パリ2024パラリンピック・マラソン代表内定の鈴木朋樹選手が子供達に特別授業を開催

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特別授業を終えて 左から鈴木朋樹選手、OXエンジニアリング・小澤さん、トヨタ自動車・橋本さん

特別授業を終えて 左から鈴木朋樹選手、OXエンジニアリング・小澤さん、トヨタ自動車・橋本さん

パリ2024パラリンピック・男子マラソン代表内定の鈴木朋樹が、思い出の「晴海」で特別授業を開催

パリ2024パラリンピックまで、51日に迫った7月8日。男子車いすマラソンで、パリ2024パラリンピックの出場が内定した鈴木朋樹選手が、東京・晴海西小学校・中学校の生徒に「車いすマラソン・鈴木朋樹、チームで戦うパリパラリンピック」と題した特別授業を行いました。

会場となった体育館には、小学生、中学生合わせて約1,000人が集まり、その中を鈴木選手が、レースで使う車いす〈レーサー〉に乗って登場。生徒の間に作られた道を〈疾走〉すると、生徒たちからは「来たー」「速やっ」といった声が次々にあがります。

生徒達の間を疾走する鈴木選手

生徒達の間を疾走する鈴木選手

車いす〈レーサー〉ってなに?

特別授業のタイトルは「車いすマラソン・鈴木朋樹、チームで戦うパリパラリンピック」

鈴木選手の他に、パリパラリンピックで鈴木選手が使用する車いす〈レーサー〉の制作に携わった、トヨタ自動車の橋本紘樹さん、OXエンジニアリングの小澤徹さんも登場し、鈴木朋樹選手を支える〈チーム鈴木〉による特別授業が始まりました。

特別授業は、クイズ形式で車いすマラソンを学んだり、鈴木選手の〈レーサー〉に座ったり、車体を持ち上げたり、鈴木選手がパリパラリンピックで金メダルを獲るために、橋本さんや小澤さんに要求した〈ワガママ〉の話を聞いたり、〈チーム鈴木〉の皆さんからいろいろな話を聞きました。

生徒の代表が、フルカーボン〈レーサー〉を持ち上げる体験も

生徒の代表が、フルカーボン〈レーサー〉を持ち上げる体験も

金メダルを狙う鈴木選手からのリクエストは、〈軽い・丈夫・格好良い〉

鈴木選手から、今回の〈レーサー〉へのリクエストは、〈車体がカーボン製である事、軽い事、丈夫である事、格好良い事〉でした。

出来上がった車体は、車輪のリム部分までカーボンで作られ、小学5年生の女の子でも、軽く持ち上げる事ができるほどの軽さに出来上がりました。東京オリンピックで使用した車体(カーボン以外の材質も使ったハイブリッド)は約8キロでしたが、フルカーボンで作り上げた〈レーサー〉は、それよりも1キロ軽い、約7キロ。さらに、前方から写真を撮ると、格好良く見えるようなデザインになりました。

鈴木選手は、今回の〈レーサー〉を作ったトヨタ自動車の橋本さん、OXエンジニアリングの小澤さんを前に、『とても素晴らしいものを作って頂きました。この車体を乗りこなせるように練習をしていきます。自分も格好良い車体だと思っているので、乗る事に対して、テンションが上がりますし、これでパリを勝って、皆さんに撮影してもらいたいです』と話しました。

特別授業を終えた生徒たちは、「車いすを初めて見ました」「カッコよかったです」「パラリンピックって、あまり知らなかったのですが、今日学んで、興味がわきました」など、鈴木選手の話を聞いて、パラリンピックに興味を持ったようでした。

特別授業終了後は、鈴木選手とハイタッチでエール交換

特別授業終了後は、鈴木選手とハイタッチでエール交換

特別授業を楽しんだ生徒達は、教室に戻る時「鈴木選手、頑張ってね、バイバイ」と声をかけたり、ハイタッチをして、鈴木選手へ力強い〈エール〉を送っていました。

鈴木選手は『とにかくパワーをもらいました。自分が小・中学生の時、こんな感じだったかなと思うくらい、子供の力って凄いんだな。と思いました。パリパラリンピック・男子マラソンのスタート時間は、フランス時間で8月11日午前8時、日本だと午後3時からなので、みんなで応援してください。パリで金メダルを取って、またここに戻って来て、みんなに報告したいと思います』と力強く話しました。

新行アナウンサーも取材

新行アナウンサーも取材

ニッポン放送のパラスポーツ担当、新行市佳アナウンサーも取材

ニッポン放送のパラスポーツ担当、新行アナウンサーも取材に来ていました。新行アナウンサーが、鈴木選手にフルカーボン〈レーサー〉の利点と、乗りこなす為に、どんな練習をしてのか伺うと、鈴木選手は、『車体がフルカーボンになったことで、(体力が)消耗しなくなりました。健常者で言うと、厚底のシューズが話題になっていますが、それと同じような感じで、自分の伝えた力がちゃんと推進力に生かされていると言うのが、フルカーボンの強みだと思います。

