今回の「金融政策決定会合」で「マイナス金利解除へ」は早すぎる 須田慎一郎が指摘

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ジャーナリストの須田慎一郎が3月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。マイナス金利政策の解除について解説した。

※画像はイメージです

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日銀が2日間の金融政策決定会合を開催

日本銀行は3月18・19日の2日間、金融政策決定会合を開催する。会合では金融緩和策の柱であるマイナス金利政策を解除する見通しで、決定すれば2007年以来17年ぶりの利上げとなる。

飯田)マイナス金利政策が解除されるかどうか、まだ決まったわけではないのに確定的な報道が出ています。

須田)いきなりマイナス金利を解除するとなると、さまざまな形で大きな動揺をマーケットに及ぼします。ですから情報を少しずつ小出しにして、激変緩和措置的な動きになるのかなと思います。

飯田)刷り込んでいくような形ですか?

須田)それが重要なのです。ただ、どういう形で行われるか、どんな具体策なのかはわかりません。イールドカーブ・コントロール(YCC)と言われている10年物の長期金利も含め、マイナス金利政策が行われているのですが、一気に短期金利を解除すると、それはそれで大きな影響を及ぼします。そのため、まず第一段階としてYCC、つまり本来であれば日銀の役割ではない長期金利の調整はやめていく。ただマイナス金利はやめても、ゼロ金利政策を続けていくのかどうかは見込めていません。現状、日銀の手元には、おそらく需要が供給を上回ってきたというデータがあるのかも知れません。日銀のデータでは昨年(2023年)の段階で、トントンのところまでいっているのです。

持続的に需要が供給を上回るかどうか ~供給能力をどの程度見込んでいくのかが判断のポイントに

須田)それがこの1~3月期で、持続的に着実に上回っているかどうかがポイントです。もう1つは総供給、供給能力という点で言うと、「低く見積もりすぎではないか」という指摘もないわけではない。生産者も本気でフル操業しているわけではありませんから、「供給能力をどの程度見込んでいくのか」が今後の判断のポイントになると思います。

今回の金融政策決定会合で「マイナス金利政策解除へ」となるのは早すぎるのでは

飯田)需要と供給のバランスで見ると、内閣府も似たような数字を発表しています。内閣府の数字では先月(2月)辺り、「マイナスに戻った」と報じられていた気がしますが。

須田)その辺りの数字をどう見込んでいくかだと思います。はっきり申し上げて、内需は弱いですから。昨年の10~12月期は(GDP成長率が)マイナスになっています。まだ3月は終わっていませんが、今年(2024年)の1~3月期でどう見込んでいくかというところもある。意外と今回の金融政策決定会合で「マイナス金利政策解除へ」となるのは早すぎるのではないかと思います。

マイナス金利を解除しても、いきなり金利が復活するのではなく、マイナスがゼロに戻るぐらいの意味合い

飯田)GDPの数字が改定されて、一応はプラスになりましたが、個人消費はマイナスがさらにマイナスになりましたよね。

須田)GDPの5割強を占め、景気の牽引役と言われている個人消費が弱含みなので、やはり、もう少し様子見をするのかなと思います。一方、個人消費が回復軌道に乗ってプラスになったとき、いきなりマイナス金利を解除すると反動が大きくなるでしょうから、将来的にどうなるかを見込んで少しずつ解除するのだと思います。いきなり「ドン」と解除するのではなく、サラミを切るような形で解除に向かっていく。そういう判断なのかも知れません。

飯田)確かに、先週辺りは「イケイケドンドン」というような報道でしたが、昨日(17日)、一昨日くらいの日経電子版などでは「マイナス金利はやめても金融緩和は続ける」という報道に変わっています。

須田)そこは間違いないのですよ。マイナス金利をやめても、いきなり金利が復活するわけではなく、マイナスがゼロに戻るぐらいの意味合いでしょう。ゼロ金利も十分な金融緩和策ですから、ベースは変わらないのです。いわゆるYCCを含んだマイナス金利政策、かなり振り込んだ金融緩和策は少し緩和していくのだと思います。

よい物価上昇を続けていきたい政府とブレーキを踏みたい日銀とのせめぎ合いが起こる

飯田)金利を上げるとなると2007年以来だそうですが、議事録を読むと前のめりの日銀サイドに対し、政府から出ている人たちが「もう少し待ってくれ、まだそこまで温まっていない」と必死に止めていたように読めます。その辺りの体質は違うものなのですか?

須田)もちろん違うし、それが重要なポイントですよね。政府・日銀一体ということで、いま政府はよい物価上昇、つまり賃上げを伴う物価上昇を実現しようと動いているわけです。それが結実したのが今回の春闘です。ただ、そうは言っても大手企業は上げられるけれど、全部の中小企業が対応できるわけではありません。なおかつ賃上げの持続が見通せているわけでもない。となると、いまはマイナス金利政策、あるいは金融緩和策を解除するようなタイミングではないので、政府としてはよい物価上昇を続けていきたいのです。

飯田)マイナス金利政策を解除するタイミングではない。

須田)ところが日銀としては、よい物価上昇が見えてきた段階で、やはりブレーキを踏みたい。「ブレーキを踏むのが日銀の役割だ」というせめぎ合いが今後起こると思います。

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