ヒップランドミュージック代表取締役社長で日本音楽制作者連盟(音制連)理事長の野村達矢氏が2月20日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。音楽配信ビジネスの課題について、「楽曲収入はCD時代の掛け算から割り算に変化している。今後、グローバル対策が重要になる」と解説した。
イギリス紙フィナンシャル・タイムズは18日、欧州連合(EU)欧州委員会がアメリカのアップルに対し、制裁金約5億ユーロ(約809億円)を科す方針を固めたと報じた。スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」のアプリ販売市場を巡り、支配的立場を乱用して音楽ストリーミング市場の競争をゆがめたためとしている。音楽配信ビジネスは世界各国で伸びているが、その収益方法では多くの問題点も浮き彫りになっている。音楽配信ビジネスの課題とは―。
辛坊)CDもサブスクリプションも、作曲家や作詞家は楽曲の販売数や再生数に応じた著作権使用料の分配を受けます。アーティストもアーティスト印税が分配され、アーティスト自身が作詞、作曲も手がける場合は著作権使用料も入ってきます。一定の月額などで聴き放題となるサブスクの著作権使用料はプラットフォームの収入が原資となりますが、配分はどうなっているのでしょうか。
野村)CD時代の楽曲収入は掛け算でした。例えば、3000円のCDが1万枚売れると計3000万円になり、そのCD1枚に10曲収録されていれば1曲当たり300円です。その1曲300円の単価をどのように割り振るかという仕組みです。
サブスクの時代の楽曲収入はCDの時代から変化しています。日本では今、2000万人が音楽配信のサブスクに加入しているといわれています。例えば、月額1000円で2000万人だと計20億円です。配分額は、その中で何回聴かれたかという割り算になります。現状では1回の再生でおおよそ0.3~1円です。「そんなに安いのか」と思われるかもしれませんが、CD1曲300円だとすると、CDは1回しか聴かなくても何回聴いても300円は300円のままです。これをネガティブに捉える考え方もあります。
一方、CDは物品ですので物流の問題もあり、日本国内で作られたCDのほとんどは日本国内でしか流通していません。ところが、配信の世界では地球の裏側までグローバルに音楽が届きます。これは日本の音楽だけでなく世界中の音楽に当てはまることです。月額数千円で何千万曲という膨大な音楽を簡単に聴ける時代になったということです。これをポジティブに捉える考え方もあります。
辛坊)配信のメリットは確かにすごいです。ただ、芸術文化の育成という考え方からすると、音楽家やアーティストらに配分される単価はCDのほうが良いのではないですか。
野村)楽曲に対する収入という観点では、明らかにサブスクによって減っています。厳しくなっているのは事実です。ただ、前述したように、そのことをネガティブに捉えるかポジティブに捉えるかによって、夢は変わってきます。
辛坊)プラス、マイナスで考えると、どうなのでしょうか。
野村)現状はまだマイナスです。ですから、今後はグローバル対策を講じ、日本のアーティストたちが自分たちの楽曲を世界で聴いてもらえるような環境をいかにつくるかが重要になります。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)