作業
佐々木)事情は違いますが、みずほ銀行のシステム不具合を思い出します。やはり金融系の巨大システムを維持するのは大変だし、1回ミスが起きると、修復するのはさらに大変だということがよくわかりますよね。
飯田)ベンダーがつくってはいるけれど、会社側からの指示があり、そこでぶつかって現場が我慢させられるような。
佐々木)システムをコンピューターで管理するようになって半世紀ぐらい経つわけですが、システムが古くなると、硬直化して巨大化していき、解消するのが難しくなってくる。それがどこの国でも起きているのだと思います。本当はいまぐらいの時期に、0からつくる方がいいのかも知れませんが。銀行のシステムでも新しいところは動きが早いし、UIも優れていて使いやすい。古いシステムはUIも古臭いし、障害も起きてよく止まります。IT化を進める上で、避けては通れない問題がたくさん起きていますが、今回の問題もその1つだと思います。
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