そして、乗りこなす為にやっている練習ですが、車いす〈レーサー〉って、車から自分の上半身が出ているじゃないですか、そうすると上半身の動きで、〈レーサー〉の重心点が動いてしまう、変わってしまう。そうすると、推進力につながらないんです。なので、上体を起こさないというか、重心をずらさないような姿勢で、なおかつタイヤに対して、力をどうやって伝えられるかって言うところを、今、トレーニングしています。

やはり、42.195キロ・1時間20分位をしっかり走れるというのが、(2大会連続の金メダリストで第1人者)マルセロ・フグ選手に勝つ、一番重要なところなので、それに向けて、自分が車体に体を合わせていっているところです』と答えてくれました。

会場になった、東京・晴海西小学校・中学校

会場になった、東京・晴海西小学校・中学校

『またここに戻って来ます』と鈴木選手が誓った会場、晴海西小学校・中学校は、東京オリンピックの選手村だった。

鈴木選手にとって、思い出の地とも言えるのが、今回会場となった「晴海」地区。東京オリンピックでは選手村として使われ、現在の晴海西小学校・中学校の校舎は、選手村の食堂として使われた場所でした。

選手村の思い出を聞かれると『東京パラリンピックの時とは全く違いましたね。あの時は、コロナ禍でもあって、一歩も外に出てはいけないと言われていましたが、今では一つの街になっていて、たくさんの人が住んでいるし、外を歩いている。さらに小学校になって、子どもたちが集まる場所にもなっている。自分達や相手選手がいた場所が、今は違う形になって受け継がれている。これから先、自分が死んでも、ずっと引き継がれていくというのが素晴らしいなと思いました。

ここ(体育館)は食事会場でした。ランチとかディナーを食べていましたけど、全く別のものになっていますね。まさか学校になるなんて。晴海に来るのは、東京パラリンピック以来ですけど、ここでバスを降りて、選手村に入って、食事会場に向かっていたな、とか思い出しますね』と話しました。

パリ2024パラリンピック 男子マラソン代表内定 鈴木朋樹選手

パリ2024パラリンピック 男子マラソン代表内定 鈴木朋樹選手

パリ2024パラリンピックの男子車いすマラソン代表・内定となった鈴木朋樹選手とは

生後8ヶ月で交通事故に遭い、脊髄を損傷。4歳の時に、両親の勧めで車いす陸上を始める。高校時代、同じ車いす陸上の元パラリンピアン・花岡の伸和氏と出会い、本格的に陸上で世界を目指す事を決意。

車いすの中距離、長距離を得意とし、2017年・イギリスで開催された世界パラ陸上選手権大会の男子800m、1500mの代表に初めて選ばれると、数々の世界大会代表に選ばれ、好成績を残す。

2019年マラソン世界選手権で3位となり、東京パラリンピック日本代表内定第1号になる。2021年開催の東京パラリンピックでは、男子800m、男子1500m、男子マラソン、4×100ユニバーサルリレーの4種目の代表となり、男子マラソンでは、入賞まであと1歩の7位、4×100ユニバーサルリレーでは、銅メダルを獲得。

同じ2021年の大分国際車いすマラソンでは、日本新記録(アジア新記録)を樹立。2023年のパリ2023世界パラ陸上競技選手権大会(フランス)では男子800mと1500mの代表に、今年神戸で行われた神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会(神戸)では、男子1500mの代表に選出されるなど、『トラック競技とマラソンの二刀流』で活躍中。今年行われるパリ2024パラリンピックでは、マラソンでメダルを狙う。

チーム鈴木のメンバー OXエンジニアリング・小澤さん、鈴木朋樹選手、トヨタ自動車・橋本さん

チーム鈴木のメンバー OXエンジニアリング・小澤さん、鈴木朋樹選手、トヨタ自動車・橋本さん

パリ2024パラリンピックで金メダルを獲る為に〈チーム鈴木朋樹〉を結成

メダルの期待がかかった東京オリンピックの車いすマラソンでは7位と、入賞まであと一歩に終わった鈴木選手は、トップアスリートとの大きな差を感じ、車体の変更を決断します。これまでは、複数の素材を使ったハイブリッドの車体〈レーサー〉を使っていましたが、世界のトップアスリートも使うカーボン素材だけで作られた車体〈レーサー〉を使う事を決断したのです。

鈴木選手は、『マラソンなので、42.195キロ・1時間20分位、車椅子に乗って走る訳ですが、自分の体と車いすの間に、ちょっとしたズレとか、隙間があると、すごく気になるんです。真っ直ぐ走りたいのに、どっちかに寄ったり、自分が凄く力を伝えているのに、車輪に力が伝わっていない気がするとか、そういった所が気になったんです。

フルカーボン〈レーサー〉は、メダル争いをする他の有力選手も使っていて、とても気になっていました。金属だと柔らかさがあるのですが、そこが利点でもあり、欠点でもある。東京パラリンピックの後、自分の力を余すところなく伝えたい。という欲求が強くなり、それにはフルカーボンの車体が必要なのではないのか、と強く思うようになりました。

そこで色々と相談をさせて頂き、トヨタ自動車で作って頂いたわけですが、最初は、〈わがまま〉を言えませんでした。トヨタの技術者が、数値も測って、いいものを作って来るので、「これではダメです」って言えない位のものが出来て来ているはずなんです。でも、実際は色々変更して欲しいところがありました。やっぱり、自分が思っている事をしっかり言う事は大事だなと思い、色々と〈わがまま〉を言わせてもらいました』

(左)トヨタ自動車・橋本紘樹さん(中)OXエンジニアリングの小澤徹さん

(左)トヨタ自動車・橋本紘樹さん(中)OXエンジニアリングの小澤徹さん

トヨタ自動車の職人が協力したフルカーボン〈レーサー〉

この決断の前から〈OXエンジニアリング〉の小澤徹さんは、フルカーボン〈レーサー〉製作の相談を受けていました。

小澤さんは、普通の車いすからアスリートの競技用車いすまで製作をする〈OXエンジニアリング〉に勤務。鈴木選手が競技を始めた頃から知り合いで、東京オリンピックで鈴木選手が使用したハイブリット素材で出来た〈レーサー〉も制作しました。

小澤さんに鈴木選手について話を聞くと『鈴木選手が、小学校5年生くらいの時に初めて会いました。地元で行われていた大会に、その頃は師匠のお古の〈車いすレーサー〉に乗って競技をしていました。その後、うちの会社にも顔を出すようになり、〈レーサー〉が壊れた時、私たちの会社に1人で来て、修理の話などをしていた時は、「一人前になってきたな」と思いました。で、「自分の車いすをカーボンで作りたい」と言った時は、自分のこだわりをしっかり言えるようになったなと、逆に私に恩返ししてくれているなぁと思うくらいでした』

ただ、フルカーボンでの車いす〈レーサー〉の製作については、その製作工程など、専門的知識と設備が必要ということで、難しさを感じていたそうです。そこで手を挙げたのが、所属するトヨタ自動車でした。

鈴木選手のフルカーボン〈レーサー〉製作の中心的存在となった橋本紘樹さんは、『今日来ているのは私だけですが、この〈レーサー〉が出来上がるまでには、トヨタの工場の職人がたくさん関わっています。カーボンの整形を得意とする人や、カーボンの金型を作るプロ、愛知県豊田市にある元町工場には、カーボン課という専門部署があります。そんな人たちが今回、鈴木選手のためにという事で、チームを組んで作業をしました。

鈴木選手の話を聞いてから約2年。専門の職人がみんなで力を合わせたので、これだけ早く、車体が出来上がったのかもしれません。鈴木選手とは、何度も何度も話し合い、車体を作り直しました。私的には、その話し合いが関わった人間同志の信頼関係を深めたと思います。鈴木選手の凄いと思ったところは、こちらがちょっとだけ変更した所でも、それを的確に見抜き、その感想と言ってくれるところが凄いと思いました』

そして今回のフルカーボン〈レーサー〉の組み上げと全体のアドバイザー役となったOXエンジニアリングの小澤さんは、『フルカーボンで作った車体で2年は早いです、さすがトヨタだなと思いました。鈴木選手から出てくる、車体についてのわがまま、リクエストは、いつも言われていますが、私たちは、鈴木選手が勝つためにレーサーを作っているので、鈴木選手のわがままは非常に大事です』

パリ2024パラリンピックで使用される鈴木朋樹選手のフルカーボンレーサー

パリ2024パラリンピックで使用される鈴木朋樹選手のフルカーボンレーサー

現在、鈴木選手は、車体製作だけではなく、金メダルを獲る為に、色々な分野から〈チーム鈴木朋樹〉のメンバーを集めています。

『東京パラリンピックの時と違うのは、〈レーサー〉も違いますけど、選手に関わる個人的なチーム体制も整えていて、去年からコーチ、トレーナー、フィジカルコーチなどを集めています。

東京パラリンピックの後、なかなか記録が伸びなかったと個人的に思っていて、東京パラリンピックのまま、2・3年来てしまったなと。だから去年から、フィジカルの見直しというか、競技用のレーサーにどうしたら合わせていけるかという問題に対して、色々な人達に力になってもらっています。

そのおかげで、今年の東京マラソンを優勝することができましたし、また違った意味での競技力が上がっているかなと。東京パラリンピックの時は、他の選手に、トップスピードなど、敵わない部分がありましたが、いまは世界に引けを取らない位になってきたかなと思っています。

チームの良い所は、家族のような存在になる所だと思います。痛い所を突いてくれる、大人になると、怒ってくれる存在っていないじゃないですか。だからこそ、自分の痛い所を突いてくれる人が必要で、チームだと「お前怖がっているだろとか、こうしたらいいんじゃないか」という事を言ってくれるので、チームは、家族のような感じだと思います』

8月28日から始まるパリ2024パラリンピックでの〈チーム鈴木朋樹〉の活躍に期待です。

【パリ2024パラリンピック】
日程:2024年8月28日〜9月8日の12日間(日付は現地時間)
競技数・種目数:22競技・549種目
参加アスリート数:約4,400名

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